自由への一歩

シヨゥ

第1話

 行けども行けども街は見えてこない。

 偽物をつかまされたという思いが強くなる。それでも信じて歩くしかない。

 半年ぶりにやってきた商人はこの道の先に街があると言っていた。

 まだ見ぬ未知の世界に僕は可能性を見ていた。


 村に数件ある農家の次男。それが僕の肩書だった。

 次男という肩書はとてつもなく薄っぺらい。

 このままいけば家を継いだ兄貴の下でいつまでも下働きだ。

 男の子に恵まれなかった家でもあればそこに収まることできたのだけれども。

 そんなだから物心ついてからというもの僕の興味の中心は外の世界だった。

 村から出ればどんな自分にでもなれる。そう思っていた。

 だから商人の存在は大きかった。

 商人から学び、その話に夢を見た。そして夢を見た僕は夢に向かって歩き出したのだ。

 

「村に帰る可能性を考えたら近場が良いだろう」

 そんな商人の言葉に従い歩き続けている。商人は別の地方へ行くと言い数日前に別れた。

 餞別としてもらったパンや水、毛布を背負い込みただただ歩く。

 歩けど歩けど見えてこない街の存在を信じただただ歩くしか自分に泣けてきた。

 それでも歩き続け、ようやく街を肉眼で捉えることが出来た。

 それでもまだ遠い。だが街は未知の世界ではなくなった。

「有るならば行ける。行けるならば可能性はある」

 そう言葉にして自分を奮いたたせる。

「この一歩は明日への一歩である」

 さらにそう言葉に出し歩き出した。

 たとえ街についたとしても僕の人生はやっと自由になったばかりなのだ。

 自由は不自由と表裏一体。自由であるためにまだまだ頑張らねばならいのだ。

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自由への一歩 シヨゥ @Shiyoxu

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