第20話 俺は経験値をまだ貯めるべきなんだな

しかしそれはそうとビーズで出来た絵なんて見た事が無いな。

思いながら俺は横に居て尚且つ俺の腕に縋っている門司を見て苦笑い。

ご婦人は、本当に仲が良いわね、と笑顔を浮かべる。

そして羨ましそうな目をする。


そして俺達は3軒横の画廊に来た。

小さな画廊だが.....それなりに存在感は大きい。

門司は笑みを浮かべて俺を見てくる。


「私.....何だか嬉しいかも。.....まるでデートみたいだしね」


「.....そうだな。俺もお前と話が出来て嬉しいよ。門司」


「有難うね。来てくれて。かっちゃん」


それから俺達はご婦人を見てみる。

ご婦人は、ささ。お二人さん。中に入って、と柔かに向いてきた。

俺達はそのままビーズの絵が飾られている画廊に入る。

そして俺はインパクトを受けた。

どんなインパクトかというと.....目の前に魚の絵が飾ってある。


「魚拓.....に近いですね。.....でもこれビーズですか?」


「そうねぇ。ビーズで作った代物ね。.....魚拓の様に見えるけど魚拓じゃ無いですわ」


「.....黒の部分が黒ビーズですね。凄いです.....」


門司もかなりビックリしながら見ている。

マジマジと、だ。

俺はその興味深そうな顔に柔和になりながら見る。

そんな姿に俺は少しだけ胸が締め付けられ.....たのだが。


「.....どうしたの?かっちゃん」


「.....何でも無い。気のせいだ」


俺は思いながら?を浮かべつつ顎に手を添える。

今のは?、と思いながらそのまま考えたが.....ハッとした。

まさか、と思いながら、だが。

いやでも。そんな馬鹿な、と思う。


「まだ奥に作品がありますよ。.....全部で6作品あります」


「.....え?.....凄い。何年掛かったのですか?」


「ここまで大きい作品はやり始めて10年です。.....その間.....かなり落ち込んでしまって空白が空いたのもありますけどね.....」


「.....?」


門司と俺はそのまま顔を見合わせる。

そしてご婦人を心中を察する様に改めて見る。

すると.....ご婦人は笑みを浮かべた。


それから、貴方達なら話しても良いかもしれないわね、と向いてくる。

目線をビーズの絵に向けながら、実は私は若くして夫を失ったの。.....大病でね。それから空白が空いてしまって.....私はビーズを編むのを止めてしまったのよ、と呟く。

俺達は見開いてからご婦人を見る。


「私は.....貴方達や恋人の人達を見ていると『今だけの幸せよ。幸せになって』とついつい願ってしまうの。自分の事を鏡写にしているだけかもしれないわ。御免なさいね」


「.....そうなんですね。.....大変な人生を歩まれたんですね.....」


「御免なさい。本当に。.....ただ自分を満たすだけに利用しているだけかもしれないわ。.....不愉快ね。御免なさい」


そんな話を聞いていると。

横に居た門司が目の前に向いた。

それから笑みを浮かべる。

それもかなり柔和な笑みを、だ。

そして胸に手を添える。


「私達は婦人に作品を見せてもらって幸せです。全然利用している様に見えません」


「.....そう言ってくれるのね。貴方がたは」


「です。.....ね?かっちゃん」


「.....確かにな。.....それを自ら言う人は高確率で良い人だと思う。.....気に病む必要は無いと思います」


ご婦人は。

涙を浮かべて涙を拭う。

そして声を震わせた。

そう言われて.....私は貴方がたを招いて正解だったと思うわ。

私は.....後悔ばかりだったから、と言いながら、だ。


「.....俺も来て良かった」


「.....かっちゃん?」


「.....門司。大切なものを学んだ気がする。俺は.....山口にも佐藤にもな。そして和也、みんなにも」


「.....そうなんだね。かっちゃん。.....良かったね」


「.....俺は.....まだ学ぶべき事が多そうだな。本当に。だけど.....みんなのお陰で.....経験値は積み上がっている」


「.....かっちゃんが優しいからだよ」


そんな会話をしながら。

俺達はまた画廊を周るのを再開した。

それから.....画廊を全部見終わってから。


俺は.....前を見据える。

その中で特に心に残ったビーズ絵があった。

それは.....恋人が2人手を繋いで夕陽を浴びている様なそんな絵。


「.....有難う。また来てちょうだい。貴方達ならまた歓迎よ」


「.....本当に有難う御座いました」


「感謝します」


それから俺達は頷き合ってから。

前を見てからご婦人に別れを告げて歩き出した。

そして何時迄も手を振るご婦人を見ながら俺達は笑みを浮かべる。

そうして門司と一緒に歩きながら.....俺は門司を見る。

門司は、何だか心が変わった、と呟く。


「.....人に関わる暖かさを知ったよ。私」


「.....そうか。.....お前も成長しているんだな」


「.....成長している訳じゃないとは思う。だけど.....何か経験値を上げているね。私。かっちゃんと同じだよ」


「.....俺と同じ?」


「うん。私は.....かっちゃんと全てが同じだと思う」


経験値を積まないと何も感じられないんだよ。

と苦笑しながら.....自虐する。

俺は門司にチョップを食らわせた。

門司は、きゃう、と悲鳴をあげて口を三角にする。

俺はそんな門司を改めて見る。


「卑屈すぎる」


「.....えー。だってかっちゃんが言ったんだよ?」


「.....お前と俺は違う。お前は.....成長している。俺はもう成長止まりだよ」


「かっちゃん。それは違うよ」


「.....?」


門司は立ち止まる。

それから俺を見上げてくる。

そして笑みを浮かべて俺の手を握った。

優しく、優しく、だ。

和菓子でも包み込む様な感じである。


「.....私かっちゃんの成長を間近で見ている。だから絶対に違う。.....かっちゃんは成長止まりに足掻いているんだよ」


「.....そうかな」


「きっとそうだから。.....私はかっちゃんの幼馴染なんだから」


「.....」


「佐藤さんだって。貴方の事を絶対に.....思っているよ」


「まあアイツは変態だけどな」


でも私も変態だよ?

かっちゃんの為なら服を脱げるしね。

と服に手を掛ける.....冗談だよな?

俺は思いながら青ざめる。

ふふっ、と門司は吹き出す。


「.....冗談だよ。流石に恥ずかしいから」


「.....だよな。当たり前だ」


「でもお部屋でしようね♡」


「.....お前.....」


すると門司は、じゃ、じゃあビーズで小物作ってくるね、と駆け出した。

それから俺に振り返ってくる。

舌を出して逃走した。


全くアイツは、と思いながら額に手を添えて盛大に溜息を吐く。

でも悪い気はしないけどな、と思いつつ。

そうしていると.....背中をバシッと叩かれた。


「なーにしているの?ニヤニヤして」


「.....佐藤!?」


「気持ち悪いよ?まるで変態みたい」


「.....それはお前だろ.....」


「え?私変態じゃないよ?」


何言ってんの?

言われて俺は真顔で佐藤を見る。

そして眉を顰める。

そんな当の佐藤は荷物を両手に持っていた.....何だよこの荷物。

考えながら.....佐藤を見る。


「.....佐藤。その荷物は?」


「.....あ。これ?これね.....お土産とか!売ってないエロゲとか!」


「最後のが聞き捨てならん。何だエロゲっておま.....」


「良いじゃん。かーくんなら話せると思って」


「通行人が居るからな!!!!!前も言ったけど!!!!!」


コイツという変質者は!

俺は思いながらも.....佐藤に手を差し出した。

佐藤は?を浮かべながら俺を見上げる。

重いだろ貸せよ、と言った。

佐藤は、あ。有難う、と赤くなる。


「佐藤」


「.....何?かーくん」


「.....恋って何だと思うよ?」


「.....恋はかーくんの魔法です」


「.....意味が分からんぞお前!?」


そして俺達は一旦旅館に帰る事にした。

それから.....また外に遊びに出る事になる。

突然、部屋に訪問して来た佐藤に連れられて、だ。

全く佐藤の野郎.....人前とかでも気にしないで手を引きやがって.....。

恥ずかしいってのに。

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