ラッキーデー


僕はとりあえず、最寄り駅まで向かう。

「4番線に列車が到着します。黄色い線までお下がりください。」

(ヒューン……。ガタンゴトン。ガタンゴトン。プシュー……。)

今日は気分的に違う席に座るか。

いつもはここだけど、今日は真ん中らへんに座ろ。



いつものように左耳にBluetoothイヤホンを付けて好きなバンドメドレーを流す。

僕は爽やか系な曲やアーティストが好きだ。

特に最近のリリースされる曲は、穏やかで爽やかな曲が多くて癒される。

好きだな……。



LINEの通知が上部に表示される。

(正吾:今日の予約数、えげつないぞ。)


バイト先は個人店の焼肉屋なんだけど、予約数で忙しさの変動が激しい。

今日はその日らしいな。



正吾には申し訳ないが、ラッキーだったな。



最寄り駅からあと2駅のところで、足腰が弱そうなおじいちゃんが乗車してきた。

杖を持っているけど荷物もあって杖の意味がないじゃん。

――ちょっと可愛そうだな。



いつもだったら見て見ぬふりをしてしまう僕だが、今日は何だか助けたくなる。

どうした僕、正義感があるぞ。

「あの……。よかったらここ座ってください。」

あまりこんなことしないから、目線を合わすのでさえ恥ずかしい。

おじいちゃんは弱々しい声で答えた。

「いいのかい? お兄ちゃんも座りたいじゃろ?」

「いえ、僕はもう少ししたら降りるので。」

「そうかい。ならお言葉に甘えて」



荷物を足元に置くと重そうな腰をゆっくり椅子にかけた。

ホッと息をつくと僕を見て、おじぎして声は出してないが「ありがとう。」と口元だけ動かした。



――いいことするってこんな感じなんだ。

内心めちゃくちゃ嬉しくて舞い上がっている自分がいる。

意外と僕は単純な人間なのかもな。


なんだかんだおじいちゃんに構っていたら、最寄り駅に着いた。

「まもなく○○駅、○○駅。お出口は左側です。」

おじいちゃんにお辞儀だけして、電車を降りた。



さぁーてと、パソコン買いに行きますか!

いいこともして気分が高まってるこの状態であれば、いいパソコンが買えるはず。

気候もさっきより涼しくなって快適だ。

「いい感じだ。」



パソコンを買う店はもう決めている。

ネットでずっと狙っていたあのお店でパソコンを買うんだ。

しかも、セールも今日からスタートって書いてあったから本当にラッキーデーだ。



この間、美容室で雑誌読んだ時に占いのページをたまたま載ってたから見たら……。

≪3月生まれ 魚座 今月は今まで頑張ってきたことが報われるでしょう。≫

占い通りに事が進んでるじゃん。

今日はいい日になるかもしれないぞ。

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