どちらかが嘘を吐いている

第6話 芽久と蕾の存在

門司を見てから俺ははっきりと過去の事を思い出した。

この香りは.....!

それは.....幼稚園時代の好きだったボーイッシュな最初に言った女の子だ。


私がその女の子だよ、と門司はアピールしてくる。

それも誰にも見せない様な満面の笑顔で、だ。

宝石の様だ。


俺は、!?、としか浮かばない。

いきなり来られても何か裏が有りそうなのを疑うのだが。

そもそも何で今!?

怪しすぎるが.....でもこれは.....!


「私ね。ずっと君を見ていたんだ。だから声をいつか掛けようと思っていたの。だから今になっちゃったけど」


「.....そうなのか?」


「うん。私は君が好きだから。だからずっと.....話がしたいと思っていたの」


「.....門司。お前は本当に俺の昔の好きだったあの女の子なのか?」


そうだよ、と笑顔でジュースを飲む門司。

家の中に招いてからそのまま過去の話を聞いていたが。

疑いようがないぐらいに全てが合致する。

どうなっている。


門司だったのか?

俺の過去のあの娘は。

こんなにいきなり結論が出るとは.....。

でも何でそれで佐藤の顔が浮かぶのだ.....?


「門司.....お前がボーイッシュな女の子だとして.....何故この場所に戻って来ている?」


「.....そうだね。処女をあげるつもりで来たかな」


「.....今何つった?」


「処女をあげるって言ったよ。だって私.....君が好きだから。だからこの場で裸にでもなれるしね.....」


言いながら胸元を開け始める.....門司!?

コイツ何やってんだ!?

流石の俺も赤面しながら門司を慌てて止める。

マジに何やってんの!?

ピンク色の下着が見える中で大慌てになる。


「.....それだけ好きって事だよ。.....君を」


「.....勘弁してくれ.....嘘だろ」


「君だって下半身.....デカくしているじゃない」


「それは気のせいだ。.....というか触るな!」


門司が俺を押し倒して来た。

そんな形になっている中。

俺は門司に下半身を弄られている。

かなりマズイ。


このままでは流石の俺も理性が保てない。

思いつつ俺は目の前の紅潮している門司から起き上がって勢い良く警戒しながら遠ざかって行く。

まるで苦手なものを見て飛び退く犬の様に。

そして理性を取り戻した。


「いい加減にしろよお前.....」


「.....私は.....君が好きだから。心から好きだから」


「だからと言っていきなりこんなに飛躍して良い訳無いだろ。流石に駄目だ」


「かっちゃん。じゃあどうすれば良いの?私はエッチな事をする為にこの場に来たのもあるしね」


「.....」


かっちゃんのお陰でこんなにもゲームに嵌って。

何というか.....こんな開発された女の子になったんだよ?

だから私はありのままを受け止めたいから。

と胸に手を添えて笑顔を見せる門司。

いやいやマジかコイツ。


「胸もこれだけ昔より大きくなったしね。だから男装が出来ないけど」


「.....!」


「かっちゃんの為ならって思う。私は.....全て」


「.....あのな.....その為に俺に.....というか駄目だ。いい加減にしろ。俺は昔とは違うんだ」


「じゃあせめて今から恋人として付き合ってくれる?」


本気でどうすれば良いのか。

俺はこの女子をどう説得すれば良いのか。

考えながら悩みながら顎に手を添える。

するとインターフォンが鳴った。

俺は門司に、すまんインターフォンが鳴った!、と逃げる様にインターフォンを見てみる。


「.....って.....え?佐藤?」


そこには佐藤がインターフォンの前でモジモジして映っている。

でも何でもいい。

取り合えずはこの状況から逃れられるのなら、と思ったが。

門司が俺の手を強く握った。

それから厳つい顔で俺を見てくる。


「待って。何処行くの?誰なの。かっちゃん」


「.....俺のクラスメイトだ。.....だから離してくれ。門司」


「.....駄目。行かせない。私以外の女の子は駄目だから」


「いやいやそういう訳にはいかないだろ.....」


「.....いいや。私だけを見ていれば良いんだよ。かっちゃんは」


笑顔を浮かべる門司。

そんな訳にはいかないだろう。

という事で、頼むから手を放してくれ、と言うが。

門司は全く手を放してくれない。

寧ろ握る手が強くなる。


その手を自らの胸に添えようとしている。

今から見せ付けるよ、的な感じで、だ。

俺はそんなあまりに理不尽な光景を見ていると背後から声がした。

唖然とした様な声だ。


「何.....しているの」


「.....佐藤!?」


多分、返事が無いから気になったのだろうけど。

佐藤が愕然として目を見開きながら俺を見つめている。

その手に持っていた荷物をドサッと落としながら、である。


俺は、待て佐藤。.....何か誤解している、と慌てる。

佐藤は唇を噛み顔を覆った。

涙を流し始める。

何故に佐藤がその様な行動を知らないが.....俺は唇を噛む。


「.....どうしたら良いんだ.....」


俺は額に手を添えながら門司を見る。

門司は変わらずニコニコしている。

ずっと、だ。


佐藤をまるで敵と認識しているかの様な感じである。

俺は額に手を添えたまま門司の弱まった隙を見て手から逃れてそのまま佐藤に寄る。

そして佐藤の肩を掴む。


「落ち着け。完全な誤解だぞ佐藤」


「判るけどちょっとショック.....」


「アイツがいきなり襲って来たんだ。.....しかし俺だけじゃなくてお前門司を見てから泣いているよな?門司を知っているのか?」


「.....知っているけど.....一応」


「.....そうなのか?」


俺は驚愕しながら佐藤を見つめる。

それって本当にか?

俺はビックリしながら.....佐藤を見る。

すると門司がゆらりと立ち上がる。

それから笑みを浮かべた。


「その娘は気にしないで大丈夫だって。私だけを見て」


そういう訳にはいかないだろう。

俺はキッと門司を睨む。

さっき佐藤と喧嘩はしたけどこの状況では話が別だ。

慰めてあげないと。

思いつつ俺は門司を睨みながら見る。


「門司。俺はお前が悪い女の子だとは思っては無いが.....すまない。.....お前が約束の女の子だとしても。.....俺だけじゃ無く周りを見て大切にしてほしいんだが」


「.....かっちゃん.....」


「.....それに佐藤はクラスメイトだからだから放っては置けない」


そんな感じで門司に言い聞かせながら俺は佐藤の肩を持つ。

だが次の瞬間。

とんでもない事を門司は言った。

それは.....天変地異でも起こりそうな一言だ。


「.....でもその娘は私の知っている限り.....良く無い感じがするよ?」


「.....お前.....その言い方は無いだろう.....!」


「.....かっちゃん。.....その娘は危ない」


「.....」


あのな.....コイツ!

だからと言って放っては置けないだろう。

俺は思いつつ佐藤を椅子に座らせてから門司を見る。


お前の言う事がそうであったとしても.....佐藤が可哀想だから。

俺は佐藤を慰めるよ、と門司に言う。

門司は、そう、と言いながら二の腕に手を添える。

少しだけ不快な感じで、だ。


「それならそれでも良いけど」


「.....」


正直。

今の言葉で俺は.....はっきりした。

門司も佐藤も関連性が有りそうな気がする。


だけど何処にどんな関連性があるかそれは分からないんだが.....。

気持ちが落ち着かない。

まるで.....心が嵐に見舞われている様な感覚だ.....。

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