第17話 和也の本性と和也との付き合い

この付近には紅葉商店街と呼ばれる場所がある。

俺達はその場所に別れ別れで向かった。

そして俺は今、報酬のデートとしての和也と一緒に歩く。

和也は後頭部に手を添えて気怠くながらも俺を見ながら楽しそうに歩く。

全くな.....何を考えているのやら。


「で?お前はイーリアさんとは恋に発展しそうか?」


「そうだな.....分からん。アッハッハ」


「分からんってお前の事好きなんじゃないのか?あの娘」


「.....そうだな。.....そうだったら嬉しいけど無いだろ?そんな上手い話」


「まあ無いっちゃ無いな。だって彼氏付き、というオチもあるしな」


「だろ?」


紅葉商店街の北の方に来た。

この場所には所謂、お土産店、射的、ゲーセンなどがある。

それらを見ながら和也に向く。

和也は俺に向きながら笑みを浮かべる。


「で?なんかすっか?」


「何かするって何をするんだよ」


「.....そうだな。話し合いを一緒にしたい場所。つまり個室的な場所に行きてぇけどな」


「.....そうか?じゃあ行くか」


「何処にだよ。そんな場所ねぇだろ」


まああるんじゃねぇか?

と俺は指差す。

その方角に自販機と椅子が置いてある。


通行人はかなり少ない感じだ。

和也は手を広げて、やれやれ、感を出す。

だけど、まあ俺ららしいけどな、と言いながら納得する。

それから.....俺達はその場所の椅子に腰掛けた。


「.....んでお前は個室に行きたい理由は?」


「ああ。えっとお前さ。恋をしたいか?」


「.....いきなりだな。.....まあしたくも無いししたいって言うか。分からん」


「俺としてはダチに幸せになってほしいんだわ。それで考えたんだが」


「.....何を考えたんだ」


「お見合いしろ」


いきなり何を言ってんだこの馬鹿。

お見合いって誰とするんだよ。

と俺は顔を顰めながら睨む様に和也を見る。


馬鹿なのか?

と思っていると和也は真面目な顔で、ここいらで決めるべきだと思うけどな、と柔和な顔を浮かべて椅子に腰掛けた。


「.....青春なんてあっという間だぞ。.....俺ら2年生だぞ?将来になったら大学とかでマジにバラバラだろ。今のうちに決めた方が良いんじゃ無いかって思ったんだよ。お前と付き合う資格のあるヤツを決めるの。今3人も好かれてんだろ?お前」


「.....しかしな.....複雑だぞ俺の周り」


「分かる。だけどそれで1歩踏み出さないままはマズイと思うんだわ。女も待ってくれねぇぞ。多分」


「.....お前らしく無い。真面目過ぎるんだが.....キモイ」


「おう。ぶち殺すぞお前」


「やってみやがれカス」


そんな会話をしながら飲み物を買う俺達。

そして俺達はクスクスと吹き出した。

全くな、と思いながら。

それから昔話と今の話に思い耽る。

昔の.....コイツに出会った頃を。


「不良だったしな。お前」


「.....まあ当時としてはレッド・パーティーの頭だったしな。頭領ってか。面倒クセェ感じだった。.....それがお前との山口との出会いで変わったしな」


「.....懐かしいこったな。本当に」


「.....お前だけだったよ。真剣に俺の話に耳を傾けてくれたヤツは。下らない話をずっと永遠と」


「そしたら山口が、いっそ友達になったら?、って声を掛けてくれたんだよな。.....懐かしいこった」


それでこんな腐れ縁が出来たのだ。

そして今に繋がっている。

一緒の学校、学級で。

目標も一緒にして、であるが。

そんな事を思い出しながら和也の頭を見る。


「.....お前の坊主ってそういう意味があったのか?反省の意味」


「.....まあそうだな。そう言うこったな」


「.....そうか。それでか」


「オイオイ。今更知ってどうするんだよお前」


「そうだな。ははっ」


そんな会話をしていると。

目の前の壁の隙間。

そこからイーリアさんが無理矢理?連れて行かれるのが見えた。

奥の方に、である。


俺達は顔を見合わせてから。

面倒臭いな、と言いつつ。

缶をグシャッと潰してからそのまま行った。



「お前良い顔しているじゃねーか?」


「犯しちまうか?」


「だな」


イーリアさんはビクビク怯えている。

不良が2人だがイーリアさんに絡んでいた。

俺はその姿を和也と一緒に見る。

和也は真顔のまま怒りを浸透させていた。


「.....行くか?」


「だな」


そして俺達はその合図をきっかけに不良達に声を掛ける。

何してんだ、と、だ。

すると、ああ?、とか威嚇の声を出した不良が振り向いて.....愕然とした。

丁度和也に、である。

和也は、見た事あるぞお前ら、と言う。


「ポンにながっち。何やってんだ」


「.....頭.....」


「.....マジかよ。別の街に引っ越したって聞いたけど.....」


和也に頭を下げるポンとかいう奴ら。

それから俺は目の前の目をパチクリしているイーリアさんの手を取る。

取り敢えず行きましょう、と言いながら、だ。

和也と3人きりが良いだろう。



「オドロキました。まさか.....和也サンが.....」


「コイツ昔.....仮にも不良の頭領だったからな」


「って事っす。アハハ」


イーリアさんは嬉しそうに和也を見る。

和也は少しだけ猿顔になりながら頭を掻く。

そしてイーリアさんが和也の手を握る。

それから、お礼がしたいです、と言ってきた。


「その。格好良い和也サンと一馬サンに」


「俺は良いよ。イーリアさん。.....もし良かったらデートして来いよ。和也」


「え.....でもお前が.....」


「.....良いから。行って来い。楽しんでこい」


それから俺は和也の背中をぶっ叩く。

そして和也と頭を下げてくるイーリアさんを送り出した。

その姿を見ながら俺は懐かしむ様に空を見上げる。


何も無い青い空だが.....気持ちが良いな今日は。

スカッとしている。

さてどうすっか.....。


「.....まあ射的でもすっか」


俺はそう呟きながら.....そのまま射的場に向かう。

取り敢えずは遊ぼう、と。

そう考えながら、だ。


あと考えを纏めよう、と思いつつ。

脳内のタンスを、だ。

頑張れよ和也、と祈りつつ。

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