第9話 芽久の反省と雫のバレた想い

門司が変態でも良い。

佐藤が変態だって事でも良い。

だけどやり過ぎなものはやり過ぎだ。

つまり反省の時も必要であると思うのだ。


俺は考えながら授業を受けつつ横目で門司が座っている筈の席を見る。

門司は何処に行ったのか。

探したが見つからなかった.....。


全くどいつもこいつも、と思いつつ眉を顰めつつ前を向く。

そしてこう小さく呟く。


「.....山口.....大丈夫かね.....」


その様に呟きながら.....窓から外を見る。

そして盛大に溜息を吐きながら。

授業を受けるのを再開した。

しかし悩みがまるで残り火の様にくすぶり。

俺は集中が出来なかった。



俺と山口が知り合ったのは高校1年の時だ。

何がきっかけで知り合ったかというと当時俺がボッチというか。

あまり話をしなかった独りだったので山口が声を掛けてきたのだ。


それから今にたまに話をする仲で今に至っている。

山口のお陰とも言える。

和也に出会ったのが、だ。


なので山口が居なければ不安になる点もあるのだ。

俺は思い出しながら山口の家に行った。

門司と佐藤と一応別れて、だ。


そして見上げる。

2階建ての一軒家を、だ。

それからインターフォンを押した。

すると山口の母親の都さんが出て来る。


「こんにちは。ご無沙汰しています」


「まあ.....内藤君。お久しぶりです」


「.....山口さんは大丈夫ですか」


「.....雫.....大丈夫よ。ちょっとだけショックだったみたいだけど」


「.....うちの馬鹿がすいませんでした。知り合いです」


そうなの?あらあら。

と都さんはクスクス笑いながら俺を見てくる。

相変わらず若い感じだな。

姿が40歳を超えているとは思えないぐらいに。

思いつつ目線だけ2階に向ける。


「もし良かったら山口さんと話せますか。伝えたい言葉があります」


「そうなのね。.....じゃあ行ってあげて。今なら大丈夫だと思うわ」


「.....有難う御座います」


そのまま俺は2階に案内されてから。

俺は1人だけ置かれる。

お菓子とお茶を持って来るという。

お構いなくとは言ったが.....。

考えながらドアをノックする。


「お母さん?」


「.....いや。俺だ。.....内藤だよ」


「へ!?な、内藤君!?」


「ああ。.....いや。大丈夫かなって思って」


ちょ。ちょっと待って!、と言った瞬間。

ガラガラガシャーン!!!!!、と音が鳴り響いた。

俺はビックリしながら、どうした!、とドアを開ける。

そこに.....下着姿の山口が。

それから崩れた物品が。


「.....な、いとうくん?」


「すまん。これはしくった。.....すまん!!!!!」


「いやー!!!!!」


絶叫が飛んできた。

ゴミ箱も宙を舞って飛んでくる。

俺はそれを食らってから床にぶっ倒れた。

しかし.....子供っぽい下着を.....着ているんだな.....。

思いつつ俺は顎を触る。

ヒリヒリした。



「内藤君ごめんなさい」


「.....大丈夫だ。これは俺が悪いからな」


「でも.....ご、ごめんなさい」


「謝るなって」


俺は顎に絆創膏を消毒して付けてもらってから。

そのまま救急箱を仕舞う山口を見る。

肩だしの服を着ている。

シュンとしながら俺を見ていた。

俺はその姿に、ふむ、と思う。


「そ、それでどうしたの?」


「.....ああ。えっとな。門司からの伝言がある」


「.....門司さん.....」


「.....嫌だったら聞かなくても良い。それは任せる」


「.....大丈夫だよ。聞かせて」


言いながら真剣な顔で俺を見据えてくる。

俺はその姿に、分かった、と返事をしながら伝えた。

御免なさい。やり過ぎたわ。今回は間隔を空けた方が良いかもだったから今度謝りに来る、と。

その言葉に山口は、うん、と頷いた。


「門司さんも反省しているんだね。だったら良かったかな」


「.....まあそれなりにあったけどな」


「.....え?」


平手打ちをした事。

まあそれは言わないでおこう。

考えながら俺は山口を見る。

山口は?を浮かべながら俺を見てくる。

俺は子犬の様な目をしている山口を柔和に見る。


「.....でも思った以上に元気そうだな。お前」


「うん。大丈夫。ちょっとショックだったけど」


「何をされた?」


「.....上履きを隠されたりしたかな」


「.....そうか。すまないな。門司の馬鹿野郎が」


うん。

でも反省しているんだよね。

だったら大丈夫だよ、と笑顔を浮かべる山口。

その言葉に見開きながら、そうか、と俺は答える。

というかよくよく考えたんだが。


「.....お前は俺が好きって事だよな?」


「.....え?ふえ?」


「.....だってそうだろ。門司に目を付けられたんだから」


「!!!!!」


山口はそそくさと真っ赤になりながら去って行った。

それから布団に包まる。

俺は少しだけ紅潮しながら窓から外を見る。

まさかだな、と思いながら、だ。

は。恥ずかしい、と声が聞こえてきた。


「私は.....内藤君が好きだけど.....こんなのイヤー.....」


「.....でもな。山口。.....正直言って嬉しかったよ」


「.....え?」


布団からチョコンと顔だけ出してから俺を見てくる山口。

俺はその姿を見ながら柔和になる。

山口とは1年近く付き合っているから俺は嬉しかった、と言いながら、だ。

それから山口を改める様に見た。


「.....そ、そうなんだ。.....う、うん」


「.....でもな。ゴメンな。俺.....誰とも付き合う気は無いんだ」


「.....うん。知ってる。.....君の大変さも知ってる」


「.....そうか」


「.....だから門司さんと佐藤さんともっと仲良くなりたいなって思う」


「.....それはどういう意味だ?」


私は.....門司さんと佐藤さんなら内藤君の知らない所も知っていると思っているからね、と笑顔を浮かべる山口。

だからき。聞きたい、と言ってくる。

赤くなりながら、だ。

布団から出てくる。


「わ、私は.....内藤君の事をもっともっと知って.....笑顔になりたいな。2人で」


「.....そうか」


「.....うん」


「.....」


少しだけ恥ずかしいな。

門司と佐藤と仲良くなる、か。

俺は考えながら今は有り得ないかも知れないけど。


それでもそうなったら良いのではないか、と思いつつ。

満面の笑顔を浮かべる山口を見ながら。

そう思えた。

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