第3話 取り返しがつかない気がするのは俺だけか

山口と和也と共に俺はご飯を食べる。

何というか山口のご飯。

つまりお弁当だが.....かなり美味しかったと言える。

弁当の中身は冷食が一個も入って無い。

全て手作りだという。


どれだけ時間が掛かったというのか。

こんな俺の為に、だ。

健気だな、って思うのだが.....何故俺にお弁当?

俺は顎に手を添えながら黒板を見る。

カツカツと6時限目、チョークの音を立てる黒板は物言わず文章を映し出す。


こういう黒板とか生物じゃない物の物静かなのがやっぱり好きだけどな。

そう思いつつ.....少しだけ食べ過ぎた様な腹を押さえながら。

窓から見える先に目をやる。

暖かな日差しを差し込ませる太陽が見える。


間も無く5月だな、と思いながら。

何だか変わり映えしない世の中と思っていたのだが。

変わり始めたな。



「それじゃ帰るか」


「そうだな。とっとと帰ろう」


和也と会話をしながら.....俺は見る。

そして掃除当番に任せながらそのまま帰宅しようとした。

のだが.....また佐藤が絡んで来る。

今度はガタンと椅子を鳴らして、だ。


「.....?」


「.....な、内藤君。もし良かったら一緒に帰ろう」


「.....何を言っているんだ」


「い、一緒に帰りたいの。.....私」


いきなり一緒に帰ります。

とあまり話した事無い女子に言われても困るだけなのだが。

いや、関わり合いはそれなりになっているが。

でもな佐藤は変態だしな.....。


いやまあそれが明確な理由では無いのだが。

簡単に言えばいきなり話をした女子といきなり一緒に帰るってそれはどうかなって思わないか?

横で和也は血涙を流している。

全く面倒臭いな.....。

この場に山口が居なかったのが幸い?なのかもしれないが。


「佐藤。何故一緒に帰らなくちゃいけない」


「.....え.....えっと。そうだ!えっとね!一緒に行きたい場所があるの!」


「.....それは何処だ?俺は家に帰りたい」


「い、一緒に.....」


「.....」


泣きそうな顔をする。

困ったものだな。

かなり面倒臭いんだがでもこれを断ったら何か.....クラスメイトにキルされそうだ。


レッドカードでバットで死亡で退場的な。

流石に勘弁して欲しいものがある。

この若さで死にたくはない。


「.....分かった。.....和也。すまないが今日は佐藤と一緒に帰る」


「おう。気を付けてな。そして死ねや」


「いや心配しているのかしてないのかどっちだよ.....」


そして俺は佐藤と一緒に帰る事になった。

何故こんな事になるのか。

全く.....。


俺は暇じゃないとあれほど言ったのだが。

勘弁してほしい。

勉強しなくちゃいけないんだぞ。

それにラノベも読みたい。



「それで行きたい場所というのは何処だ」


「ゲーム屋だよ」


「ゲーム屋?何しに行くんだ」


「え?あ、えっと.....えっと.....うん。れとろ?ゲームを買うの」


「.....レトロゲーム?お前が?」


帰宅中にそんな会話になった。

河川敷を歩いている際、だ。

しかしこれはまさかだが。

エロゲとかを買うとかいうんじゃ無いだろうな。


それで一応見張り役で俺を呼んだとか。

そんなんじゃ無いだろうな。

流石にヤバいぞそれは。

コイツがいかに変態かを表している。


「.....お前。まさかだが.....」


「へ!?そ、そんな事ないもん!馬鹿じゃないの!?女子にそんな事言わせないでよ!!!!!」


「何も言ってない。.....その反応でもう分かった。答えは明確だな。お前は所謂エロゲを買おうとしているな?隠すのが下手だな。途中まで詳しそうな奴を.....親しい奴を呼んだってかそんな所だな?俺はオタクだし」


「.....そんな事ないもん.....」


「声が小さい。.....あのな.....18禁だろあれは」


そ。そんな事ないもん.....エロゲじゃ無いもん.....、と呟く佐藤。

悲壮な感じで、だ。

恥ずかしいとか無い。


つまりその点が完璧に狂っている。

何というかもう帰った方が良さそうだが。

だけど佐藤は帰してくれないだろう。

きっと、だ。


これ非常に参るんだが。

エロゲ買うのに男が女に付き合うってそれどういう事なの。

普通逆だろう。

エッチなのは男なのだから。


「.....俺は帰るぞ。下らない事は嫌だ。それにバレた引責とかもヤバいし」


「女子を一人残して帰るの.....」


「.....いや。行く所がアウト過ぎるだ。帰るぞ俺は」


「.....帰っちゃうんだ.....」


「.....」


もうバレた以上、隠すつもりも無い様だが。

エロゲを買うのに付き合えっていうのがおかしいんだけど。

助けてくれないでしょうか誰か。

代わりに佐藤に知恵をやってくれ。

思いつつ俺は、ああもう!、と言いながら踵を返した。


「今日限りだからな!.....というか服とかどうするんだ」


「え!?有難う!.....あ。服?.....ウチに来れば良いじゃない」


「.....お前は気楽すぎるだろ.....あのな.....。.....というかまさかだがお前.....計画してないか?これ全部」


「え?」


「.....え?じゃない。.....やっぱり俺は帰るぞ」


待って待って!!!!!冗談だよ!

と佐藤は、イヤイヤ!、と俺を見てくる。

本気で佐藤の家に行くのか俺は。

何故いきなり美少女の家にしかもエロゲを買う為に.....?

冗談だろう。


「男物の服は無いだろう。そうは言っても」


「.....そうだね。じゃあお洋服、買っていこう。お金あるし」


「.....お前は.....。もう良いや.....」


確かコイツの家は.....若干の金持ちだったな。

だからお金があるのだろうけど。

服を買うとかいう発想になる時点でおかしい。


金銭感覚ズレてるな。

あ.....そうか。

だからエロゲも買えるんだな.....。

金銭をあぶくの様に使えるから。


「.....佐藤。あのな。今回限りだからな.....本当に」


「うん♪」


「.....お前本当に分かってる?開き直っているよね?」


「うん?」


「.....」


(?)とか(♪)じゃ無い。

何だか俺は取り返しのつかない泥沼に嵌って行っている様な。

つまりを言うならゲームポイントで引き返せない部分に来た様なそんな感覚なのだが.....ヤバい気がしてきたのだが.....。

良いのかこのままで.....俺は.....?

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