第10話だから宝探し

「わかったわ、ハルちゃん!」


まるで決意を固めたかのようにシロンちゃんが急に叫んだ


今日は作戦会議という名のお昼ご飯を、おしゃれなご飯屋さん見つけたよって言う女子トークからのランチをシロンちゃんと食べていた


「私、なんも特別なこと喋ってなかったと思うけど?」


「うん、私ね…ハルちゃん、しっぽ触らせてくれない?」


「いやそれまだ続いてたの?」


「昨夜もね、夜中に目が覚めてハルちゃんのしっぽを触りたくてモフりたくて凄くモンモンとしちゃってたのよ」


「へえ」


「もう禁断症状で、よだれとかでちゃいけない体液とかを垂れ流すレベルでやばかったの」


「あまりそれ想像したくないね。てゆうかさっき会ってた時、モフってたよね?」


「一本じゃたりないわ。せめて三本同時…いや、あの時みたいに九本頂きたいです」


「あげないけど?そして九尾モードは目立つからね、やだよ」


「ハルちゃん、私に犯罪を犯させたいの?ハルちゃんのしっぽ不足で私誰でもいいからしっほ成分求めてモフりはじめるよ?」


真剣な顔でハルちゃんを睨むシロンちゃん

気圧されて思わずハルは言ってしまう


「……あ、あとでね」


「約束よ?この間みたいに逃げたら家まで追いかけるからね。私ハルちゃんが居ないと生きていけないんだからね」


だんだんとストーカーになりつつあるシロンちゃん

もはやハルちゃんが居ないと生きていけない体になったらしい


「そう言えば最近ハルちゃん、修行とかしてないよね」


以前は毎日の様に森に出かけてハンターとして働いていた。それに帰宅してからも魔法の練習をしていたのに、数日前の事件以降は全てお休みしているのだ



「あー、もう、やる必要もそんな無いかなあって」


人族と亜人が戦う元凶となっていた者達を始末したからもう鍛えても仕方ないんだよね……


私の心は多分壊れたまんまだけど、少しづつ癒されている様な気もしている。だから今は鍛えるとかは勘弁願いたい


「ふうん。でも、お金どうするの?」


「え?」


「働かなくても食べていける程ハルちゃん貯金できてた?」


「おっと、そう言えば私あまりお金無かったかもしれない…」


おそらくはふた月ほどは贅沢しなければ暮らせるだろう。しかし、その後がヤバい気がする


「ハルちゃん、結構高額な装備買ってたしね…」


心当たりはある。流石に記憶はもうあまり無いのだが、部屋に溜め込んでいた装備品が想像以上に沢山あったので、勿体ないなあとか思っていた


そう言えば、お金の心配などあまり心配した事は無かったかも知れない


奴隷落ちした時でさえも



「え、まって、もしかして私働かないといけないの?」


「何を言ってるの?」


「なんて言うか、欲しい物ももうあまりないし、ご飯食べれたら良いかなあって……」


「あのねハルちゃん、人は働かないとお金が貰えないのよ?お金がないとご飯も食べれなくなるのよ?」


「ええ!?あ、家の裏の薬草売って、あとご飯が食べれなくなったら山に狩りに行けばご飯にはありつける……」


慌てて金策を考えてみるも、それでいいのか不安になる

なぜならば自身の金銭感覚というものが崩壊しているからに他ならない


「そうね、それで食べていけるかもしれないわ…でもねハルちゃん、ここのごはんは食べれないと思うわ…」


そのシロンちゃんの一言に衝撃が走る

ここはハルもお気に入りの店だからだ


「え?ここそんな高かったっけ…」


「そこまで高くないわ」


「じゃ、じゃあ!」


「駄目ね…薬草の売却?子供のお小遣い程度よ。全部売ったところでここで1回食事したら終わり。それに薬草が育つまでけっこう日にちが必要よ。その間ずっと獣の肉を食べて暮らすの?」


「いや、狩りで素材を売れば」


「だからそれを言っているのよ?ハルちゃん、狩りの獲物を売っても…そうね、よくて2日分の生活費ね」



つまり、ほぼ毎日のように狩りをしていなければ金銭的に楽な生活というのはできないという事である


ちなみにハルの父は結構な高給取りなのだが、ハルが仕送りを断っている為自由になるお金はハルが稼いでいたものだけである


「私…働く…」


過去の自分を責めたいとすら思えるお金のなさに震える

であれば、一攫千金を求めればいいのではないだろうかとハルは考えた


そう、ハルにはまだ誰も知らない知識が、これから発見されたりするものの知識があるのだ

それを利用してお金を稼げばいいのだと気づくまでそう時間はかからない


なぜならば今ハルの頭は未だかつてないほどに回転しているのだ

昨日までのハルは例えるのならばさび付いて動くのを止めた歯車のようだった

それが今はミニ四駆のタイヤくらいの回転で回り始めたのだ


「そうね、それがいいわ」


対してシロンちゃん、未だにハルちゃんの知識を舐めていた

もうべろべろに舐め切っていた

脳みそまで筋肉でできていたハルちゃんの脳内に、どれだけの未来の知識があるのか想像さえできなかったのが彼女の敗因だろう


敗因ってなんだ


「明日からちょっとダンジョンまで金策にいく」


ハルは立ち上がってそう言った


「ん?ダンジョン?なにそれ」


シロンは知らない、今から5年後に世界中でダンジョンが発見されることを

そしてそこにアーティファクト以下大量の金銀財宝があることを



ガタンっ!!



こっそりと話を聞いていたミィナは知っている。ダンジョンの存在の事を

そしてそれが国家機密として未だに秘匿されている事を



そしてハルちゃんとシロンちゃんはダンジョンに向かうことになるのだった




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