第16話 恋色は花咲く
またバスに乗った。
それから俺達はそのまま高速道路を行きながら玉水先生の話に耳を傾ける。
因みにどんな恥ずかしい話かといえば。
簡単に言ってしまうとゲームでのレズに関する話だった.....。
熱心に話すが教師として間違っている、と思いながら俺達は苦笑いで話を聞く。
それからバスは旅館の付近に到着した。
荷物を降ろしていると向こうにみんなが行ったのを確認してから和也が言葉を発してくる。
「でも俺とお前とのデートで良かった」
「まだ言ってんのかお前は。.....男子2人とか俺は良くない」
「.....いいや。良かったさ。.....だってお前と話が出来るしな」
「.....?.....話って何だ」
「.....お前の将来の話だよ。これからって言えるかもな。まあ内緒だ」
和也?、と思いながら俺は和也を見る。
その和也はニヤッとしながら俺を見てくる。
相変わらずだな和也は。
将来を案じてくれるのが変わらない。
まるで母親とか父親だ。
「.....なあ。和也」
「.....何ざんしょ」
「お前って何で俺の身を案じてくれるんだ?俺ばっかりだろ」
「そりゃお前が大好きだからな」
「.....おま。大好き?アホかこの。ドン引きだ。気持ちが悪い」
俺は青ざめながら後退する。
まるで化け物でも見た様に、だ。
和也は、そういう好きじゃないっての。
俺はお前と出会った頃から暗いお前の事が気に入っているからな、と笑顔を浮かべつつ俺を見てくる。
「.....お前を幸せにしたいって思ったんだよ。山口のお陰でな」
「懐かしいな。あの頃が。俺達.....当時はいがみ合っていたのにな」
「.....山口が引き寄せてくれたんだよな。全く」
「.....」
そう。
俺と和也は.....当時はあまり良くない感じだった。
いがみ合っていたしな。
本当に喧嘩ばかりで.....嫌いだった。
互いが、だ。
それなのに山口が介入してから.....世界は大きく変わった。
「いやー。喧嘩ばっかりだったのにな」
「俺達はいつかの星で繋がり合う運命だったんだろうな」
「そうだな。お前にそう言ってもらえると嬉しい」
「いや。ずっとそう思っている」
俺は苦笑いを浮かべながら和也にグータッチをする。
和也は笑みを浮かべてグータッチをしてきた。
それから笑い合う。
そうしていると佐藤がやって来た。
「行くってよ!2人とも!」
「はいよー」
「分かった。佐藤」
俺達は顔を見合わせて笑みを浮かべてから。
昔を懐かしみながら歩き出す。
旅館の方に、である。
そして山を少し登った頃に旅館があった。
☆
「凄く大きい旅館だね」
「.....だねぇ」
「そうね」
「.....うむ」
「ウヒョー.....」
そんな感じで各々感想を述べる。
そして周りを見渡す。
所謂、古風な旅館である。
築.....そうだな。
100年は既に経ってそうな、だ。
「それで部屋はどうなっているんだ?佐藤」
「私と門司さんと山口さんと玉水先生。そしてかーくんと山吹くん」
「.....まあそりゃそうだな。.....それじゃ荷物置きに行くか。一旦は」
「そうだな。.....うん」
「何を落ち込んでいるんだお前は。この変態」
変態じゃねー!!!!!、と大声を出す和也。
いや。何を考えているか知らないがお前はそれなりに変態だろ。
思いながら俺は荷物を持っていると。
目の前から誰かが歩いてきた。
女の子の様だ。
かなり細い足.....ってこの子.....!?
「山吹サン!?」
「あれ?カリオスちゃん!?」
「まさかまた会えるとは思いませんでした。山吹サン!」
カリオスっていう金髪の少女。
間違いない。
これはパーキングエリアのあの美少女だ。
俺は思いながら和也を見るが。
和也は、にへー、と猿みたいな顔をしている。
またか。
「山吹くん?どちら様?」
「あ、ああえっと。この子はイーリア・カリオスちゃんっていうんだ。さっきのパーキングエリアで財布を拾ってあげたんだけど」
「うわ.....凄い綺麗な方ですね」
「確かに」
玉水先生も門司も目を丸くする。
イーリアさんは俺達に頭を下げてニコッとする。
成程な.....。
これは非のうちどころが無い美少女だ。
完璧すぎると思う。
「それで山吹サンはご旅行ですか!?」
「ま、まあそんな所.....うん」
「じゃあ一緒のリョカンですね!?」
「.....あ、うん.....」
あ。うん、じゃない。
全く俺達が居るのにな.....デレデレしまくりやがって。
でもまあこれはこれで馬鹿にする要素が出来たな。
思いつつ少しだけ脳内で算段を考えつつ門司達を見る。
羨ましそうな顔をしていた。
「なんか幸せそうですね」
「.....ですねぇ」
「.....良いな.....」
恋する乙女は大変ですね。
特に何故か知らないが.....玉水先生に至っては悔しそうに泣いている。
何故なのか、と思っていると。
この前.....別れたばかりなのに、とか呟いていた。
成程.....。
「玉水先生。取り敢えず落ち着いて」
「.....若いって良いですね.....」
「何を言ってるんですか。玉水先生だって若いですよ」
「.....はい.....」
シュンとする玉水先生。
いじけてしまった。
いやまたかよ。
思いながら俺は苦笑いを浮かべる。
すると和也が能天気に俺に声を掛けてきた。
一馬。行くぜぇ!!!!!、とか言いながら。
「どうした。イーリアさんとは別れたのか」
「約束したんだ!.....デートの約束を」
「.....マジかお前.....」
「羨ましいだろぉ!!!!!アッハッハ!!!!!」
「うるせえ。って言うか俺はそんなのには興味無いしな」
「お前も恋しろって。絶対に楽しいぞ」
恋が楽しい.....か。
それもそうだけどな。
まだ恐れているんだろうな。
俺は、と思いながら和也の話を聞いていた。
それから俺達は移動を開始する。
「矢吹くん良かったですね」
「おう!」
心の底から楽しんでいるな和也は。
考えながらその中で俺は胸に静かに手を添える。
もう良いのかもな。
恋をしても、だ。
誰が好きとか.....今は考えれないが。
☆
「かーくん」
「.....どうした。佐藤」
「.....いや。何をしているのかなって」
散策して見つけた外に有る自慢の足湯とかいうのに浸かっていると。
スカート姿の佐藤がやって来た。
可愛い服装に着替えている。
俺はその佐藤にラノベを置いて答える。
「足湯浸かって考えようと思ってな」
「.....何を?」
「.....恋とかの事を」
「.....かーくんは恋をしたいの?」
「.....和也を見ていると何だか.....まあそれも良いかなって思ったんだ」
そっか。
かーくんは恋をしたいと思い始めたんだね。
と側で足湯に浸かって俺を見る佐藤。
俺はその姿に木製の天井を見上げてみる。
そして前を向く。
「.....恋をしたいっていうか。複雑だ」
「.....うん。一歩ずつだよ。かーくん」
「.....お前らはそれでも待つ気か」
「だって私はかーくんが好きだから。幾らでも待つよ」
「.....」
かーくんの匂いが大好きだから。
と笑顔を浮かべてエロゲの攻略を見る佐藤。
コイツ.....途中まで良かったのに。
最悪だ、と思いながら額に手を添える。
でも何時もの日常だ。
何だか安心感があるな。
「かーくん。このヒロインはどう落としたら良い?」
「お前な.....外でやるなよこんなの」
「良いじゃない。あは」
「.....このヒロインか.....そうだな。饅頭がキーになっているかもな」
「.....じゃあ私達も饅頭がキーなのかな?」
「.....それは知らん」
顔をずいっと近付けてくる佐藤。
お目目パッチリ。
俺は若干赤面しながら佐藤を見る。
近いっての、と思いながら。
「可愛いなお前。薄化粧か」
「.....!.....かーくん気が付いたの?」
「.....似合ってるよ。可愛い」
「.....も!もう!かーくんのアホ!確かに気が付いて欲しかったけど面と向かってそれはな、無い!」
「.....じゃあどうしろと.....」
唇を尖らせて横を見る佐藤。
全くな.....恋ってのは本気で不思議だな。
女性をここまで変わらせるのだから。
それはミラクル。
つまり魔法の様な。
そんな感じがする.....。
「.....かーくん。とっても嬉しい。有難うね。可愛いって言ってくれて」
「.....そうか」
「.....君らしく無いから嬉しかった。とってもとっても嬉しかった」
「.....そ、そうか」
そして俺達は暫く足湯に浸かった。
髪の毛をかき上げたりする艶かしい佐藤を見ながら、である。
それは.....足の皮膚が萎むぐらいに。
佐藤のせいで浸かりすぎた.....。
考えながら溜息を吐く。
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