第18話 雫と一馬の結婚式?
和也の本性は元不良。
簡単に言ってしまうと暴走族だった。
なのだが.....まあ今となっては違う穏やかな人間になったのだが。
引退して俺のダチになっている。
俺はふと昔の事を思い出しつつ目の前の射的の的を撃つ。
だがまあ外れるのだが。
「やれやれ。集中力も無ければ運動神経も0か」
「それは早いと思うよ。な、内藤君」
「だよなぁ.....って山口!?」
俺はビックリする。
横に何故か山口が片目を閉じて居た。
射的の銃で目の前の景品を狙っている。
そして撃ち落とした。
その事に座るスペースに居た店員のおいちゃんも、おー、と声をあげてから景品を持ってくる。
それから山口に手渡した。
「はいよ。おや?彼女?」
「ち、違います!!!!!」
「そうかあ?怪しいけどな。アッハッハ。こんな美人さんの連れが居るなんてうらやましなお前」
「はい。そうっすね」
その景品はちょっとデカかったが。
山口は見事に撃ち落とした。
それから山口はその景品を持ち。
俺も参加賞の飲み物を持ってから店を後にした。
それから山口を見る。
「どうしたんだ?山口。.....お前だけか?」
「う、うん。内藤君どうしてるかなって思って」
「そうか。見て分かるが振られたよ。和也には」
「あはっ。そうなんだ」
「アイツにはイーリアさんっていう彼女さんが居たしな。全く」
「良いなぁ.....羨ましい」
俺は苦笑しながら山口を見る。
山口はひっきりなしにこっちを見てくる。
チラチラ、だ。
髪の毛を弄りながら.....ああ成程。
俺は納得してから柔和なりつつ髪の毛に指を差す。
髪留めどうしたんだ?、と聞きながら。
「き、気付いてくれた。有難う」
「そんなにチラチラ見ていたら気付くわな」
「桜のカンザシだよ。可愛いかな」
「.....この店の並びで買ったのか?」
「う、うん。内藤君に特に気づいてほしかったから」
「.....そ、そうか」
俺は赤くなりつつ頬を掻きながらカンザシを見る。
確かに桜柄だな。
しかし高いんじゃ無いのかカンザシって、と思いながらも。
満足そうな顔に特に何も言えず。
俺達は歩く。
まるでデートの様に。
「で、デートみたい.....」
「.....確かにな。それは言える」
「.....その」
「.....何だ山口」
「手を握っても良い?」
チラチラ今度は手を見てくる山口。
それから口元に手を添える。
そして赤くなる。
俺は少しだけ赤面しながら、分かった、と手を握る。
そうしてから歩き出した、が。
「やっぱり恥ずかしい.....かも」
「.....止めとくか?山口」
「.....ううん。でもやっぱり折角だから」
「.....そうか」
それから歩いてゲームセンターを通り過ぎる所で山口の足が止まった。
そしてジッと.....所謂プリクラに目を留める。
俺はそれを確認してから笑みを浮かべて指差す。
もし良かったら撮るか、と。
山口はボッと火が点いた様に赤面する。
「え!?いや!?」
「.....暇だしな。.....山口と一緒なら思い出にもなりそうだし」
「.....じゃ、じゃあ.....お願いします」
「.....お願いしますっていうか.....そんな敬語も必要無いぞ?」
「でも内藤君だから」
「.....やれやれ」
そして俺達はゲーセンに入る。
それから.....周りを見渡していると。
店員がやって来た。
泣き黒子の有る若い女性の店員。
あれ?珍しい、と言いながら、だ。
こんな寂れたゲーセンに客とはね、とも。
「いらっしゃい。来てくれて有難う。.....カップル限定サービスも有るよ」
「か!?」
「いや.....俺達はその。カップルでは無い.....」
「またまたそんな事を!アッハッハ.....あ。もしかして射的場行った?」
女性の店員さんは山口の持っている景品のぬいぐるみに指差す。
どういう事だ?、と思いながら女性の店員を見る。
女性の店員さんは、あれ親父のやっている所だから、と苦笑い。
そして俺達を見る。
「そんなでっかい景品落とした人は久々に見たね。.....おめでとう」
「あ、有難う御座います.....」
「.....でもやっぱりカップルなんじゃないの?彼氏君」
「.....違いますよ?」
ふーん.....でも女性は満更でも無い様子だけど?、と笑顔を浮かべる。
まあ確かに満更でも無いだろうな。
俺は考えながら山口を見る。
茹で蛸の様になっている。
それを見ながら苦笑する俺。
そして女性の店員を見る。
「もしかしてプリクラ取りに来たの?」
「そうです」
「そうだね。じゃあカップル限定サービスしようか」
「いやだから.....俺達は.....」
「や、やります!」
山口は鼻息を荒くして前に出て来る。
俺はビックリしながら山口を見る。
女性の店員は、そう来なくちゃね、と笑顔を浮かべた。
そして、じゃあ奥に来て、と言ってくる。
「え?」
「タキシードと花嫁衣装を着てもらうから。それがカップル限定サービス」
「.....ふえ?」
山口がこれ以上無い程に赤面する。
俺も流石に赤面した。
はぁ!?、と思いながら、だ。
逃げようと思ったが。
後ろからその女性の店員が素早く背後に周り背中を押してきた。
「彼氏君はしっかりサポートね」
「いやいや!?まさかそんな事とは思いませんでした!」
「わ、私も.....恥ずかしいです」
「まあまあ。架空の結婚式だから!アッハッハ」
そして俺はそのまま。
タキシードに着替える事になった。
で山口は花嫁衣装に着替える事になる。
それから.....俺は恥ずかしがりながら表に出る。
☆
「やっぱり似合ってるね。当たり前だけど」
「こ、これは恥ずかしいです.....」
そんな声がしてカーテンが開いた。
奥の方に綺麗な純白のレースでしかもブーケを持った花嫁姿の山口が現れた.....。
何だこの可愛さ.....!?
って言うか美しいと言う言葉が似合っているのかもしれないが。
俺はそっぽを見る。
「ど、どうかな」
「.....とても綺麗だと思う」
「.....そ、そ、そうですか.....」
「彼氏君。これ勿体無いよ?この機会逃しちゃアウトよ?」
「何がですか.....」
「綺麗だよ。この娘。.....性格も何もかもが」
俺は真っ赤になる。
慣れない様な山口の格好に俺は.....心から翻弄される様な感じだった。
山口は赤面でまるで裸でも見られているかの様に慌てる。
そして俺達はまた女性の店員さんに背中を押された。
「特別サービスってのがあってね。.....プリクラなんかよりもっとヤバいの」
「え?な、何ですか?」
「実際に教会のパネルの前でカメラで写真撮るの。アッハッハ」
「.....!?」
俺はかなり動揺する。
すると山口が俺の腕に腕を回してくる。
そして見上げてきた。
えへ。えへへ、とこれ以上無いぐらいに嬉しそうに。
その顔を見つつ俺は溜息を吐いた。
覚悟を決めないといけない様だな.....。
「という事で撮りましょう。なんだかこういうの久々だしやる気が出てきたよ!アッハッハ」
「ノリノリだな!」
「良いから。ね?撮るよ」
そして結婚式場に見立てた教会のパネルの前に立たされ。
俺達は恥ずかしさにモジモジしながらだったが。
そのまま写真を撮る姿勢になる女性の店員さん。
そうしてから、じゃあ撮るよー、と歯を見せて笑顔になる。
ピース!、と言いつつ、だ。
それから撮られた。
「上出来。アハハ」
「.....有難う御座います」
「私も誰かの嫁に行きたいんだけどね。まだまだ家業がねぇ。だから羨ましい。仮にも付き合ってないとしてもこんなパートナーが横に居る事が。アッハッハ」
「.....」
この女性の店員さんには感謝しなくてはならない。
何をかと言えば今の状況じゃない。
和也の言葉を思い出したが.....そうだ。
俺は.....好きって気持ちを考えたいのだ。
恐らく、だ。
だから後ろから押された気分になったのだ。
「嬉しい。すごく嬉しい。.....一生ものの宝物の記念になったよ。内藤君」
「.....そうか」
「どうしたの?」
「.....何でもないさ」
山口は俺の様子にキョトンとする。
俺は.....恋が出来るだろうか。
もう過去を振り返らなくても.....良いのだろうか。
そんな感じで考えながら.....俺は出てきた写真を見つめた。
結婚式を挙げた様な写真を、だ。
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