第30話 恋愛師匠としてご教授お願いします

大輝君とそこそこに話してからだが。

俺は気持ちに変化が訪れている気がした。

この男なら双葉を任しても良いんじゃ無いかと。

そんな感じで、だ。

かなり.....雰囲気も良い後輩だ。


「.....にしても.....」


「あーあ。バレちまったか。アハハ」


「ふふふ」


「何してんだよお前は。カリオスさんも」


カリオスさんと和也は、てへぺろ、的な反応をする。

雫と大輝君は?を浮かべてチラチラ見ている。

結局、堪らず声を掛けてしまったな.....俺。

それらの感情で和也の頬を引っ張る。

その和也は痛みで顔を歪める。


「痛いってばよ」


「お前な。俺達を監視すんなよ。何やってんだ」


「うーん。.....簡単に言ってしまうと暇だったから?」


「.....ハァ.....」


俺は額に手を添える。

すると双葉が、お兄ちゃん。カリオスさん綺麗だね、と目を輝かせる。

それは確かにな。

完璧な美少女に近い。

精霊とも言える.....と思う。


「双葉さん。そして大輝さん。初めまして。改めて私はカリオス、デス」


「私は双葉です。内藤双葉って言います」


「俺は.....大輝です。山口大輝です」


「ウフフ。何だか弟と妹が出来たみたいデス」


そんな感じの言葉を発しながら。

カリオスさんは嬉しそうにニコニコする。

俺はその姿を見つつドリンクバーを注文している和也をジロッと見る。

何勝手な事をしてんだコイツは能天気に。

思いつつ、だ。


「おう。喉渇いたからな。お前も要るか?」


「アホ。既に注文してるわ。これ以上要らないって。それより.....いつの間に居たんだ?お前」


「うーん.....まあ途中からだな。.....話の」


「.....マジかよ.....」


「気配消したしな。.....面白そうな事をやってたし、これは行かないと、と思ったのだよ。一馬君」


「.....だからやって来るってお前は。.....全く」


そんな会話をしていると。

その、と大輝君が声を発してきた。

カリオスさんと和也を交互に見つめる。

そして赤面でモジモジし始めた。

何か聞きたそうな感じだが。


「そ、その!どうやったら付き合えるんですか?女性と!和也さん!」


「.....え!?それをコイツに聞くか!?」


「おう。一馬。良い子じゃないか。純粋で。アッハッハ。.....そうだな.....俺の場合は財布がきっかけだったぞ」


和也はビックリしながらも解説し始めた。

それもノリノリで、だ。

この野郎、他人事と思って言いやがって解説してやがる。


全くな、と思いつつ俺はジト目で和也を見る。

だけどコイツは確かに付き合っているしな。

そこら辺は気になる範囲だろうな。

考えつつ顎に手を添える。


「財布ですか.....成程.....知り合う掴みはOKですね!」


「大輝君。当てにならんぞコイツのような奴の考えは」


「え?でも.....付き合っているんですよね?お隣の美少女の方と」


「.....だろ?お前良く分かってるじゃないか大輝。アッハッハ」


言いながらまるで鼻の高い男の様に笑う和也。

オイオイ、と思いながらも山口も聞き入っているのに気が付いた。

双葉も、だ。

マジに当てにならないのに.....、と思いつつも。

まあコイツは根っからは良い奴だしな、と思いつつ飲み物を取りに行こうと立ち上がりながらコップを手に握る。


「あ。俺も行きます」


「.....大輝君?」


「その。もし良かったら話がしたいっす」


「.....?.....分かった」


それから俺は和也を見てみんなを見てから飲み物を取りに向かう。

そしてドリンクバーで飲み物を入れると。

大輝君が話し出した。

横のマシンを使いながら、だ。


「俺。双葉さんが好きです」


「.....それは見れば分かるぞ。お前は良い奴だと思うから」


「.....で。それは良いんですがここからが本題です。.....一馬さんは誰とも昔から付き合わないって聞きました。でも.....それでもお願いです。うちのお姉ちゃんを貰ってくれませんか」


「.....何だ?いきなり.....」


頭を深々と下げてから。

顔を上げて俺を見てくる大輝君。

かなり真剣な顔で、だ。

俺は驚きながら大輝君を見る。

飲み物が溢れてしまった。


「.....うちのお姉ちゃんは.....貴方が好きです。.....昔からずっと。.....貴方に救われたって話を毎回します。.....実はお姉ちゃんは.....昔は失語症がありました」


「.....?.....どういう事だ。そんな話、一度も聞いた事がないんだが.....」


「その失語症は.....俺が悪いんですが.....なっちまったんです」


「.....頭でも強く打ったって事か」


「そうですね。.....野球のボールが頭に当たったんです。その時からお姉ちゃんは失語症になってしまって.....人とあまり上手く話せないです。だから可哀想なんです」


「.....」


脳に異常は無かったですが.....なにぶん俺がクソガキだった為にボール投げるのやり過ぎてしまって、と大輝君は悔やむ様な言葉を発する。

俺は大輝君のその姿を見つつ.....言う。

それで今日は来たのか、と。

大輝君は、はい、と強く頷く。


「.....寧ろそっちが目的で来たかもしれません。お姉ちゃんと付き合って欲しいという願いの為に、です。貴方は優しい。だからお姉ちゃんはきっと幸せになります。俺の尻拭いの様な感じで申し訳無いっす。だけど.....本当にお姉ちゃんには幸せになってほしいんです。幸せな人と一緒に」


「.....そうか.....」


そう言っていると。

雫が、大輝、とやって来た。

それから俺と大輝君を交互に見てくる。

そして笑みを浮かべた。


「.....大輝。有難う。話.....聞いてた」


「お姉ちゃん.....」


「.....大輝の言う通り私は一馬君と付き合いたい。だけどね。宣伝する様な真似はしたくないよ。.....だから一馬君。君は君で決めてね。将来を」


「.....でもお姉ちゃん.....俺はお姉ちゃんを幸せにしたい!!!!!」


「分かる。.....でもね。大輝。人の幸せは私達で決めちゃダメだよ」


「.....」


ゴメンね。一馬君。私の.....大輝が。

と苦笑いで俺を可愛らしく見てくる雫。

俺はその姿に、いや、と言いながら.....飲み物を見る。

そして、雫、と俺は向く。


「.....俺は.....まだ恋なんて決めきらない。.....だけどな。.....多分あと少しなんだ。.....だから待っていてくれ」


「.....幾らでも待つよ。.....それに.....もし違っても。.....私は君に出会えて幸せだから。今のこの世界が」


「.....雫.....」


今は戻ろう。大輝、と言いながら俺を見てくる雫。

そして、一馬君。有難う、と柔和に見てくる。

俺はその姿に風を感じた。

朗らかな風を、だ。

俺も笑みを浮かべる。


「直ぐ戻るから待っていてくれ」


「.....うん。待ってるよ」


言いながら俺に頭を下げてから雫はみんなの居るテーブルに戻る。

それを見送ってから.....俺は横を見る。

そこに.....店員が居た。


それは良いのだがその店員は俺をジッと見ている。

黒髪のショートヘアに所謂、ウェイトレスの格好でありかなりの美少女。

目鼻立ちが綺麗でモテそうな感じで俺みたいなのに声を掛けてくるとは到底思えない様な感じだが.....。

何だか佐藤に似た雰囲気の.....高校生ぐらいの女の子だ。

誰だこの娘?


「あ、す、すいません。飲み物を溢してしまったのが気になっているんですかね」


「.....違います。.....その。.....貴方は佐藤蕾さんのお知り合いの方ですよね。お話を盗み聞きしてしまいすいませんが.....」


「.....え?.....あ、はい.....そうですけど.....」


「.....私のおっぱいを貴方に触らせるので蕾さんと付き合ってほしいんです」


「..........は?」


赤面で口元に手を添えてそう言ってくる女性。

何か.....その。

また波乱万丈になりそうな。


そんな嫌な予感がした。

ちょっと待て。

今何て言った.....。

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