第27話 カリオスという子供

その夜の事。

女子達は風呂から上がって4人で話をしていた。

山口と仲良くなる為に、である。

カリオスさんも訪問して来たのだ。


そんな会話を聞きながら俺は笑みを浮かべてから和也を見る。

休憩の意味で飲み物を俺達は飲んでいた。

真っ白の灰になった様な.....その。

所謂有名なボクサー漫画のやつの様に。

俺は苦笑いを浮かべながら和也に言ってみる。


「お前が悪いぞ。罠に嵌まったのは」


「確かにそうだけども!!!!!何でだよ!何で俺だけこんな目に!」


「自業自得だな」


「ウルセェ!」


そんな会話をしていると。

向こうの方から玉水先生がやって来た。

お風呂に入ってきた様である。

俺は、玉水先生、と声を掛ける。

玉水先生は顔を上げて俺達を見てくる。


「はい。.....お風呂気持ち良かったですね」


「そうですね.....俺はちょっと散々でしたけど」


「え?」


「いえ。.....それで.....先生は願掛けは上手くいきそうですか」


「.....あ。ああ。心配して下さっているんですね。内藤君」


「.....そうですね。結構。あんな感じでしたから」


恥ずかしい所を見られたものです、と顔を赤くしながら髪の毛を少しだけタオルで拭く玉水先生。

それから、そういえば山吹君はどうしたんですか?、と向いてくる。

俺は、自業自得と言ってやって下さい、と苦笑。

灰になりそうですね.....、と玉水先生は驚く。


「.....えっと。まあ廃ですね。確かに」


「いえ.....そっちの、はい、もそうですが.....」


「.....大丈夫です。そのうちこのボケナスは治りますから」


「え.....わ、分かりました。.....そ、それじゃ一旦.....お部屋に戻りますね」


と笑顔を浮かべて手を振って玉水先生は去って行く。

それを佐藤が引き止めて。

そして女子会に参加した玉水先生。

俺はその様子に笑みを浮かべた。


「しかし」


「.....何だ?」


「オメー前よりかは遥かに笑う様になったよな」


「.....そうかな。.....まあそうかもしれないな。確かに」


「笑う事は良いこった。笑う門には福来るって言うしな」


言いながら和也は俺に口角を上げる。

俺はその姿に、だな、と返事しながら柔和になる。

そして和也は缶を潰す。

それから立ち上がりながら俺を見てくる。

俺も厳しい目付きばかりだったからな、と言いながら。


「.....お前と出会った頃は.....暴走族の頭のまんまだったしな。マジに」


「.....そうだな。懐かしいもんだ」


「.....それが今やこんなもんよ。女湯を覗く様な野郎になっちまって」


「それは余計だろ。.....まあでも確かにな」


「でもこんな人生もマジ楽しいからな。好きだわ」


言いながら缶を捨てた和也。

それから、お前はどうだ?、と聞いてくる。

俺は、だな。確かにそうだな、と答える。

それから俺も缶を捨てた。

そして和也に笑みを浮かべる。


「また旅行しような。みんなで」


「俺達は金がねぇけどな」


「確かにな。貯めてからすんだよ」


「成程な。確かに」


それから和也を見ていると。

向こうの方から、一馬くん。和也くん、とフォージャックさんがやって来た。

浴衣姿で笑みを浮かべながら、だ。

俺達は、こんちは、と挨拶する。


「.....一馬くん。大丈夫かい」


「.....?.....何がですか」


「.....君の精神の状態だよ。.....これでも医療関係者に近いからね。私は」


「だいぶ落ち着いてますよ。コイツは」


「そうかい」


何も答えてねぇよ。

和也の野郎め。

勝手に答えやがって。


俺は思いつつ苦笑いを浮かべる。

うん。でも確かにね。

とパパさんは言ってくる。

それから腕を組んだ。


「.....君の目はもう大丈夫そうだね」


「.....分かるんですか?」


「当たり前だね。目は.....隠れてない臓器だよ。.....調子などがよく分かるんだ」


「.....フォージャックさんのお陰もあります。感謝しています」


「私は話を聞いただけだよ。.....乗り越えたのは君だからね」


それにしても娘は本当に楽しんでいる様だね、と苦笑いを浮かべながら襖の先を見るパパさん。

俺達は、ですね、と回答する。

それからパパさんを見ていると。

パパさんはこう言った。


「実はね。.....カリオスは.....ようやっと授かった子供なんだ」


「.....?」


「.....子宮頸がんって知っているかい」


「.....まさか。.....カリオスさんの母親が?」


「そうだね。それのステージ2だったよ。2度流産してね」


それでもう子供は望めないかと思ったんだけど。

子供として生まれてくれたんだ。

カリオスはね、と言いながら少しだけ俯くパパさん。

俺達は顔を見合わせてから、そうなんですね、と答える。

するとパパさんは俺に向いた。


「.....一馬くん。.....君の義妹さんの話もしてくれたね。この前」


「.....そうですね」


「.....双子のお姉さんが.....生まれながらの病気で亡くなったと。.....私達、親にとっては子供が亡くなるのはとても悲しく辛い事だ。.....今度会わせてくれないかい。その少女に。話がしてみたい」


「.....はい。是非とも会ってやって下さい」


「.....有難う」


それから俺達は暫くその場で会話してから。

女子会のあっている襖を開けた。

みんな笑みを浮かべて俺を見ていたが。


和也に対しては.....ジト目だった。

ディスられているな.....と思えるぐらいに。

まあ自業自得だけどな.....うん。


「それでは私は腹踊りをしよう」


「えぇ!?止めてパパ!?馬鹿じゃないの!?」


「アッハッハ」


「あはは」


腹踊り披露。

それから宴会の様な感じでご飯を食べ、寝て。

旅行は終わった。

そして.....帰る事になる。


名残惜しいもんだな。

あっという間の旅行だった感じに感じれた。

色々あったもんだな、と思いつつ。

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