第7話 私は君が好きだから

こんな事になるとは思ってなかったが。

門司が俺の幼馴染だった女の子。

つまりボーイッシュ幼馴染だという。


そして.....そのせいで佐藤を敵対視していた。

私が1番になりたいと。

門司は決意する様に、だ。


だからどうしても敵対視しなくてはならないという。

全てを知っているから本気で幼馴染だとは思うのだが.....でも。

いきなり目の前に幼馴染が現れて流石に.....困惑せざるを得ない。


正直、現時点では門司が勝っている気がする。

だけど俺は佐藤を捨てる気はない。

クラスメイトなのだから。


そんな悩みを抱えながらの2人を帰らせてからの.....翌日。

俺は悩みながらだがベッドから朝、起き上がった。

間もなくゴールデンウィークか、と思いながら、だ。

そして窓から外を見ていると声がしてきた。


「おはよう。内藤君」


「.....そうだな。おは.....は!?」


「何その顔?お化けでも見た様な」


「当たり前だ!何やってんだお前は!!!!?」


何故か起き上がると佐藤がニコッとしながら居た。

俺の顔を不思議そうに見ているが.....何をしている!?

アホなのかコイツ!?

俺の部屋で何やってんだよ!?


思いつつ佐藤を愕然とした眼差しで全身をくまなく見つめた。

え!?本当に何!?

部屋の中を満遍なく見渡す佐藤。

それから腰に手を当てる感じでニコッとした。

そして.....俺に寄って来る。


「私ね。あの女に悔しい思いをさせられたから。内藤君にお礼を告げたいのもあって.....内藤君を起こす係に就任した」


「.....は?.....いや。勝手な事を。そんな馬鹿な.....」


「.....私は内藤君が好きだからね」


「.....!?.....え.....」


佐藤は笑みを浮かべて赤面で俺を見てくる。

俺は少しだけその言葉に赤面する。

何.....!?


それから唖然として見ていると。

佐藤は柔和な顔でクルッと回転した。

それから.....俺にはにかむ。

嘘だろう。


「.....佐藤.....!?お前も俺が好きなのか?」


「.....うん。好きだよ?.....エロゲ友達としてだけど」


「最低だな!そうなのか!」


「.....それはまあ冗談だけど.....私は内藤君が好きだよ。心から」


「.....!」


内藤君が好きだからこんな事を。

つまりエロゲの内容を一緒に話せるんだから、とニコニコする佐藤。

何か言っている事は最低だが。

だが.....そうなのか.....。

俺が好きなのか。


それだったら全てが納得だな。

何故俺を好いているのか分からないが。

考えながら俺は顎を撫でる様な仕草をする。

そして佐藤を見つめる。

真剣な顔で、だ。


「お前は俺を取られたく無いのか」


「.....だってあんな幼馴染とか言いふらす様な奴に負けたく無いよね。普通。.....私が幼馴染だろうが何だろうが。好きなものを取られたくないからね」


「.....成程な。それでか。.....心から抵抗しているのは」


「.....そうだよ」


俺は眉を顰めながら目の前を見る。

すると、そういえば気付いた?私の髪の毛。ウェーブをかけてみたの、と佐藤は笑顔を浮かべて俺を見てくる。

俺は見開きながら確認すると確かにウェーブ掛かっている様だ。

イメチェン.....なのか?


「.....イメチェンってやつか佐藤」


「そうだね。.....内藤君に見てもらいたかったからね」


「.....」


そうはっきり言われると少しだけ照れる。

そんなに好きなのか俺の事。

だが俺は.....そうしているとその次に強迫観念に襲われた。


そして額に手を添える。

クソ.....やはり駄目か。

頭に手を添えてから呼吸を整えて佐藤に向く。

落ち着かせながら。


「.....佐藤。お前がどうあれ。.....門司がどうあれ。俺はお前らとやっぱり付き合う気は無い。すまないんだが」


「.....大丈夫だよ。ただ単に見てもらいたかっただけだからねこれは。こんな私も居るって事を知って欲しかっただけ」


「.....だったら良いが」


「それはそうと早めに起こしに来たけど遅刻しちゃうから。急いで」


「.....そうだな」


俺は制服を見る.....ん?

よく見たら上着がのシャツが無くなっている。

俺は?を浮かべて確認するが.....無い。


昨日用意したばかりの物が無くなるか?普通。

思っていてハッとした。

まさか佐藤か!


そして俺は佐藤を見る。

それからバッと横を見る佐藤。

コイツが隠しているんだな、と思う。

そして俺は手を差し出す。

持っている形跡は無いが.....何をしているんだ。


「佐藤。返してくれ。シャツ」


「私じゃ.....ないよ?」


「.....そんな冷や汗だらけで言ってもな.....説得力が無いんだが」


「そ、それじゃ私が変態みたいじゃない!」


「いや.....用意した物が1日で消えるとか有り得ないだろう。お前しかいないんだが。返してくれ。義妹な訳も無いしな」


「うー」


うー、では無い。

時間も無いのだから返してくれマジに、と思いながら佐藤を見る。

それから佐藤は悲しげな赤面なそんな顔をした。

もどかしい様な、である。


すると佐藤は何かをボトッと落とした。

それは.....折り畳まれたシャツだった。

実はね!私が折り畳んであげたの!、と満面の笑顔を見せる佐藤。

そして満面の笑顔を浮かべる。

嘘ばっかり。


「.....それは結構だな。.....返してくれ。時間が無いんだから」


「.....本当だから!」


「.....分かったって.....」


俺は首を振りながら溜息を吐きそのままシャツを受け取ってからそのまま佐藤を追い出して着ようとする。

のだが.....信じられない物を見つけてしまった。


それは机の下。

カメラの様なもの。

どう見てもスマホである.....が。

隠しているつもりか?


「.....ここまでするかアイツ.....」


佐藤の野郎.....やっぱり付き合うの止めようかな。

考えながらそのままスマホの電源を落とし。

そしてベッドに投げ捨ててから。

俺は着替えを始めた。

全く、と思いながら、である。



「ねえねえ内藤君」


「.....何だ」


「エロゲ攻略の話なんだけど。ヒロインを落とすルート」


「.....お前.....人が居るからな.....良い加減にしろ」


そんな会話をしながら俺達は登校を始める。

歩きながら佐藤は笑顔で俺を見てくる。

その佐藤にまた溜息を吐きながら答える。

全く恥ずかしいんだが。

流石の俺も。


「.....ねえねえ内藤君」


「.....何だ今度は」


「何で私を門司さんから助けたの?」


「.....それはクラスメイトだからな。お前が」


「.....ふーん。そうなんだ。嬉しいな♪」


楽しそうだ。

それから嬉しそうだが。

そんなに深い意味は無いからな。

俺は眉を顰めながら佐藤を見つめる。


佐藤は、えへへ、と嬉しそうにはにかんだ。

何というか恋する女子ってのはこんな感じなのか?

まるで.....スイートだな。

甘いケーキの様だ。


「.....門司さんに勝たないとね。私」


「.....それを言うなら山口もじゃないか?」


「そうだね」


「.....」


苦笑しながら佐藤を見る。

佐藤肺を決した様に真っ直ぐに前を見る。

その姿に少しだけ息を吐いた。

それから、佐藤、と向く。

この考えは.....伝えないといけない気がしたから。


「何?内藤君」


「.....お前は例えば俺が幼馴染じゃ無かったらどうするんだ」


「.....その時はまた.....誘惑するよ。大丈夫」


「.....そうか」


だって私は内藤一馬君。君に恋をしたから諦めないよ、と笑顔を浮かべる佐藤。

やれやれ、と思いながら俺は佐藤を見る。

笑顔の佐藤を。

まるで.....子供様な無邪気な笑顔だ。

思いながら.....こんがらがった紐を見る様な感じで居ると。


「.....かっちゃん」


「.....門司.....」


肝心の女の子が目の前に現れた。

その紐を解くかそれとも新たなる絡まりになるか。

鍵を握っている女子が、だ。

俺達をジッと見据えてきながら、である。

曲がり角で待っていた様だが.....。

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