ユーリ・グレース・ノルディアの華麗なる推理[8]

(……それでやって来た王女が、十六歳のお姉さまじゃなくて七歳のわたしだったっていうんだから)

 わざわざ護衛のために帝国からやってきた騎士が、国を出る馬車に乗りこむユーリを憚りなく凝視してしまう気持ちも分かろうというものだ。

(城に入ってみれば、ほとんど全員から二度見されたし……)

 皇帝の年齢は二十二歳。

 妻にと言うならば、常識的に考えて、当然姉が嫁いでくるものだと思ったのだろう。

 その辺り、書面で確認しなかったのかと思わなくもないが、所詮は取るに足らぬ小国の事。まさかこんなふざけた真似をするとは想像すらしていなかった――といったところだろうか。

 入城した初日、国の重鎮から城内の官吏や侍女、騎士に至るまでが『正気か?』という顔をしていたのが居たたまれなかった。

 正直、未だに気まずいし。


 邪魔者扱いされるよりは余程いいが、客観的に見てもやはり自分は可哀想だったのだなとユーリは遠い目になった。

「陛下もねぇ、お姫様のところにお渡りにならないそうじゃないか」

「お渡りって……あんな小さい殿下のところにですか?」

「バカだね、そういう意味じゃないよ。お気にかけて差し上げればいいのにってことさ」

「不憫じゃないか。お国の事を思えば、今となっちゃ家族なんて呼べるのは陛下だけだよ」

 なるほど?

 言われてみれば、確かにそうかもしれない。

 とはいえ、あの皇帝陛下に家族としての親しみを持てるかはユーリ自身としても甚だ疑問だ。

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