第4話部活に入ろう

「赤井君部活決めた?」

「妹に聞いたら俺運動音痴らしい、だから文化部かな」

「残念だわ。私バスケ部1択!ミニバスのころからやってるの。ポジションはPG、司令塔なんだから」

「ポイントガード?球入れに司令塔いるの?」

「昼休み視聴覚室に来なさい!絶対よ」

月夜さん怒ってる、これ昼休み行かないとアカン奴や。そして昼休み

「見て高速ハンドリングから目線で右サイドにパスするフェイクを入れてからマークの外れた左サイドへエルボーパス、これが私のポジションの完成形の一つ、どう!スゴいでしょ」

バスケはシュートだけでは駄目むしろパスがゲームを作っている。凄いと素直に分かった。

「あこがれの選手はどれ」

「あこがれたら越えられないってあるバスケット漫画のセリフがあって、それは本当なのその選手と自分って違うじゃない。だからあこがれるとプレイに集中出来ないまま本来の自分の動きができなくなる。だから私はあこがれない」


「同じプレイに見えてもタイミングや呼吸、身体能力で差が出るってこと?」

「赤井君、正解よ。頭いい、花丸」

「でも月夜さん俺バスケ部入らないから」

「あら残念、でもそれでいいと思う。私はバスケ馬鹿にされて怒っただけだから。でも見る分にはいいでしょ」

「趣味ができたよ。オススメのバスケマンガ教えて」

使い道がなかった小遣いが放課後火を噴くだろう。バスケマンガって多いな。


「それと気をつけて、部活動紹介の時怪談やってた3年の先輩があなたを探ってる、自転車事故の状況と最近の君の様子を根掘り葉堀り聞いた後、赤井京次朗に会いたい民俗学者のはしくれとしてと言って消えた。奇怪な人だった。早く適当な部活動に参加してその人を遠ざけるべきよ」


「ありがとう心配してくれて、でも俺達の出会いや最近の状況に興味を示した人は俺の方も興味がある。たしかオカルトと民俗学研究部だったよね。仮入部してくるよ」

「なんで?」

「俺が人生デビューしたきっかけに学術的根拠があるなら聞いてみた方がいいかも知れないという気まぐれかな」


月夜さんは真剣な顔で、

「じつは、私も君に違和感がある。その正体をしるのが怖いの、だから3年の先輩の話しを後でLINEで送って」

俺はうなずいた。それから放課後になり、カビ臭い旧校舎の隅に怪しい先輩のいる部室があった。不気味な雰囲気に負けず俺は部室に入った。


「赤井京次朗、君という観察対象をまっていた。民俗学が歩いてきたといっても過言ではない」

妖しい雰囲気の美人な先輩だった。


「順を追って話そう私は民俗学者のはしくれ松田國子、くに部長と呼んでくれ、私が興味を抱いたのは自転車事故の後のことさ、君は頭を強打したにもかかわらず蒼井月夜に弁当を分けて学校に歩いて行った。そして入学式で君の人生が始まった。ここまではいいね」


「月夜さんと俺の記憶ではそうです」

「頭を強打して気絶したならありふれた事件だ。だが君は歩いて学校に行っている、これは面白い、民俗学の入り込む余地がある」


「たしかに頭を強打して入学式にまでこぎつけるなんて変だ。これは月夜さんが違和感を抱くには十分だ」

「学校に寄贈された資料に答えがあった。男と女がぶつかっていて男の方が重症、何かに似てないかい」

俺は生唾を飲んだ。



「行書を読むと大黒天が守護するこの土地ではたまに土着の神が男女にイタズラをする。後から入ってきた大黒天の仕事を増やして面白がっているのだ。」


なんだよそれ。話は続く

「その内容は女が男に重症を与え記憶喪失にするというものだ。大黒天は男の記憶の代わりに好運を与える。君はあの事故の後何もかもがついてなかったかい?」


それじゃおれは…

「たしかに彼女も友達もできたよ。上手くいってるがそんなことがあるのか」

「大事なのはここからだ、しかし9割の好運な男は大黒天の影、黒闇天により、残念だが赤井京次朗この後のことは、破れて読めなかった。


どうなるのだろう、話をきこう。

「だが推測はできる。黒闇天は不幸の神だから9割の男は好運と同等の不運を味わうのだろう。波乱万丈という奴さ。それが嫌なら私の知る神仏との縁切り寺を紹介するが?」


それはいやだ。今までのことをひていしたくない。

「あこがれれば越えられない。くに部長、あんたにバスケマンガのセリフを贈るよ」

「赤井京次朗、どういうことだい?」

「資料のつづきがないから考察する。当たり前のことだがあんたは資料と現実の一致を見つけ事態の収拾をつけるというマンガや小説にでてくる民俗学者にあこがれて2つもらしくないことをしている」

「2つもか聞かせてくれ」


「あんたは俺を観察対象と言った。これはつまり俺がどんな目に会おうと観察したいはず。もう1つは1割の男がどうなったか考察していないことだ。おまけに俺は波乱万丈は最近好きになった。おかげで彼女もできたしな。平らな人生は青春の敵だ!」


「赤井京次朗君は愉快で痛快だな今楽しいから明日来るかもしれない不幸を受け入れるどころか1割の確証もない希望をもぎ取ろうとしている。なるほどご褒美にいいものをみせよう」

くに部長は金銀財宝酒池肉林のなかで笑う男の絵図を開いた。


「これが昔の記憶喪失者の姿だよ。赤井京次朗君の幸福は調べた限り恋人と友達ができたぐらいだ。現代社会の弊害は神々の力がよくも悪くも弱くなってしまったことさ。つまり不幸の影響も気をつければなんとかなるかも知れない!」

「くに部長俺は不幸への対策の一環としてこの部の部員になりますよ」

「赤井部員を歓迎せよ諸君!100%カルピスとお徳用うまい棒を用意せよ」

この犯罪的パーティーは下校時刻までつづいた。

その後LINE通話で全てを月夜さんに話した。

「神のイタズラで恋人になるなんてロマンチックね。不幸への対策は面倒だけどなんとかなるでしょ、勘だけど」

「俺もそう思う。確信に近いけど」

通話はこんな能天気な感じでおわった。

酒池肉林の絵図がちらつき駅前の宝くじ売場でスクラッチくじを買った。200円勝った。神の力が弱まっているから不幸の影響が少ない証明だ。酒池肉林、嗚呼酒池肉林金銀財宝ここだけは、弱まって欲しくなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る