第2話 友達になって下さい

俺自身は人と関わるのがそんなに得意ではない。

それは昔からそうなのだが。

特に美少女とかリア充とかそんなのに関わるだけでも面倒臭いのだ。

そんな感じの性格だから、である。


昔、ボーイッシュなとても仲が良い男の.....最後に女子って言っていたけどそんな友達と言える奴以外は、だ。

もう1人、仲が良い子が居た様な気もするが.....それはまあ置いておこう。

付き合いもあまり無かったしなその子には。


そのリア充とかから遥かに遠い筈の俺は今。

クラスメイトの美少女に捕まって軟禁されている様な有様である。

簡単に言ってしまうと兵隊が罪の無い民間人をいきなり捕まえて自宅に連れて行く様なそんな感じであるが.....。


さっきも言ったが俺は隙じゃ無いんだが。

何がしたいのだこの女。

俺は思いながら佐藤を見る。


「何がしたいんだ佐藤。.....この場所から出してくれ」


「.....嫌。.....私の性癖を見たかもしれないなら.....出す訳にはいかない。詰問する」


「.....だから俺は何も見てないとあれほど。見ても無いのに詰問って.....」


「怪しいから!.....絶対に.....!」


「.....ハァ.....なんてこった.....」


変態にここまで面倒だとは。

面倒臭い。

これは関わるだけマズい気がする。


どうしたら良いのだろうか。

正直、数学の難題解くよりも面倒臭い。

かなり困るんだが。


この場は切り捨てる様にしようか、と思いながら佐藤を見ていると。

佐藤が唇をもにゅもにゅ的な感じでし始めた。

それから見上げてくる。

そして意を決した様に近付いて来る。


「.....私は君が嫌いだよずっと。そんな君が」


「.....?.....そうか。ならそれでも良いが」


「.....でも.....放って置けないから」


「.....いやいや意味が分からない。.....関わりたくない、関わりたいどっちなんだ?」


「君はずっと独りぼっちだったよね。それが.....うん」


その言葉に俺は見開く。

そして.....佐藤をジッと見据える。

それもキツい眼差しで、だ。


結構俺は今、威嚇する態度を取っているが.....何の話だ。

それを馬鹿にする気か。

それとも過去を馬鹿にする気か?

そういう話なら全てが.....決裂したが。

と思っていると.....佐藤は複雑な顔で俺を見てきた。


「ゴメンなさい。一体何が言いたいかって言えば友達になってくれないかって話.....なの。それで過去を切り出したの。嫌だったよね。ゴメン」


「.....そうか」


「.....有難う。.....内藤君」


でも何だか肝心な所が言えなかった。

そんな感じで落胆しながら俺を見てドアを開けて解放する佐藤。

それから俺は出口まで行って出て行こうとしたのだが。

その背中を摘ままれた。

俺は?を浮かべて背後を見る。


「.....私.....その.....」


「.....?.....どうした」


「.....いや。やっぱり止めとこうかな」


「.....」


佐藤は苦笑いを浮かべた。

俺を友達だと言ってくれた佐藤。

だけど.....俺は.....友人を大切に出来ないだろう。


申し訳無いが人を好きになったら友人を作ったらダメなのだ俺は。


そういう人間だしな。

過去がそういう感じだったから。

だからきっと.....いつか俺は佐藤と別れるだろう。


佐藤の友人の想いには応えられない。

考えながら俺は顔を顰めて佐藤を一瞥して部屋から出た。

それから歩き出す。


教室に帰って来ると早速と和也がニコニコしながら関わって来た。

死ね、的な目でだ。

マジに、殺す、的な目もしている。


「何やってたのかな?君は?アハハ」


「.....特に何も無いぞ」


「何もない訳無いだろう。学校1の美少女と一緒だったんだろ?アホかお前。教室も大騒ぎだぞ。何処に行ってたんだよ」


「.....面倒臭いなお前」


「面倒臭くしたのはお前だ。良い加減にせえや」


全く猿の様な奴らめ。

俺は考えながらそのまま溜息を盛大に吐いた。

それから.....自分の席に戻り。

佐藤も戻り。

また腰掛ける。


そして時計を見る。

間も無く授業だな。

本当にギリギリだったな。


危ない。

考えながら時計の短針と長針が重なるのを眺めていると和也が俺に向いた。

それから少しだけ口角を上げる。


「.....でも一馬。お前、顔付が多少変わったよな。さっきと」


「.....変わった?そんな馬鹿な。そんな短時間で人間変わるかよ」


「何だか嬉しそうだ。お前」


「.....良く分からんがそうなのか」


「.....もしかしたらお前の運命の人かもだぞ。佐藤が」


「.....無い。絶対にな」


和也の言っている事は幼馴染。

さっき言ったボーイッシュな女の子の事だろう。

だけど.....夜逃げした両親と一緒に連れて挨拶無しに消えた。

俺に.....女の子で素性が誰か告白する前に、だ。


俺はその過去も多大なショックを受けている。

よく考えればこの頃からだったな。

恋をしなくなったのは、だ。

あの忌まわしき過去も有るが、だ。

俺は横の席に座る和也に聞いた。


「.....和也。お前は探さないのか。運命の人を」


「.....お前さんを見届けてからまあ探すさ。俺はな。今はいいや」


「.....そうかよ。.....勝手にしろ」


「おう。俺は仮にもお前のダチだからな。アッハッハ」


和也は昔からこんな感じだよな。

マイペースなのか分からないが、だ。

俺は考えながら和也の笑顔を見つつ少しだけ笑みを浮かべてから。

そのまま教師を待ってから.....考える。

そういや来週はゴールデンウィークだったな、と。



「ふあ.....」


全く嫌になってくる。

授業を受け続けるとこんな感じになるってのが。

眠気が凄まじいものがある。


考えながら俺は目の前のパン達を見る。

3個のパン。

俺の昼食だが。

それを見ながら居ると和也がやって来た。


「一馬。机」


「.....おう」


そして俺達は席を寄せて何時もの通り食べ始める。

昼食の時間になったので、だ。

そうしていると.....目の前に人影が現れた。

その人物は.....山口だ。


何か.....弁当箱を2つ持っている。

俺は目を丸くする。

一体何だ?


「.....どうした。山口。珍しいな」


「.....その。.....お弁当作ったの」


「は?誰にだ?」


「.....内藤君」


「.....は?」


教室が凍った。

佐藤がピクッと反応した様な気がしたが。

解凍した様に教室が騒ぎ始める。

どういう事だ、と言いながら、だ。

まるで宴会場の告白の様な、だ。


俺は山口を見続ける。

赤いまま俺に差し出している。

何がどうなっているのだ。

和也も固まって愕然としている。


「山口?どうなっているんだ」


「.....私は.....その.....作りたかったから」


「.....?」


「.....食べてほしかったから。私の。練習した」


「.....そ、そうか」


何がどうなっているのか全く分からないのだが。

取り合えずそう言うなら受け取るしかないのだが。

考えながら俺は少し控えめに受け取る。


紅潮している山口から青い布で包まれたお弁当を。

しかし山口はこんな事をする様な女の子じゃ無かった気がするんだが.....どうした。

思いつつもお礼は言わないと、と思い山口を見る。


「山口。有難うな」


「.....う、うん!.....有難う!」


「.....一馬。お前という奴は。死ねクソが」


「暴言だなお前.....」


「.....いや。割とマジに死んで下さい」


ただ単にそれぐらいですね、と満面の笑顔の和也。

というかそんなに女子を惹き付けるとは.....、と和也は悔し涙の様なものを流す。

そんな和也を引き攣った顔で見つつ山口に向いた。

それから笑みを浮かべる。

そして椅子を持って来て椅子を引いた。


「お前も一緒に食うか。もし良かったらお礼として」


「.....え、あ。良いの.....?」


「.....恩人だしなお前との関係性は」


「!.....あ、有難う!」


山口は嬉しそうに椅子にそのまま腰掛ける。

しかし何故いきなり弁当なのか。

これまでこんな事象は起こらなかったのに。


その真相を知っているのは和也と山口本人とメラメラと何か赤い炎を出している佐藤ぐらいだろう。

それは漆黒の炎とも言えるかもだが。

また面倒臭い事になってきたな.....。

何が起こっている?


「.....しかし何で弁当作ったんだ?」


「.....そ、それは.....えっと.....えっと」


「喋るのが嫌なら大丈夫だ。.....とにかく有難うな。本当に感謝して食べる」


「.....うん。朝から作ったから。美味しく食べて」


男子達が、いや割とマジにくたばれ内藤、的な感じ俺を見てくる。

山口のやってくれた事は有難いのだが.....これが面倒なのだ。

考えながら頭を掻いた。

何だか全てに裏が.....有る様なそんな感じだが。

考えるのも面倒臭い。

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