第3話友達と趣味

日常生活に問題がない上にそれが一番の薬とまで言われ退院した俺を待っていたのはオムライスだった。卵がしっかり焼かれてケチャップをかけた基本的な調理だがうまい。

ただケチャップでバカと書かれていた。

「あたしを心配させた罰よバカ兄貴」

「ありがとう」

「なっ!なんで感謝してるのよ!馬鹿じゃないの」

ゆりえは顔が真っ赤だ。ツンデレ初体験。

「月夜さんは兄貴の部屋でヘリオスカートやってるから。大丈夫エロいモノは掃除したから」

「エロいモノをみたのか!俺の!」

「おねしょた?が多かった。」

記憶喪失前の俺はお姉さん属性だったらしい。これからは月夜さん属性になるぞ。

そう開きなおってゲーム音がするほうへ行くと京次朗というプレートがある部屋にたどり着く。俺の部屋だ。

「月夜さんはいるよ」

無言だ、返事がない。なにか異変があったのか?ドアを勢いよく開けると月夜さんが無言でヘリカーをしていた。恐らく極限の集中をしているのだろう。それほどのドラテクだった。リザルト画面に切り変わる、やはり上位ランカーだった。しかも1着だ。

「シャアオラー」

と小さくガッツポーズをしていた。

「やったね月夜さん」

「赤井君スピードの向こう側みたよ私」

一つ壁を乗り越えたようだ。

「学校行くよ。そうしないと遅刻の向こう側も見えるよ」

「それはやだ、赤井君行こう」

学校は近所だから3分もあれば余裕だが駆け出した。今日からが人生デビューの本番だからだ。

「人生初登校だからテンション爆発だよ」

「赤井君友達できるといいね」

「月夜さんは友達じゃなく彼女だからカウントされないと暗にいってるね!コワイ」

「浮気も駄目ともいってるよ赤井君」

「コワイ」

ふざけているうちに校門を抜けた。ここからは真剣になる、人生初友達を作るぞ。どうやろうか考えているうちにチャンスがきた。

「記憶喪失の赤井だろ。いろいろ大変だろうけど学級委員長の黒田に任しとけ」

変な奴だけどいい奴で親分肌だ。こういうタイプは好きだ。

「しかし赤井よ。記憶喪失というのは本当なのか。嘘だと思っている奴がこの喜瀬なのだが」

キリッとした黒田の後ろに金髪のチャラいのがいた。

「俺は喜瀬、赤井狂言派の筆頭だ。お前は蒼井さんの純真無垢な心を利用して彼女にしたんだろ!この人でなし」

「よしきた!黒田」

「黒田だ放送部例の奴を頼む」

「学校のスピーカーから失礼、赤井君の主治医の紀田です。自転車にぶつかったというのが原因で彼は頭を強打し外因性の健忘症、記憶喪失になってしまったんです。赤井君が嘘つきと言われない保険として私は面白がって彼のスマホに声を吹き込んでいます。喜瀬の坊主と同じ学園だから蒼井さんのことで誤解してるかもという身内の恥を未然にふせぐための録音でもあります。昔から蒼井さんをすきだったからね、あの坊主。赤井君、恋に破れた我が孫が何か言ってきたら優しくしてやってください」

放送はおわった。すると喜瀬が

「何もかもお見通しかよ、あのクソジジイ…。赤井!俺の恋はおわった。だが俺はお前が蒼井さんを泣かしたら歯を全部折るまで殴るのを止めない、おぼえとけ!」

と同じクラスなのに捨てゼリフを残して去って行った。2分後気配を殺したつもりで戻ってきた彼にみんなが笑いをこらえていた。

「お帰り喜瀬」

「なんだよ赤井」

「男の約束だ蒼井月夜は赤井京次朗が責任をもって泣かさない、そして一人の力では泣くのを止められなかった時、俺はお前を頼る。蒼井さんをずっと好きだったお前をな」

「蒼井さんが好きなのがお前でよかったよ赤井」

「喜瀬、落ち着いたら蒼井さんの昔のことを教えてくれ」

「関係が1ヶ月続いたらいろいろ教えてやるよ」

その後昼休み、俺の考えの段取りをつけた黒田宗治という男と屋上で昼メシを食べた。

「黒田、お前はなんで俺によくしてくれるんだ?」

「お察しだと思うがお前のためじゃない。うちのクラスの担任桜舞子先生が好きで、その人にお前をサポートしてくれと頼まれたからだ。はじめはな」

「今は?」

「友人の一人だと考えて差し支えないだろう、お前が気に入った」

「そうか」

「桜先生が好きってことはもしかして、俺と同じおねしょた属性のエロが好きだろ」

「そうだが何か問題あるのか」

「無い、むしろ仲間だ」

今日は共通の話題を持った友人が2人もできた。妹に話したら生モノは苦手と意味不明なことを言って自室に引きこもった。

後で生モノでググろう。


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