ユーリ・グレース・ノルディアの華麗なる推理[12]
「それで、アレク様。警邏隊とは? 赤獅子とはちがうのですか?」
「そうだな、いわゆる赤獅子・金獅子は通称になる。正式には第1師団第二部隊……といったふうに細かく部隊分けされてるんだが、赤獅子が都周辺の治安維持、えー……」
子供にも分かりやすい言葉を探すアレクセイに、ユーリは生真面目に頷いた。
「ええ、悪いやつをこらしめているのよね?」
「まあ、だいたいその通りだ。その赤獅子が本隊だとすると、その一番下に位置することになる」
つまり、入隊後に昇格していくと、ユーリが目にしたこともある、赤獅子の緋色の隊服を着ることになるのだろう。
「警邏隊の大半は平民出身だな」
「ケイマン様のご子息は?」
先ほどの話を聞く限り、少なくとも爵位持ちのようだったのに。
「あそこは叩き上げでこそ強くなれるって主義の家門だからな」
「帝都を長い間守護してきた家門ですから、家格で言えば伯爵家となるのですが、とても民に親しまれ敬われていますよ。警邏隊に入隊すると、やはり民との距離も近くなりますし、貴族だ何だと言っていられなくなりますからね」
おっとりとヨアンが言い添えた。
「厳しいんだ」
「ええ、貴族の子弟が一から始めるには、おそらく彼らの想像以上でしょう。自分などは、父の計らいで初めから本隊への入隊を許可されましたし」
アレクセイは肩を竦めた。
「それもお前に実力があったからだろう。推薦が必要だし、一応、入隊試験もあるからな」
ヨアンは苦笑いだ。
「なんにせよ、多少の手心はあったと思ってますよ」
「そうかい」
名門貴族出身かつ入隊して日も浅い新人であるケイマンの息子は不運にもスタートから躓いたということか。
とはいえ、皇子であるアレクセイの元まで話が上がるほどの、困った事態とは一体何だろう。
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