第21話 パパさん

「手伝ってくれない?かーくん」


「.....何を手伝うんだ?具体的に」


「んー。私も.....山口さんと仲良くなりたいから.....何かプレゼントを贈りたい」


そんな会話をしながら俺達はまた街に繰り出す。

因みに門司と.....山口。

門司はビーズで必死に何かを作っているので声を掛けづらい。

山口はどうやら街に遊びに出ている様だ。

その為に俺は佐藤と一緒に街に出る事にした。


「.....ね。かーくん」


「.....何だ?」


「恋のパズル。.....嵌め込みたいって言ったよね」


「.....恋のパズル.....ああ。恋の事か?」


「うん。.....私ね。恋のパズルは無理に嵌め込まなくて良いと思ってる」


「.....?.....どういう意味だ」


今は君は.....まだ休むべきだと思っているって事だよ。

と柔和な顔を浮かべる佐藤。

俺はそんな顔を見ながら、そうなのか?、と言う。

すると佐藤は前に駆け出した。

それから背中に手を回して、だって無理に嵌め込んで後悔するなら嫌でしょ?、と笑顔を浮かべてくる。


「私は嫌だな。.....無理に決めてもらうの。.....女性の結婚は一生ものだから。男の子もだけど」


「.....」


「.....だから私は.....君が本当に好きになるまで待つ。.....それで君も私達も大満足だよ」


「.....俺は.....」


「.....何も言わないで良いよ。私は君をずっと待ってるからね」


見開く俺。

佐藤は俺の手を握る。

そして駆け出して行く。


俺はその様子に足がもつれた。

全く、と思ってしまうが。

悪い気はしなかった。



「佐藤。何処に行くんだ?」


「.....山口さんの好きな物を知ってる?」


「.....好きな物?聞いた事が無いな。何が好きなんだ」


「.....ぬいぐるみだよ。.....山口さんずっとぬいぐるみを抱えているでしょ?」


「.....そうなのか。初めて知ったな.....」


と言葉を発してから俺はハッとする。

そういえば確かにぬいぐるみを大切そうに抱えていたな、と思いながら。

俺は顎に手を添える。


すると佐藤は、えっとね。だからぬいぐるみのお店を見つけたの。そこに行こうと思ってね、と笑顔を浮かべた。

俺は、そうか、と柔和な顔を浮かべる。

世界が広がっていくなって思う。


「.....佐藤。有難うな」


「.....何が?」


「.....山口とはずっとの知り合いだから。配慮してくれるのが嬉しい」


「.....私は山口さんも大切だからね。.....だから」


「.....優しいよなお前」


「.....そう言ってくれるの?かーくん」


佐藤は少しだけ赤面する。

俺はそんな姿に、ああ、と返事をした。

それから俺は佐藤の頭に手を添える。

臭い行動だが.....何となくやりたかった。


「.....有難う」


「.....も、も、も!!!!!子供あつかしい!」


「噛んでるな。アッハッハ」


「もー!!!!!」


そして俺達はそのまま歩きながら。

飲み物を買ったりして南の方角にやって来た。

それから.....ぬいぐるみの店に入ろうとした.....のだが。

そこに和也とイーリアさんが居た。

佐藤がそれを見つけてからニヤッとする。


「楽しそうだね.....」


「.....まあ楽しそうだな。確かに」


「.....何だかくっ付けさせたくなるよね。ああいうの見ると」


「.....お前。よからぬ事を考えるなよ?」


「.....ウフフフフ」


佐藤は何かよからぬ事を考えている。

俺はその様子に苦笑いを浮かべながら見ていると。

和也とイーリアさんが店を出て来た。

それから佐藤が飛び出す。

え!?!!?


「イーリアさん。山吹君」


「.....え!?佐藤.....」


「佐藤サン!?」


「.....デートは上手くいってる?実は行って欲しい所があるの」


あちゃー、と思いながら俺は隠れたまま様子を伺う。

しかし行ってほしい所?って何処だ。

思いつつ見ていると。

調べたらこの先に恋人の滝ってのがあるの、と言い出した。

俺は目を丸くする。


「そこに行って。山吹君」


「いやいや!佐藤!まだ早いってそういうの!」


「.....」


「.....イーリアさん?」


何かイーリアさんが落ち込んでいる。

俺は?を浮かべながら見ていると。

佐藤も?を浮かべる。

イーリアさんが和也に向いた。

それから頭を下げる。


「実は.....言い出せなかったデス。.....私.....家族とアメリカに帰らないといけないのです」


「.....え」


「イーリアさん.....それって本当に?」


「!?」


俺は少しだけ眉を顰めながら、やはりか、と思ってしまった。

帰る場所は有るよな、と思いつつ。

だがそんな言葉を切り出した時。


金髪の男性が駆け出す様に飛び出した。

俺の後ろから、だ。

な。何!?

え!?


「カリオス」


「.....パパ!?」


金髪の男性はスーツ姿のかなりダンディーな男の人だった。

っていうかイーリアさんのパパ!?

俺は驚愕しながら。

というか佐藤も和也も驚愕する。

それから俺とみんなを見渡してから頭を下げる。


「失礼。私はイーリアの父親であります、イーリア・フォージャック、と申します。宜しくお願い致します」


「.....は、はあ.....」


「何しているの!?パパ!?」


「.....お前達の恋を見ていた」


「パパ!?」


パパさん.....。

俺は顔を引き攣らせながら隠さず話すパパさんを見る。

それからパパさんは涙を浮かべて流し始める。

美しいな。恋をするとこんなに変わるんだな女性は、と悔し涙の様なものを、だ。

和也も佐藤も俺も突然の事に唖然とする。


「.....娘を頼みます。和也さん」


「.....いやいや!!!!?それ駄目でしょう!?」


「しかしイーリアは.....和也さんに恋をしている。そういう事だよな?イーリア」


「も、も、もう!!!!!パパァ!!!!!」


涙目で赤くなりながらイーリアさんは取り乱す。

無茶苦茶な親父が出て来たな.....。

俺も既にバレている様だし取り敢えずは、と和也に向く。

和也は、何時から見ていたんだよ、と苦笑いを浮かべてくる。

俺は、ついさっきだよ、と答えた。


「.....すまんな。和也」


「.....お前は何時もそうだから。気にしねぇよ」


全くよ、と笑みを浮かべる和也。

それはそうと.....親父さんがどう出るか、だな。

考えながら俺達はその様子を見守る。

そして親父さんは口を開いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る