第10話 内藤双葉と一馬
門司は反省しているのか分からないが取り合えず門司の全ての思いを山口に伝えた。
学校にも来てほしい、と門司は言っていたなど。
その全てを伝えた。
山口は笑顔で対応してくれて。
これはついでだが.....山口が俺を心から好きだという事も判明した。
「.....まさかだよな」
俺は1人でファミレスに居た。
考えを整理したいとそう思っていたから、だ。
そうして俯いていると.....俺の席に誰か座った。
客が居らず広々としているのに。
いやいや、何やってんだと思い顔を上げると.....そこには双葉が居た。
笑みを浮かべて俺を見ている。
丁度、両髪の前の方に四葉のクローバーの様な髪留めを着けている少女。
茶髪をしているが清楚な感じの.....そうだな。
美少女と言えるかもしれない。
俺とははっきり言って似てない。
当たり前だが。
内藤双葉(ないとうふたば)15歳。
俺の義妹だ。
時折、俺にアドバイスをくれる八重歯が特徴的な少女。
制服姿って事は同じく学校帰りか。
「どしたの?お兄ちゃん。そんな顔して陰湿な」
「.....俺が腐っているのは相変わらずだろ。双葉」
「まあ確かに?お兄ちゃん腐っているもんね。生ごみ?」
「.....お前殺すぞ?何言ってんだ」
「ほほーう。義妹に対して殺すとな?やってみなさい」
「.....」
まあそんな事をやっちまうと.....面倒だしな。
本当にやろうと思わない。
そもそもお世話になってんのはこっちなのだから。
考えながら目の前のドリンクバーのコーラを吸いながら飲む。
全く、と思いながら。
ニヤニヤする双葉。
それから店員に同じもの下さい、と注文する。
「もしや恋の悩みですかな?とっつぁん」
「.....誰がとっつぁんだよお前。.....俺は親父か」
「まあ違うけどね。よく言うじゃん。テレビで」
「アホかお前は。影響されるな」
まあまあ。
と言いながら俺をニヤニヤして見る双葉。
俺はその姿に、実は告白された、と言ってみる。
すると(≧∇≦)的な顔をした。
オイオイ.....お前が気になるって言ったんじゃねーか。
「お兄ちゃんが!?アハハハハ!!!!!」
「殺すぞお前.....いや。割とガチで」
「アハハ!!!!!ご、御免なさい.....!」
「笑うなし。.....全く」
大爆笑すなよ。
俺は真剣なジト目で双葉を見る。
双葉は目の端の涙を拭ってから顔を上げる。
俺に柔和に、だ。
それから、良かったね。お兄ちゃん、と言ってくる。
「.....私は気になっていたからね」
「.....それはつまり俺が将来、結婚出来ないかもという事で?」
「それもだけど.....お兄ちゃんには幸せになってほしいから。家族として」
「.....」
双葉は少しだけ複雑な顔をしてから明るくなる。
俺の過去を知っている双葉。
全てを知っている。
その為にこの様な表情になるのだろう。
俺は.....その顔を見ながらコーラのストローを迷路に迷わせる様に動かす。
そして顔を上げた。
「有難うな。双葉」
「.....私は何もしてないよ。.....お兄ちゃんにただ単に、良かったね、って言っただけだよ?.....変なお兄ちゃん」
「.....それでもお前が居て。.....家族が居て。.....幸せなんだ。だからその分のお礼も兼ねて、だ」
「.....私もお兄ちゃんに出会えて良かったんだ。.....きっとね」
「.....そうか」
双葉も.....辛い過去を持っている。
実は双葉は.....双子の姉妹だった。
しかし片方の姉の方、一葉という少女だが脳が無く生まれた。
それから朦朧とした意識の中、生きていたそうだ。
先に生まれたので姉、だ。
長生きが出来ない病だそうだが。
6歳まで生きたそうだ。
それで双葉は姉。
双葉は何時も病院でお世話していたそうだ。
それで悲しかったらしい。
同じ様な髪留め。
実は四葉のクローバーの片方は.....その姉の分だ。
姉が着けていた分なのだ。
それを触りながら真っ直ぐに俺を見てくる双葉。
「.....私は.....お兄ちゃんと同じだから。.....共通出来るから」
「.....」
「.....お兄ちゃんも過去に縛られないで前に進んだら良いと思う。きっと」
「.....まあそうだな」
「お兄ちゃんの幸せは私が祈ってる」
「.....お前らしいな。本当に」
うん。
だって私はお兄ちゃんが好きだから。
と笑顔を浮かべる双葉。
でも私はそういう意味で好きって事じゃ無いからね、と笑みを浮かべる。
分かってる、と俺は返事をした。
「.....お前の好きは兄として、だろ。分かる」
「.....そうだね。.....だから応援団長だよ。私は貴方の」
「.....そうか。有難うな。双葉」
それから姉を失ってから。
双葉はふさぎ込んでいたが俺の母親と再婚した。
それから笑顔を取り戻す様になったのだ。
きっかけは俺。
俺が双葉に説教したお陰だという。
「めそめそするなってお兄ちゃんが説教してくれたから。今の私が居るんだから」
「本当に怒っただけなのにな。俺は」
「.....でもきっと背中を押してほしかったんだよ。私は」
「.....そうなのか」
「うん」
だから今度は私がお兄ちゃんの背中を押す番だね、と笑顔を浮かべる双葉。
俺はそんな彼女の姿に、そうか、とだけ返事をした。
それから窓から外を見る。
というかお兄ちゃんはもしかして気持ちを整理する為にこの場所に?、とクスクス笑いながら見てくる。
「.....まあそうだな。気持ちの整理だ」
「.....そうなんだね。.....じゃあ落ち着いたら一緒に帰ろうね」
「.....だな」
そして俺達は暫く昔の話やら学校での話をした。
因みに双葉は中学生だ。
3年生で今、ずっと俺と同じ高校を目指して頑張っている。
全く.....こんな鈍臭い俺に憧れるとはな。
考えながら複雑ながらも嬉しい気持ちで双葉を見る。
双葉はアオハルの様な笑顔で俺を見ていた。
まるで幼子の様に無邪気に、だ。
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