ペルソナ
高校時代を振り返ると、本当に当たり障りのない無味無臭な学校生活を送っていたと思う。
ある意味健康、ある意味不健全。
たいして思い入れもない。
全てのことにおいて普通の高校生が行うであろう範囲のことしかしてなかったような。
勉強も、部活も、恋愛も、どれか飛び抜けていたわけでもない。
そういう自分を演じていた――とも言えるが。
中学の頃の方がまだ鮮明に記憶に覚えていることが多く、良くも悪くも素の自分が表に出ていた時期だったが、これが高校になると他人と付き合うのに一々仮面を取り付けるようになった。
鉄が熱いうちに叩かないといけないのは、冷えると叩く前に固くなってしまい、さらに不純物が取り除けなくなるから。
私はついに固まってしまった。
謹慎処分を喰らった一度を除けば、高校三年間で素の自分を表に出したことは恐らくなかったはずだ。
幸せというものを与えられてこなかった私は、幸せになる方法を知らず、幸せな振りをしようと誤魔化すことにした。
つまり青春の真似事だ。
幸いにも私は演じることが巧く、役者が本来の自分とはまるで違うキャラクターを舞台で演じるように、シチュエーション毎に幾つもの仮面を取り替え、それを他人に悟られないまま時は過ぎていく。
あるときはバカ騒ぎするグループの中で同じく騒いでみたり、あるときはオタク趣味に没頭しているグループの中に混じって熱く語ってみたり、あるときは中身のない会話に花を咲かせる女子のグループの中でうんうんと相槌を打ってみたり、あるときは独りぼっちのクラスメイトと、小説の一頁のように偽りの交遊を深めてみたり――
どうしてそんなことになったのかといえば、私は「自分」というものを酷く恐れていたからだ。
それまでのクソッ垂れな人生で、擦れて、汚れて、切れて、褪せて、朽ちて、形をなくした自分を表に出すのが怖くて、呆れられるのが怖くて――
仮面をつけている間はただ演じていればよく、恐れる必要もないから。
そして誰もその事実に気づかないことに自嘲し、三年間自分を演じ続けた結果、「誰にでも優しい」という訳のわからないランキングの
結局偽りの自分が経験した思い出など記憶に残るはずもなく、その数年後に集まった同窓会では、だいたいの同級生の名前を忘れている始末。
私にとって私が偽りであるように、彼らもまた、私にとって偽りの存在でしかなかったのだ。
真の友人など誰一人としていない。
向こうはそう思っていないのが滑稽だが。
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