第8話剣神カーネリア
後の皇帝となるアリエッタには信頼できる仲間が多数居たが、その中には何人もの女性が居る
剣王と呼ばれる程の剣の使い手
たとえ魔法の火弾が撃ちよせられようが、その剣に切れぬ物はなく魔法を切り裂く
また剣がない状況でも、その辺の物を剣とした
たとえ実態がない物ですら切り裂いたという
彼女の名前は
カーネリア・ガドエス
アリエッタが最も信頼する女性の一人であった
「まさか!ガドエスですって!?」
マリアは驚いて思わず手に持つカップを落としそうになるのをうまくバランスをとって回避する
「そうだな、君らが使うガドエス流剣術の始祖、と言った所だろうな」
ゆっくりとカップを置いて、落とさなかったと胸を撫で下ろすマリア
「信じられませんね。ガドエス流の開祖の名は、リューク・ガドエスとなっています」
「うん、リュークか、なるほど、なるほど。良いじゃないか、リューク・ガドエスはカーネリアの息子だな。そういえば父親は誰だったか、結局言わずじまいだったな」
まるで見て来たように話すアエリア
それが、アエリアの話す昔話に真実味を持たせていた
それは絶対絶命の危機だった
聖女マリアの居る後方部隊が襲撃を受けたのだ
アリエッタは自ら指揮を執る為に前線に出ておらず
また戦力全て前線に集めて居たために手薄になっていた後方部隊
そこを突かれた
戦える護衛はカーネリアわずか1人で、そもそも後方部隊は傷ついた仲間で溢れていた
「なんて卑怯な!傷ついた者を襲うなんて!」
「そうも言ってられない時代だったのさ、それに全てを癒す聖女と呼ばれたマリアを倒すことが出来ればアリエッタの軍の勢力は勢いを落とすのが確実だったからな。それほどに聖女マリアの回復魔法は敵からみて脅威だったんだ」
「しかし、そんなのは言い訳です!戦えない者を殺すなど騎士の風上にも置けない!」
「騎士道精神、ってやつだね。戦乱の世ではそれを言うような出来た人間はいなかったよ」
そしてアエリアの語りは続く
戦えない怪我人は200人は居た
敵はそれに5000の兵力を投入する
その中には精鋭部隊も居たと言う。過剰間違いないその戦力は聖女マリアただ1人を殺すために用意されて居たのだ
アリエッタはそこにカーネリア・ガドエス一人を護衛として残していた
それは5000の兵を持ってしても足りないとー敵は知らなかった
その時カーネリアの使用した剣は、100人ほど切ったところで折れたと言う
仕方なくカーネリアは剣でない物を剣とする技を編み出して対抗した
「……魔刃…」
マリアがハッとして気づく、その技に。
だが、敵の中の精鋭は手強く、次第にカーネリアは疲弊していくが
「最後には彼女、左腕と右足がない状態で戦って、勝ったんだよ」
アエリアが話終える
見ればマリアはボロボロと涙を流して泣いていた
「凄い、凄いよ、カーネリア……」
「そうだな。昨今の絵本ではアリエッタ主役だが、そのアリエッタの掲げる理想を実現させようと戦っていた者は沢山いた。その中でも、カーネリアは特別な一人だよ」
「はいぃ……ぐすっ」
マリアは感動して涙が止まらなかった。アエリアの語りはその情景を魅せるには十分すぎるほどだったから
「ふふふ、そう言えばだ。カーネリアは泣き虫だったんだ」
「え?」
「彼女は仲間が死んだ時には必ず涙を流していたし、嬉しい時にも泣いていたんだ。そう、リュークを産んだ時もね」
「それは、恥ずかしい涙ではありません!!」
どんっ、と両手をテーブルに叩きつけて立つマリア
「信念を貫き通したカーネリアだから、それはきっと美しく、尊い涙です!」
「はは、マリアはすっかりカーネリアが気に入ったようだね」
嬉しいよ、と、マリアに聞こえない声でアエリアは言った
それからしばらくの間、マリアはアエリアにカーネリアの話をねだって聞かせてもらっていた
それと同時にガドエス流を教えて貰う
この技はどう言う状態で生まれたとか、そう言う話を交えるとマリアの真剣味が増して習得が早くなるのでアエリアは面白がって教えてしまっていた
そして、わずか1週間ほどでアエリアは教える事が無くなってしまったのだった
「ありがとうございますアエリア様。まだ殆ど習得は出来ていませんがガドエス流とは何なのかを理解できた気がします」
「私も楽しかったよ。技に意味を見出したのはマリア、君だ。だからこそ使える技もあるだろう」
「はい!しかし、奥義と思っていた魔刃が本当に基礎の基礎だったとは……」
「まあそれは仕方ない。あれからもう400年近く経つのだからな、平和な世では不要な技もある、また意味が失われた技もあるだろう」
「それにしても、アエリア様は何処でこの技を?カーネリア様のお話もそうですが。図書館で調べて見ましたが、そこには確かに剣神カーネリアらしき記載はありましたが詳しくは書いていませんでしたよ?」
そう、らしき記載だけで、カーネリア・ガドエスとフルネームで書かれた書物は無かった
「まあ、色々あるんだよ」
あっさりと、誤魔化すアエリア
それにマリアは言おうとしてやめた
アエリア様はマリアと同い年なのに、どうにも年上と話しているような気がしてしまうと言いたかったのである
「さあて、そろそろだな」
「何がですか?」
「戦争が始まる」
ハッと気づいた
宣戦布告から1週間が経っている
あれからシルバは来てはいないが、時間は刻一刻と進んでいるのだ
何かしらの結論は出ている時期だ
「アエリア様は、どうなるとお思いですか」
マリアは恐る恐る聞いてみた
「勝てないにしろ、負けることも無いだろう」
「それはどうしてですか?」
「ノーチェスが力を付けたとは言え、こちらの方がまだ兵力は遥かに多いからだ」
「ノーチェスは、それ、分からないんですか?」
「いいや分かっている。だから今回の戦争ではお互いの妥協点が、探されるだろうね。おそらくはは精霊使いの派遣がノーチェスの目的だ。食料不足は仕方ない事だ、だからそれをみんなで負担しようと言う魂胆だろう」
「そんな……最初から精霊使いを派遣する事は」
「しないだろうね。それをすると、舐められてしまうからな」
だからこそ国は衝突するんだよ、マリア…国とはそう言うものだと、アエリアは言い放つ
アリエッタが大陸を統一した国は再びいくつもの国へと別れた。それはこの大陸が広すぎる事を意味している
アエリアは記憶を取り戻してからの歴史を調べた
アリエッタが併合し、統一して治めた後の歴史
そのアリエッタが皇帝を退き、そしてその後死んでからわずか25年で再び国は分裂を始めた
その後も、何度か戦争が起きて結局、統一国は跡形もない
200年前に再び統一の動きはあったがあと少しと言う子ところで失敗している
アリエッタが、カーネリアが、マリアが、エズラがした事とは何だったのか……おとぎ話を残しただけだったのだろうか…
だからこそアエリアは、この国が戦争に巻き込まれても表に出ないと決めていたのだが
今それを思い出して、そして思いついてしまった
「まてよ、マリア……」
「はい、どうしましたアエリア様」
「エズラだ」
「エズラ?あの、破壊の魔神と呼ばれた女でしたっけ?」
「ああ、そのエズラだ。彼女はエルフの生き残りだ!もしかしたらまだ生きているかもしれない!いや、いきている!」
「え?そんな、400年前の人物ですよ?」
「破壊の魔神とは言われたが、それは彼女のもつ大地の精霊の力とエズラが起こす魔法のせいだ。大地を崩壊させるその様子がまるで破壊の神に見えたからそう呼ばれた」
そして彼女は長寿の一族の生き残りだ。その中でもとびきりの皇族の生き残り
エズラがアリエッタに力を貸したのはそれが彼女の目的を達成するついでだったからだ
「彼女を見つけることが出来れば、協力をとりつけられたのであればノーチェスの食料問題は解決するかもしれない」
アエリアはそう言った
そもそもエズラは生き残りを集める為にアリエッタに同行した
エルフは男性も女性も美しい種族だそれに精霊との親和性も高い
だから、何処でも大切に扱われた
しかしそれがまずかった
バラバラになったエルフ達は子を残すことが難しくなり、長い間をかけて減少して行ったのだ
あの時の戦争時でも、ほぼエルフは隠れて暮らしていたし、出てこなかった
しかし大陸統一を目指していたアリエッタに同行すればエルフの生き残りに出会う確率があがるとエズラは常に同行していた
その結果、大陸統一後にわずか10人程度であるがエルフが見つかった
エズラはその仲間を引き連れ、アリエッタの用意した人の寄り付かない森でひっそりと引きこもって暮らしていたはず
破壊とは、再生の準備
本来エズラの魔法は森や植物を育てる為の魔法だ
あれから400年経つが、エズラ達エルフにとっては僅かな時だろう
「いいじゃないか、戦争に関わるつもりは無かったが……神の子であるエルフの一族が力を貸してくれれば、誰も死ぬことなくこの戦争終わらせられるかもしれんな」
アエリアは、その一縷の望みにかけるのもアリだと思ったのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます