最終章 歩み出せば世界は広いんだな

繋がり行く世界

第28話 双葉の恋と雫の弟の恋

あっという間の旅行だった。

それはまるで砂時計をひっくり返す感じで.....落ちていく。

本当に短い時間に感じれたのだ。


俺は.....何か寂しい感じを感じながらも。

当たり前の事に納得しながら帰って来る。

お土産をゴールデウィークも部活だった双葉に渡す。

そしてニヤニヤという顔を双葉から向かれた。


「それで?お兄ちゃんは恋は進んだの?」


「.....お兄ちゃんじゃなくて恋が進んだのは和也の方ですけどね」


「もー!折角のチャンスだったのに何しているの?!」


「俺はそんな人間じゃ無い事は知っているだろお前も」


「知っているけど最悪!」


いや。最悪て。

俺は苦笑しながら頬を膨らませて怒る双葉を見る。

双葉はそれから盛大に溜息を吐いた。

そして俺にビシッと指差す様に指を向けてくる。

それから宣言した。


「お兄ちゃん。ゴールデンウィークはまだあるから。みんなとお見合いしなさい」


「.....何でお前は和也と同じ事を言うんだ.....馬鹿か」


「だってお兄ちゃんがヘタレ過ぎて.....妹は悲しい!」


「.....ヘタレ過ぎねぇ。.....確かにそうかもしれないけどよ。俺も頑張ったんだぞ?」


「しかもお土産が、恋心のフォーチュンクッキー、って馬鹿じゃ無いの!?お兄ちゃん周りに幸せを配るんじゃなくて自分の恋を目覚めさせてよ!バカアホ!」


「いや言い過ぎだろ.....」


俺は額に手を添えながら盛大に溜息を吐く。

それからプーッと頬を膨らませた。

可愛いな我が妹。

俺は思いつつ見つめて柔和になる。

それから、双葉、と向く。


「何?お兄ちゃん」


「お見合いって何だよ?」


「お見合いはお見合いだよ。だって.....もう既にお兄ちゃん高校2年生だよね。あっという間だよ時間過ぎるの。アオハルしなくて良いの!?駄目だよ!」


「それを言うならお前もだ.....双葉」


「へ!?.....い、いや私は.....」


頬を赤くするふた.....ナニィ!!!!?

もしや恋しているのかコイツは!?

俺に黙って.....恋をしているのか!!!!?


愕然とする俺を見てから双葉は、やっぱ今のナシ!、と慌てる。

無しには出来ない。

言ってしまったものを引っ込めるなど無理だ。


「双葉.....俺を見捨てたのか」


「.....お兄ちゃん。気持ち悪い.....」


「.....俺は悲しい。.....俺は.....お前が俺に.....」


「お兄ちゃん。本気できしょいんだけど.....」


「.....」


シスコン?、と向いてくる。

違うけどな。

双葉は真顔で俺を見てくる。


言葉がキツいっす。

顔もキツいっす。

まるでオーラが鬼武者なんだが.....。


思いながら俺は顔を引き攣らせて双葉を見つめる。

双葉は、と。とにかく、と話を切り返した。

それから俺を見てくる。

赤くなりながら火の粉でも振り払う様に。


「お兄ちゃんは幸せになって良いんだよ。.....話.....出来たんだよね?」


「.....ああ。まあ確かにな」


「.....じゃあ良かったじゃん。.....もう大丈夫だよお兄ちゃんは。.....羽ばたいて良いんだよ」


「.....そうかもな。.....和也のお陰だよ」


「.....」


考えながら俺は窓から外を見る。

それから移り行く景色を眺めながら双葉を見る。

じゃあお昼ご飯でも作りましょうかね、と立ち上がる双葉。

そして俺の手を握ってくる。


「.....お兄ちゃん。.....もう大丈夫。貴方は。私が出会った頃よりずっとね」


「.....みんなのお陰だよ。割とな。佐藤に出会ってから運命が変わった」


「.....まるでストーリーだね。何かの」


「ラブコメ的な?」


「.....そうだね。ラブコメって言えるかもしれないけど.....恋愛的な?」


「.....そうか」


それから俺達は笑み合ってから。

そのまま各々準備を始めた。

そして俺は勉強をしたりする。

家事を手伝おうとしたのだがその必要はないと言われてしまったので、だ。

双葉の野郎、無茶してないかな。



俺は誰が好きなのだろう。

そんな事をふと思ったりもしたが。

まあ今はそんな事は良いか、と思いながら首を振る。

今はそんな事を考えるより。

目の前の事だな。


「明日は.....どう動くかな」


まだゴールデンウィークも半ばだ。

そんな事を呟きながらラノベに熱中していると。

メッセージが飛んできた。

そのメッセージの主は.....山口だ。

お礼のメッセージである様だが。


(旅行中.....嬉しかった。私.....仲良く出来るんだなって思えた。.....その.....君のお陰で)


(それは違う。お前が頑張ったからだ。山口。.....お前が乗り越えたからだよ)


(いいや。違うとは思えないよ。.....内藤くん)


そうだ。

その.....私も内藤君を名前で呼んで良い?、とメッセージを送ってくる。

俺は見開きながら、構わないが、と送る。

山口は、やった、とメッセージを送って来て早速、一馬君、と言ってくる。

少しだけ恥ずかしかった。


(えへへ。恥ずかしいね)


(.....それはまあ確かにな。名前で呼ぶとか有り得ないしな。普通は)


(.....一馬君は.....名前で呼ばれて嬉しい?)


(.....そうだな。名前で呼ばれるのは家族以外あり得ないしな。嬉しい)


(そうなんだ.....じゃあ一馬君で)


了解、と送りながら。

俺はスマホの画面を見る。

それから、楽しかったな。旅行、と送る。

山口は、そうだね、と返事をくれる。

その時だった。


(あ。そうそう。えっとね。.....うちの弟が.....恋をしているみたいなの。その。もし良かったら一馬君、恋愛相談に乗ってくれないかな。男同士の方が話しやすいだろうから)


(.....え?.....いや。俺、素人だぞ?良いのか?)


(構わないよ。.....素人だしね。うちの弟も。ウブだから。アハハ)


(.....そうか。じゃあ.....話そうか。何処で落ち合う?)


(じゃあ〇〇号線のファミレスで)


(.....分かった。明日でもどうだ)


そうだね、とメッセージを送ってくる山口。

俺はそれを見てから天井を見上げる。

恋愛相談か、と思いながら、だ。

そこで俺はハッとする。

双葉の恋を、だ。


『ところでお前の好きな相手の男は?』


『.....へ!?そ、そんなの居ないし!』


『嘘は良いから。イニシャルだけでも教えてくれよ』


『.....もー.....。え?.....い、イニシャル.....。じゃ、じゃあそれだけなら.....YDだよ』


YD.....つまり山口(?).....?

俺はハッとしてハッとした。

まさかだよな?

つまり.....ぶっ殺す相手だな、と思う。


赤く赤く燃え上がってきたぞなんか。

これは。

いやいや。

誤解かもしれないけど!


いかんぞ.....抑えなくてはシスコン!

俺は思いつつ.....目を尖らせた。

誰も居ない部屋で、だ。

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