ユーリ・グレース・ノルディアの華麗なる推理[6]
ユーリには前世の記憶がある。
正確には、今生ではありえない記憶があるので、おそらく前世の人生の記憶ではないかと思っている――といったところだろう。
はっきりと覚えているのは、今と同じ『ゆうり』という自分の名前と、日本という国でおよそ三十年間程を生きたこと。
それくらいだ。
多分だが、死んだのだと思っている。
しかし、その原因が事故だか病気だか、はたまた殺人だかは定かではない。
家族のことも、両親共に健在で愛されて育った確信はあるのに、名前ははっきり思い出せない。
それなのに、毎週連載を心待ちにしていた漫画や読んだ本のタイトルは覚えているし、仕事で嫌だった事などの経験は記憶にあった。
全て自分の見た夢だと言われれば、そうかと頷いてしまいそうな程、記憶は膜一つ隔てたところにあって、唐突に思い出したり、反対にぼんやりと薄れてしまったりする。
だから、ユーリは実際に七歳の子供であるのに、大人みたいな言動をしてしまう事も、そうかと思えば肉体に精神が引っ張られるのか年相応の酷く幼い振る舞いをする事もあった。
(そもそも、意識がはっきりしだしたのもここ一年くらいの話だし)
子供の小さな頭には、別世界の三十余年の記憶は納めておけなかったのか、ユーリは度々奇妙な言動を繰り返したり、まともに会話ができなかったりした――らしい。
意識があやふやで、頭がはっきりしていない時の方が多かったのだ。
これでは、生まれつき正気を失っていると思われても仕方がない。
そのせいで、生国ではユーリは王女でありながら遠巻きにされてきた。
(たぶん、帝国に嫁にだされたのも、そこらへんに理由があるんだよね)
厄介払い。
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