化け狐
日照りが続いて、川や湖の水が減っていた。こういう時は妙な客が店に来る。
「お魚ください」
恥ずかしそうに、表の商品棚に半ば隠れるようにしてそう言ってきたのは、やけに獣臭い子供だった。
「金は?」
こちらに近づきたくないのか、一生懸命手を伸ばして銅貨を渡してくる。
俺はそれを受け取って、他の銅貨とかち合わせる。音が鳴らなかった。音の鳴らなかった銅貨を掌に載せて思い切り叩く。手を退けると出てきたのは木の葉だった。
「これじゃダメだ」
木の葉に戻った銅貨かを子供に突き返す。それでも魚が欲しいのか、子供はじっとこちらを見返してきた。
しょうがないのでザルを一つ子供へと放る。
「そのザル一杯に木苺を取ってこい。それと交換だ」
子供は目を輝かせると、ザルを掴んで走り去る。時期だからそう時間も掛からずに返ってくるだろう。
夕方、子供がザル一杯の木苺を抱えて返ってきた。どれも十分に熟した美味しそうな物だった。
それと交換で約束通り魚を渡してやる。子供は魚を大事そうに抱えて帰っていった。
店仕舞いを澄ませ、木苺に手を伸ばす。久しぶりの味に思わず尻尾が飛び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます