第8話 芽久と蕾と雫と

門司と佐藤と山口。

接している3人のうち門司が、俺が好きだった幼馴染だよ、と俺に接している。

俺はその事が少しだけ信じられないまま.....俺も接している。

それから佐藤と山口にも、だ。


起こった事はこれだけじゃない。

何が起こったかって?

そうだな.....実は門司が転学して来たのだ。

俺は苦笑いを浮かべるしか無く.....今に至っている。

困ったな.....と思いながら居ると山口が俺に聞いてきた。


「あの。.....内藤君.....その」


「.....どうしたんだ山口?」


「門司さんの事.....だけど。.....えっと。.....彼女とは仲が良いの?」


「.....仲が良い訳じゃ無いんだが.....まあそれなりかな」


そ。そうなんだ.....、と山口は少しだけがっかりした様な困惑した様な顔をする。

こんなに困惑しているなんて山口はどうしたのだ。

考えながら.....山口を見ていると。

山口はモジモジしながら、えっと、とチラチラ見上げてくる。

それから俺を確認する様な仕草をした。


「門司さんと佐藤さんが対決している様な.....内藤君を巡っての感じだから.....クラス委員としては.....どうしようと思って.....仲良くしてほしいし.....」


「今の所は大丈夫だと思うが。.....もし何かあったら俺が何とかするしな」


「.....2人がその同時にお、お手洗いに行ったから.....来たんだけど.....2人共どっちも怖い.....感じだね.....」


「.....まあ確かにな.....うん。.....なので臆病なお前にどうにか出来るとは思えんな」


「.....そ、そんな事.....あるかな.....」


山口はまた困惑してモジモジし始める。

俺は?を浮かべながら山口を見る。

山口はずっと紅潮しながら俺を見ているのだが。


何か俺はマズイ事をしたのか?

まるで恋人に話し掛ける様な感じなのだが?

すると山口は意を決した様に切り出した。


「手伝ってほしい。な、仲良くなる様に」


「.....手伝う?お前をか?」


「.....そ、そう」


驚きながら山口を見ていると。

背後から和也がタックルでアタックをしてきた。

俺は、何すんだ!、と和也を見る。

お前は羨ましすぎるんだよ、と和也は目をキッとする。

そして目を細めた。


「この学校中の女子を掌握するつもりか己は。良い加減にせえや」


「.....何の話だよ。.....全く」


「山口はお前に惚れているんだぞ?」


「え」


「.....あ、え」


クラスメイトがユラッと動いた。

耳を動かしながら、だ。

金属バットを持つ奴まで現れた。

今のはかなり衝撃的な一言なのだが.....!?


俺は考えながら山口を見る。

山口.....マジで?、と言いながら、だ。

その山口は目を回しながら赤面で、ち。違うよ!!!!!、と否定する。

そして和也を見る。


「だがお弁当を作るとなったら好きな男子にしか.....」


「もう黙って!山吹君!死んじゃう!」


「和也.....お前.....誤解に誤解を生むのは良く無いってかこの場で言うな!?」


でもちょっと待て。

本気で山口は俺を?、と思っていると。

門司と佐藤が戻って来た。

マズイ!

修羅場になりそうな気がする.....!


「どうしたの?みんな」


「大丈夫だ.....佐藤.....」


「へ?」


するとクラスの女子が余計な一言を放った。

その子は隠し事が苦手な女子なのだが。

山口さんがもしかしたら好きなんだって!内藤君の事!、と。


しかしそれでも自分の身を案じてくれ。

しまった、と思いながら俺は門司と佐藤を見る。

へぇ?、という感じの目でジト目になる。


「.....ふーん.....内藤君は山口さんが好きなんだー。へー」


「.....」


「困った.....」


「たす、助けて.....内藤君.....」


和也の野郎!!!!!修羅場になったじゃねーか!!!!!

当の和也は冷や汗流して逃げやがったし!!!!!

クソッタレめ。

俺は額に手を添えながら味方が山口しか居ない教室を見渡す。

それから大統領が宣言する様な感じになる。

そして実際に宣言した。


「良い加減にしろ!俺は女子とは誰とも付き合わないから!」


「.....それはつまり.....あっち系?」


「.....内藤ってそんな趣味が?」


いやちょっと待て何でそうなるんだよ!

俺は額に手を添えながら、くそう、と思いつつ門司と佐藤を見る。

門司はかなりキツい目で山口を見ている。

山口は怯えていた。

新たな波乱が生まれそうな気がする。



案の定その翌日から。

冗談の全てだったが門司だけが本気で捉えてしまった。

山口が学校に来なくなったから、だ。

何かしたのだろう門司が。


山口がこっそりとメッセージを女子達に送ってくれて判明した。

門司が山口を責めた様で.....最悪のパターンだった。

イジメをした.....という事か?

俺は教室で門司を詰問する。


「門司!!!!!お前は何やってんだ!冗談でも許せないぞ!」


「.....私はかっちゃんに近付くのを排除しただけだよ」


「.....お前のやり方は汚いぞ.....そんな事をしたら人が傷付くだろう!」


「私はかっちゃんだけだしね。見ているの。だから問題無いよ?」


「.....!」


女子達も流石にこれは唖然としていた。

愕然というか。

そして、何?門司さんってあんなに最低だったの?、と噂になる。


何て事をするんだコイツは.....!

まさかここまでするとは.....。

コイツの身を案じていたのに、と思っていると。

佐藤が立ち上がった。


「ねえ。門司さん」


「.....何。佐藤さん」


「.....流石に謝って」


「.....謝る?何故?」


「山口さんが学校に来れなくなってるじゃない!」


何故?私はかっちゃんだけ見たいから。

丁度良いじゃない、と門司は笑みを浮かべる。

そして門司は柔和になる。

佐藤は睨む。


駄目だコイツ、と思っていると思いっきり佐藤が門司を平手打ちした。

それから、山口さんに謝りなさい!!!!!、と絶叫する。

まさかの展開に教室が固まる。

いや、ちょ。

嘘だろ。


「ちょ、ちょっとお前ら!」


和也が慌てて止めに入った。

すまん。冗談が過ぎた!俺のせいだ!、と言いながら、だ。

こんなに混沌とするとは思わなかったんだ!、とも。

俺は和也を見ながら佐藤に向いた。


「.....佐藤.....」


「.....門司さんを許せない」


「.....と、取り敢えず話し合おうよみんな」


女子も男子も全員が俺達を見る。

冗談が冗談で無くなっている。

その中で門司と佐藤を特に見る全員。


門司は何が起こったか分からないという顔で佐藤を見ていたが。

考えが纏まってからこの世を終わらせる様な感じのキツい顔でそのまま教室を飛び出て行った。


しかし何故門司は.....あんな感じなのだ。

と腕まくりして考えていると。

佐藤が俺に向いた。


「.....ゴメンね。内藤君」


「.....少しビックリしたが.....でもあの状況では必要かもしれないが.....うーん」


「.....見損なったでしょ?」


「.....そんな事はないのだが.....」


俺は考えながら席を立ち上がる。

それから門司を探して.....駆け出した。

そんな俺を誰も止める奴は居なかった。

全くどいつもコイツも、と思いながらであるが青春ってのはキツいもんだな.....。

こんなに厄介だとはな。

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