第56話:従属爵位
皇紀2222年・王歴226年・早春・ロスリン城
「ハリー殿、流石にそれは反対する者が多いのではないか。
ローガンはいい、ローガンはエレンバラ家が弱小な時から忠誠を尽くしてくれた。
だがアイザックは流れの影衆だ、一族衆や譜代衆がどう思うか……」
「一族衆や譜代衆がどう思おうと構わないぞ、爺様。
率直に言うおう、我が家は俺一人の力で成り立っている。
俺のやり方が気に入らないと言って、叔父上達や譜代衆が全て出て行っても、一向にかまわないし、さしたる損失でもない。
だが、大叔父上とトーマス、アイザックには出て行かれては困るのだ。
そんな事も分からないのなら、叔父であろうが譜代であろうが邪魔なだけだ」
「ハリー殿の言う事が正しのだろうが、人の妬み嫉みはどうしようもない性だ。
それを承知で、謀叛を起こす者が現れる覚悟で、二人に男爵位を与えるのだな」
「爺様、エレンバラ家はこれからまだまだ大きくなる。
俺はプランケット地方を統一して、アザエル教団がスティントン地方を奪い取るのを待って、アザエル教団が支配している四地方をエレンバラ家のモノにする心算だ。
そうなれば、エレンバラ家の領民の数は二百七十万人くらいになるだろう。
そうなった時に、一族衆や譜代衆が傲慢に振舞っては、新たに臣従してくれた者達や領民の反感を買ってしまう。
今のうちに、一族衆や譜代衆に自分達の立場を分からせておかなければならない」
「分かった、ハリー殿がそこまでの覚悟で言っているのなら、俺も手伝おう。
なんでも言ってくれ、どのような悪辣な事でもやって見せるぞ」
「そんな覚悟はいらないよ、爺様。
ただ俺の側にいて、当然の事だと言う態度でいてくれればいい。
ああ、すまん、爺様にとっては叔父上達は大切な息子だな。
事前に俺の覚悟を伝えて自重させてくれても構わないぞ。
叔父上達の魔力だって、王国男爵に成れないほど低いわけではない。
魔力の強い貴族の庶娘や騎士の娘を側室に迎えれば、強力な魔力を持つ子供に恵まれる可能性もあるのだ。
そうなれば、残った三つの男爵位を与える事になるかもしれない。
いや、これから大きな手柄を立てれば、王家が新たな従属爵位を与える可能性もあるぞ、だから今まで以上に奮起してもらいたいと思っている」
俺は建前上可能な話しを爺様にして、叔父上達に伝わるように仕向けた。
俺だって好き好んで一族相争うような状況にしたいわけじゃない。
この後の事を考えて、一族衆と譜代衆の頭を抑えたいだけだ。
争いが表にでてしまったら、周辺貴族に付け込まれてしまう。
他の家が相手なら、誘いの罠になるのだが、カンリフ公爵家とアザエル教団が手を組むような状況になると、少々厄介だからな。
「エレンバラ家の所有する爵位」
エレンバラ皇国名誉侯爵:ハリー
エレンバラ皇国子爵 :ハリー
エレンバラ王国侯爵 :ハリー
ロスリン王国伯爵 :ハリー
エレンバラ王国男爵 :ハリー
ディグビー男爵 :ハリー
カーベリー男爵 :ハリー
エヴァンズ男爵 :ハリー
ダンセイニ男爵 :ローガン(大叔父)
ダンボイン男爵 :アイザック(エレンバラ影衆頭領)
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