第29話 シスコン兄貴

予想が当たってしまった。

YDとはつまり山口大輝(やまぐちだいき)という名の少年だった様だ。


パフェが食えると付いて来た双葉は真っ赤に赤面して俯いていた。

そして俺は目を尖らせて見る。

それから山口は苦笑。

当の大輝君は緊張して俺を見ている。


この構図は何というか.....フォースアングル的な?

つまりみんな各それぞれ、と言いたかったのだが.....下手くそな表現ですまない。

本当になんかここら辺だけ空気が違う。

山口が、一馬君。お父さんみたい、と困惑したツッコミを入れてくる。


「当たり前だ。俺の双葉が.....」


「お兄ちゃん止めて。大輝君の前でキモいんだけど」


「俺はお前を心配しているんだぞ!」


「いやいや一馬君。流石にそれは気持ち悪いよ?」


「お前まで!?」


俺の行動って行き過ぎているのか!?、と見開く。

そんな嘆いていると、あの、と大輝君が口を開いた。

それから俺をオドオドとして見てくる。

俺は、何だ、と威圧する。

大輝君は、ヒッ、と悲鳴を上げる。


「お兄ちゃん.....」


「ご、御免なさい」


威圧していると双葉に威圧で返された。

俺はしゅんと萎縮する。

そして双葉はそれを確認してから、大輝君、と向く。

ごめんね。うちの馬鹿兄貴が、とも。


「.....構わないです。双葉さん」


「.....ふ・た・ば・さん?だと.....」


「お兄ちゃん.....」


「ご、ごめん」


俺は双葉の地獄の閻魔みたいな顔に困惑しながら何とも言えなくなる。

それから双葉はそれを確認して、全く、と呟く。

そしてモジモジしながら大輝君を見る双葉。

大輝君、と話し掛ける。


「はい」


「.....あのね。恋愛相談って聞いたんだけど.....」


「そうです。.....その。えっと」


「.....な、何?」


「.....えっと」


モジモジしながら赤くなる2人。

何このアオハル?、と眉根を顰めて思いながら山口を見る。

山口は、でもビックリだね。双葉ちゃんが弟を好いていたなんて、と満面の笑顔を浮かべる。

俺は、だな。色々と内緒にしていたんだけど、と少しだけ口角を上げて答える。

すると山口がとんでもない事を口走った。


「双葉ちゃん。.....私、義姉さんになるかもよ?アハハ」


「.....え?それって本当ですか?」


「コラコラ!何を言ってんだ山口!」


何を言ってんだ、と思っていると。

期待しながら大輝君も俺を見てくる。

俺はその事に、あのな、と山口を見る。


山口は俺の手に手を添えてきた。

でもどうであれ。私は君の幸せを一番に願っているから、と。

まるで保母さんの様に慈愛を持って言ってきた。


「お姉ちゃんは本当に好きなんだね。一馬さんが」


「う、うるさいよ。大輝」


「そんなに恋をしていて何で付き合わないの?」


「.....それはね。大輝。.....私が待っているから。そして彼の幸せを願っているから手を出さないからだよ」


「.....え?」


大輝君は目を丸くする。

俺も目を丸くした。

山口は静かに胸元に手を添える。

それから笑みを浮かべた。


「.....私は無理になんて言わないから。待ってる」


「.....相変わらずですね。雫さん」


「.....私は成長したんだ。.....一馬君のお陰で」


「そう言えば下の名前で呼び始めたんですか?!」


双葉が赤くなりながら驚愕する。

そういえば言ってなかったな。

下の名前で呼び始めたって事を。


すると双葉は俺を睨んできた。

何だよ、と思いながら居ると.....。

お兄ちゃんは何で、山口、なの?と聞いてくる。


「雫さんって呼んであげて」


「そんな滅茶苦茶な!.....何でだよ!」


「お兄ちゃんだけ、一馬、ってのはおかしいと思うの」


「.....確かにそうだが.....山口の方がしっくりくるぞ」


「ダメ。今日から雫さんで」


「.....」


可愛い義妹の為だ。

仕方が無いとはいえ。

そんな名前で呼ぶなんてした事がない。


期待の眼差しで山口は見てきている。

困ったな.....。

そんなお菓子を貰う前のハムスターみたいな眼差しは止めて欲しい。


「じゃあ、し、雫」


「.....う、うん!」


「.....恥ずかしいんだが.....」


「完璧だよ。お兄ちゃん.....アハハ」


「.....うーむ」


そんな感じで苦笑していると。

じゃあ俺も.....双葉。

と呼び始めたクソガキ。

許さんぞ、と思ったが.....まあ仕方が無いか、と思う。

俺も雫って呼んでいるしな。


「な、何。大輝君」


「.....恥ずかしいですね.....やっぱり」


「そ、そうだね。恥ずかしい」


「.....俺も.....」


うぁあああ!!!!!

あああああ!!!!!甘ずっぺぇ!!!!畜生め!!!!!

俺の双葉がぁ!!!!!

そんな感じで赤くなって頭を掻いて悶えていると。

横から視線を感じた。


というかいつの間にか.....和也が居た。

それどころかカリオスさんも居る。

2人ともグラサンで変装しているのだが。

何やってんだあれ.....。


「.....どうしたの?一馬君」


「.....何でもない。クソッタレな感じだ」


「え?」


雫は???を浮かべながら俺を見てくる。

双葉も大輝君も、だ。

俺は額に手を添えながら無視を続けてそのまま話を続ける事にした。

和也のアホの視線が気になったが、だ。

いつの間に居たんだあれ.....。

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