第5話不幸をまく男または笑顔の使者
「兄貴、試したいことがあるから特別に部屋に入って」
妹のゆりえは泣きそうな声で俺を呼んでいる。兄としてここは2つ返事で
「分かった」
と返事しなければいけない。この間約1秒。
「返事まで1秒かかった。このニブチン」
「すいません今度から気をつけます」
「分かったならいいよ、入って」
人生初のゆりえの部屋に入って目に付くのはガンニョムのチャアのポスターとサボテンの花のつぼみだった。しかも俺が近づくと気のせいではなくしぼんでいく。
「もうわかった兄貴部屋からでて」
「分かった出る」
ゆりえは言いにくそうに、
「兄貴のせいでサボテンの花が咲かない」
これが黒闇天の力か…。思えば今日はついてなかった。弁当も宿題も家に忘れて、持っていったのはいいが中学のころの体育のジャージじゃ仕方ない。踏んだり蹴ったりだ。トドメにくに部長からは今日君に起きた不幸は偶然じゃない気をつけて帰れと警告された。
俺はゆりえに、くに部長の仮説を噛み砕いて話した。
「要するに神様のせいってこと?あの不自然なしおれかたは信じるしかないか…。ママのサボテンが咲いたらSNSでママに見せるつもりだったのに兄貴のばか」
「なんとかするから、くに部長がさ」
俺はくに部長にサボテンの件を話した。
「今日は満月だから神様パワーがUPしてるんだろう、満月はヒトもケモノもカミも荒ぶる」
「解決法はわかってる月夜さん、喜瀬、黒田、この3人の家のどこが俺の家から
一番遠いか聞きたい、俺のことを調べるついでに知ってるだろ」
「赤井部員の家からでて左に5キロ道なりに歩くと豪邸が見える、そこが黒田君の家だ」
そうか、と呟いた俺はLINEで黒田の家に泊まってもいいか聞いた。返事はいつでもこいとのことだった。
「ゆりえ、サボテンの花は咲くよ5キロもはなれた友達の家に泊まってしまえば俺のサボテンへの呪いは射程範囲から外れる」
「でも神様の呪いが兄貴をひどい目にあわせるかも知れない。家だからサボテン咲かないぐらいですんでる。5キロも歩いてたらどんな目にあうか…!」
「俺もサボテンの花が見たいんだよLINEのビデオ通話でみせてくれ」
「分かった!頑張れ!…兄貴!」
「そんなに泣いたら美人が台無しだ。いってくるよ」
家を出ると、くに部長がやっぱりいた。
「なんだい赤井部員、いるのがわかってたようじゃないか」
「くに部長は都合のいい人でなしですから。ゆりえを頼みます」
「妹君を寝かせた後からこの家の周りに結界を張る徹夜でな、部員へのアフターサービスだから気にしなくていい」
「徹夜ってことは結界を張り終わる頃まで俺がいたらサボテン枯れるんですか?」
「ああ、そうだ黒田君の家までは厳しいがサボテンが枯れる方を選ぶ君じゃないだろ」
「くに部長、俺の大切な人達の悲しみなんて人生デビューしたばかりの俺には刺激が強過ぎて死んでしまいます」
俺は家から離れた。後ろから声がした
「赤井部員それでこそ私の観察対象だ!」
人でなしだやっぱりでも元気がでた。はきなれた靴なのに靴ずれした痛みなんかぶっ飛んだ。それからはゲリラ豪雨、酔っぱらいにからまれゲロをかけられた。転んだ回数を数えるのをやめた。車の水しぶきでゲロを洗い、子供の放火魔から取り上げたマッチを公園の山みたいな遊具の内側で火をつけ暖を取った。黒田の豪邸にそうやって着いたが野犬が3匹これはもうどうしようもない。
その時
「ライコー、スーパークリーク追い払え」
黒田の凛とした号令とともにドーベルマンが素早く野犬を追い払った。黒田はママ属性でもあったか。意識ガトオザカル…。マックラ…。
意識が戻ったらふかふかのベットの上だった。
「國子先輩の勘は当たるものだ、ドーベルマンを臨戦状態にして不審者や野犬がいたら追い払えと電話があって、お前が来る前に番犬達は2回も出撃した」
「俺は不幸を今夜まとっている。お前も離れろ」
「よくみろ俺は立体映像だ。そしてお前がいる場所は俺たちがいるところから200mはなれた核シェルターだ。ところでオカルトなど信じるつもりはないがお前の哀れで無残な姿は何かとてつもない何かと戦いをしてきたことだけはわかる。なんのためだ」
「朝になれば分かる、お前にも見せたい。朝になったら起こしてくれ」
「赤井よく頑張った、今は眠れ」
「お客様朝でございます」
「執事さん黒田に会えてスマホが使える所へ連れていってください」
「かしこまりました」
「黒田今から写るのが戦いの理由だ」
LINEのビデオ通話をオンにした。
「兄貴なに!?ぼろぼろじゃん」
「花は咲いたか?」
「兄貴が家出てから凄い勢いで成長して今満開、ママも喜んでた兄貴もみてよすごいでしょ」
「満開の花と笑顔、お前が守りたかったものがこんな輝きと美しさならお前は不幸や呪いを撒き散らすものではない笑顔の使者、本物のヒーローだ」
「俺はそんなものじゃない。兄として当然のことをしたまでだ」
「ちょっとさっきから生モノ注意な会話が聞こえてくるんですけどキモいマジきもいバイバイ」
「赤井、生モノとはなんだ」
「ググれ」
後日黒田は屋上で2人になった時、妹さんに俺たちはリアルなホモじゃないと伝えてくれと言われた。
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