第24話 一馬の過去の全てと和也の拳骨

和也とカリオスさんの話は終わったらしく。

パパさんと母親のユードリアさんと共に出て来た。

俺達はそれをホールで見ていて。


立ち上がってから俺は和也に寄る。

で。どうなった、と。

すると和也は歓喜のあまりか震えていた。


「何か.....俺の近所らしい。カリオスちゃん」


「え?それって本当か?良かったじゃないか。和也。お前」


「そうだな。この歓喜をどう言い表せば良いか分からないけど.....一馬」


「.....?.....何だ」


「お前にお礼がしたいんだが.....」


「.....いやお礼って馬鹿か。何もしてないぞ俺は」


いや。割と本気で。

和也は顎に手を添える。

それからカリオスさんを見る。


カリオスさんは笑みを浮かべて和也の手を握っていた。

和也は俺に向いてくる。

そして頭を下げた。

俺ばっかりが幸せになってるしな、と言う。


「.....俺は正直幸せとか分からない。.....その代わりにお前が.....幸せで良かった」


「.....一馬。お礼の代わりに手伝いさせてくれ」


「.....何をだ?」


「.....お前の過去に付き合う」


「それはもう十分にやってもらって.....」


「.....いや。まだ不十分だ。.....カリオスちゃんにも説明したらカリオスちゃんもご家族のみんなもみんな納得してくれた。.....お前を助ける」


そうか.....。

有難いけど俺の過去.....か。

改めて言われると.....コイツらと一緒なら向き合える。

そんな気がするけど.....でも。

和也にも周りにもそんなに迷惑は掛けられないよな。


「和也。それは必要無い。有難うな」


「.....でもお前はトイレで吐いているよな。今も」


「.....俺の過去はもうどうしようも無いんだ。.....彼女は死んだしな」


「.....実はな。カリオスちゃんの親父さんのフォージャックさんだけど.....社会福祉士らしくてな」


フォージャックさんは俺に向いてくる。

それから真剣な顔をする。

その顔は確かに心理関係の顔だった。

一馬くん。私に話せる事があったら何時でも言ってほしい、と言う。

俺は、和也お前。聞いたのかよ、と苦笑する。


「良い加減に前を向こうぜ。相棒。.....お前の今は.....それで良いのか」


「.....でもな。俺は彼女を殺した。.....だから.....」


「.....殺したんじゃない。.....それは彼女が悪いんだから」


「.....例えそうでもな。突き飛ばして電車に巻き込まれて目の前で死んでいった。.....だから俺が殺したも同然だ」


「一馬.....」


「.....御免な。辛気臭いものになって。.....そう言う事だ。俺にとっちゃお前の幸せを見るので十分だよ」


和也は俺をポケットに手を入れて話を聞く。

そう.....過去は。

もう変えられないのだ。

選択肢を変えたくても.....だ。


ゲームみたいに主人公の性格をリセット出来る。

洗濯機とかの操作みたいに全てをリセット出来る。


それは不可能だ。

だから俺は絶対に変われない。

変わっちゃ駄目なのだと思う.....んだ。


「.....一馬さん」


「.....どうしました?カリオスさん」


「.....貴方の過去をお聞きしました。彼から。.....貴方の行いは.....正しかったと全てが言えないと思いますが.....でもそんなに気に病む必要があるのでしょうかと思ってしまいました。.....すいません。部外者の癖にでしゃばってしまってデス」


「.....」



高校生になる前。

中学生。

丁度、和也とかに出会う前。

そして山口と出会う前。


俺は一人の少女に出会った。

その少女の名前は高島美里(たかしまみさと)。

享年14歳の中学の同級生。

俺を大好きだった彼女を.....俺は。


殺した。


いや。正確に言えば嫌気が差して突き飛ばしてしまい。

列車に巻き添えになった、が正しいだろう。

彼女は撥ねられ彼女は肉片になってしまった。

その光景を見て彼女を思って俺は何時も吐き気を催すのだ。


彼女と俺はそれなりに仲が良く。

いや.....違うか。

滅茶苦茶に仲が良かった。


しかし彼女はいつしか.....俺を束縛してきたのだ。

自分の為に、私を見て、と。

そんな感じで、である。


その為に部活に入った俺は美里に嫉妬されたのだ。

部活の仲間の女子と話していただけなのに。

かなり激昂して俺に詰め寄って来るぐらいに。


だから俺はそんな彼女が嫌いになりそうになっていた。

そんなある日の事だ。

部活の打ち上げがあると俺は美里に告げて列車を待っていた時。

美里が、何で私に構ってくれないの、とやって来た。


実は美里は.....一人ぼっちだった為に。

そういう1人が嫌いだったのだ。

それで俺は構っていたのだが.....逆の方面に向いてしまった。


それから.....俺は美里から遠ざかる様になっていてしまい。

美里は涙ながらに俺に縋ってきた。

しかし毎回その調子なのでウザくなり突き飛ばしてしまったのだ。

止めてくれ、と。

俺の性格上に合わない、と。


所が俺の弱い力で突き飛ばしたのだが.....美里はホームから落ちた。

それから丁度のタイミングで来た.....列車に轢かれ。

そのまま即死した。

その日の事は.....永遠に忘れてはならない。

だから何時も近くの道に花を添えていた。


俺は.....どうしたら良かったのだろう、と考える。

当然俺には非がある。

そして彼女にも非がある。


どう行動すれば良かったのか、と思う。

警察の事情聴取も簡単に終わった。

過失であり殺人では無い、と断定されたから、だ。


俺はその事を喜ぶべきだったのか。

喜ばざるままが良かったのか。

それは.....今でも答えが出ないのである。


時計の針は元に戻らない。

俺は考えながら何時も反省して空を見上げる。

彼女の事を思いながら、だ。

それが.....俺に出来る最善の手だと思うから。


それが俺の過去だ。

だから.....俺は恋愛も。

そしてこれから先の未来も予想が.....全然出来ない。



「.....過去がどんなに酷くても.....彼女にも非がある。.....それは思うべきだ」


「.....和也。そうは言うけどな。殺したのは俺だ」


「.....かっちゃん.....そんな事があったんだね.....」


「.....ぐす.....ぐす.....」


山口は号泣していた。

佐藤も涙を浮かべている。

門司はショック故か言葉が出ない様だ。

俺達は旅館のホールの椅子に腰掛けながらそう話をしていた。


「.....ショックが大きいですね。.....一馬さんはどれだけ過去と向き合ってきたのか.....」


「カリオスさん。有難う。.....和也。俺は.....良いよ。恋はしない。改めて思ったけど」


そう言うと。

和也は立ち上がった。

それから俺の脳天にゲンコツを打ちかました.....何すんだコラァ!!!!!

俺は愕然として痛みに悶えながら和也を見る。

和也は、ったく!!!!!、と言う。


「お前はそれで恋に臆病になって良いのかよ!?」


「.....それでって.....」


「その女子はお前の事を好いていた。だけどそれは愛じゃ無い。簡単に言えば独り占めだ。その女子が全面的に悪いと俺は思うからな!!!!!」


「.....和也.....」


「おう。何かあるなら言い返せや。頭の名においてまたぶん殴るしな」


「.....でもさ。和也。突き飛ばしたのは俺だしな」


嫌な事を先にしたのは高島じゃねーか!!!!!

と旅館中に響き渡る.....ウルセェよ。

俺は、声のトーン落とせよ、と説得するが。

納得いかない、と大声のままそのまま俺の服の胸ぐらを掴む。


「お前.....やっぱり納得いかねぇ。俺は」


「離せよお前.....」


「ウルセェ。離すか馬鹿」


「.....お前のゴリ押しで世界がどうにかなるとか思ってんじゃねぇだろうな。俺は彼女を殺した!人生を奪ったんだ!」


「それじゃあ将来の話をすっぞ!埒が明かないしな!.....お前の彼女はお前に幸せになってほしいんじゃねーのかよ!!!!!」


俺は、そんな馬鹿な、と見開く。

そして和也を見る。

和也は涙を浮かべていた。

それから、俺はお前の幸せを願いたいわ、と言ってくる。

あの和也が泣いている。


「過失は過失だろ!.....言っちゃ悪いけどやっぱりお前に非があるとは到底思えねぇ!だけどどんだけそれであっても。彼女も人間だ。彼女はお前に幸せになってほしいって願っている筈だ!」


「.....!」


「.....彼女は.....お前を束縛する程、愛していた。でも天国に行って気持ちは変わった筈だ。これだけ時間が経っていればな!それが0であってもお前に接しただけ天国に行く前に変われた筈だ!.....俺は死んでねぇけど俺もお前のお陰で変わった!0じゃない!.....良いか。一馬。.....お前は幸せにならないといけないんだ」


「.....何を.....無茶苦茶な.....理論だなオイ.....」


「泣くなよお前」


「お前こそ泣くんじゃねーよ.....」


そして俺達は涙を流し合った。

その姿を他の奴らも見て。

カリオスさんの家族まで涙していた。

恥ずかしいもんだな、全く。

和也のせいで。


「今まで彼女が変わったとか考えた事無かったわ。.....全く.....このゴリ押し野郎が.....」


「.....俺は不良だったしな。.....根性無しを見ると殺したくなる」


「悪質だなお前.....殺すとか」


「るせぇよこのアホ」


しかし.....気持ちが楽になった。

多少は、だ。

有難いもんだな、コイツもコイツで。

それからみんなを見る俺。


「.....有難う」


と言いながら。

門司も山口も佐藤も。

みんな、大丈夫だよ、とそう言ってくれた。

だって内藤くんだから、と。

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