見慣れぬ人

林の中に見慣れない人たちが入っていく。


その林は近所のおじいさんの持ち物で、自分も子供の頃は探索などをして遊んでいた。そのおじいさんと一緒にキノコや自然薯を取った事もある。この前も山菜を一袋貰った所だった。


そんな林が他所の人間に荒らされているらしい。所有者がいるのを知ってか知らずか勝手に入って取っていく。おまけに1家族分程度ならおじいさんも何も言わないが、連日訪れ明らかに販売目的と言える程の量を取っていくらしい。


そんな話をおじいさんから聞いていた。しっかりと手をかけている場所だからか、憎々しげに語っていたのが印象に残っていた。


こいつらが、とその見慣れない人たちを見送る。声をかける事はしない。人数差を考えると何かあったときに勝てるとは思えないし、おじいさんからも危険だから手は出さないようにと言われていた。


それからしばらくして、林から煙の臭いがするようになった。誰かが火でも付けたのかと思ったが、おじいさんが林の中で燻製を作り始めたらしい。


冗談半分に今度貰えるかと聞いたら、特別製だからだめだと断られてしまった。とても良い匂いがしてくるのに残念だ。



また、見慣れない人が林に入っていく。


そういえば、入っていく人はたくさん見たが、林から出てくる人は見たことが無かった。


見慣れない人から少し間を開けて、おじいさんが林の中に入っていく。おじいさんはこちらに気が付くと人差し指を口元に持っていくとにっこりと笑った。



まさか、ね。

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