第25話 一馬と和也、駄弁る
生物は生きる。
そして.....生物は死ぬ。
俺は何を考えて前を向くべきなのだろうか。
思いつつ.....俺は目の前の壁を.....見つめる。
見えないその大きな.....大きな。
とても大きな壁を、だ。
俺は.....背けずに立ち向かえるだろうか。
「お前.....まだ弱音を吐こうとしているな?」
「.....お前は見透かすな.....本当に。色々なものを」
「当たり前だ。俺のダチだからな」
「.....気持ちが悪い」
「アァ?殺すぞ」
そんな会話をしながら俺と和也だけでファミレスに居た。
丁度.....温泉街だからどっかのカフェにでも入ろうか、という事なったが。
俺達はまあこれが俺達だ。ファミレスが友達だろう、という事になったのだ。
それで今に至っている。
目の前の和也は俺を見てくる。
「全くよ。お前さんは.....。さっき説得したろ?.....そういうこったよ。きっと.....」
「美里も空から見ているって感じだろ。.....だな。確かにな」
「そういうこった。.....だからお前は.....歩み出すべきだ。その行き止まりしか無い白線を踏み越えてな」
「.....全く.....ゴリ押し野郎め」
いや本当に全くな。
俺は額に手を添えながら盛大に溜息を吐く。
そして和也に思いっきり苦笑した。
お前がダチで良かったよ、と言いつつ、だ。
まるで友達が大袈裟な映画でも観た感じで、である。
「ゴリ押しだろうが何だろうが俺は俺だ。だからお前に突っ込むぜ」
「.....お前の様な奴が当時から居りゃぁな。全く」
「.....それだけが無念だな。.....根性無しの背中を蹴れたのに」
「それはまたそれで困るけどな」
「そうか」
そしてそんな会話をしていると電話が掛かってきた。
それは佐藤だ。
俺はハッとして、はい、と電話に出る。
佐藤は、やっはろー。買ったよ、とニコニコした感じで電話してきた。
「.....おお。買ったのか。良かったな」
『これをプレゼントにしようと思って.....良いのが買えたよ。.....テディ○ア!』
「.....お前それ高いんじゃ.....」
『3万円だった』
「高いわ!!!!!アホなのか!!!!?」
そんなギャイギャイな会話を聞きながら。
和也は吹き出して笑う。
プッ。クスクス、的な感じで、だ。
そして俺に涙目を拭きながら見てくる。
お前らお似合いだな。やっぱ、と言いながらである。
そういや説明してない。
付き合って無いぞ、的な説明。
「和也。すまん。隠していた事がある」
「?.....何だそりゃ?」
「俺達は付き合ってない。佐藤とは」
「.....フア!?マジで!?」
「.....すまん。あの場を切り抜ける為に吐いた嘘だ」
「.....オイオイ.....マジかよ。.....せっかくお前が居場所を見つけたと.....」
目元に手を添えながら上を向く和也。
その姿を見ながら俺は告げる。
でもな、と言いながら、だ。
そしてお前のお陰で決心はついたよ、と言いながら。
前に進むべきなんだ、俺は。
「和也。マジに有難うな。お前のお陰で.....決心は出来た気がするさ」
「.....そうか?.....なら良いけどな。.....全く嘘はいかんぜ。一馬よ」
「すまんって」
「.....全く」
そんな会話をしながら苦笑いを浮かべる俺達。
すると案の定ってか忘れていたが。
ツッコミがあった。
オイオイ、的な感じで、だ。
佐藤から。
『おーい。私を忘れてないかい?』
「すまん。忘れていた」
「だな」
『最悪だね!?』
佐藤はグチグチ文句を垂れる。
その光景にますます笑いが止まらなかった。
俺は.....歩み出せるだろうか。
この大きな翼のいる世界に。
そう考えながら俺は電話に出る。
「佐藤」
『何?全く』
「お前もそうだが.....感謝だ。有難うな。俺に出会ってくれて」
『それが運命だったんだからね。.....仕方がないさー。私も惚れてしまったのも運命だしねぇ』
「.....だな」
俺達は笑み合う。
それから佐藤は、じゃあちょっと忙しいから切るね、と言ってくる。
俺は、ああ。また後でな、と電話を切る。
そしてまた和也を見た。
和也は、佐藤は相変わらずだな、と苦笑する。
「.....そうだな」
「.....そういやお前の好みってどんな女性なんだ」
「.....俺?.....俺は.....まあ.....そうだな。それなりに俺を大切してくれる女性かな」
「.....そうか。そりゃ3人もろともだな」
「.....ああ.....いや。そういう訳にはいかないだろ」
「中東にでも行ったらどうだ。結婚出来るぞ。3人と」
石油王か俺は。
そんな真似は出来ない。
俺は溜息を吐きながら苦笑する。
そればっかりだな。
と思いながら。
「.....お前も結婚するのか。カリオスさんと将来」
「.....カリオスちゃんは良い子だよ。.....だから結婚したい。.....その前にお前の結婚式が見たい」
「お前は俺の祖父か」
「いや。そんなもんだろ。普通は」
「違うだろ.....」
いや。絶対にそうだね、と譲らない和也。
鼻息を荒くしながら、である。
いやいや.....そんなもんかね、と思いながら飲み物を飲む。
そして窓から外を見た。
「なあ。和也」
「.....何だ。ワシの孫よ」
「喧しいわ。何時まで引き摺ってんだよお前」
「.....まあ冗談は置いて。.....何だ?」
「何であんなに好いてくれると思う?こんな俺を。みんなは」
「.....そりゃお前が魅力的だからだろ。.....それ以外無い」
そんな単純なもんか?
女性に惚れられるってのは。
考えながら俺は顎に手を添えながら目の前を見る。
すると横から山口がやって来た。
「お2人さん」
「おう。どうした。山口」
「山口?」
「何か暇になったから.....来たの。どんな話をしていたの?」
「.....まあ猥談だ」
何言ってんだこのクソ馬鹿。
山口が、え.....、と目をパチクリして真っ赤になる。
全くこのアホ野郎め。
俺は思いつつ和也にチョップを食らわせた。
「.....山口。冗談だ。.....さっきの件で話していたんだよ」
「.....そうなんだ。.....その。良かったら私も混ぜてもらって良い?お話」
「.....そうだな。.....分かった」
それから少しだけ俺は山口と会話して旅館に戻る。
丁度.....風呂の時間がきていた。
そして俺達は風呂に向かう。
その中で和也が言った。
女湯を覗くぞ、と。
このクソ馬鹿.....何言ってんのか。
出来る訳ねぇ。
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