第7話時は決して戻らない
私はシロンちゃんの元にたどり着くと、周りに私達が見えない幻術をかける
そして屍となったシロンちゃんの背に生えた剣を抜き、その背中に抱きついた
「ごめん、ごめんね、間に合わなくて…シロンちゃん、ごめんね」
ズキリと矢の刺さっていた足が疼く
見ると酷い色に足全体が変色していた
毒だ……しかも、だいぶ回ってる
「シロンちゃん、私もそっち、いくからね……また一緒に遊ぼう……ね……」
私は目を閉じた
毒素を火魔法で焼き尽くせば私はまだ死なない
だけど、私はそれをやる心の強さを持ち合わせて無かった
このまま静かに、死にたい
「もし、また生まれ変われるなら…昨日みたいに、シロンちゃんと一緒に仕事したり、したいなあ……」
カチン
意識が消えてゆく
私と言う存在は、そこから先にはもう存在しない……
◇
「ねー、ハル、ハルちゃん!」
「ふあ?」
「すごいね、ご飯食べてる途中で寝るなんて。寝不足だったの?」
「あ、シロンちゃんだ。夢かぁ……」
良かった……死んだ後もシロンちゃんと一緒に居られるなんて
「夢ってなに?そう言えば、お姉さんに子供産まれたんでしょ?」
「あー、うん。結局会えないまま死んじゃったなあ」
「え!?赤ちゃん死んじゃったの!?」
「違うよ、死んだのは私達じゃない」
何言ってるのかな、シロンちゃんは…もしかして死んだの分かってないのかな
「はい?寝ぼけてる?」
「寝ぼけてないよ?」
私は出された料理をぱくりと口に入れた
「あ、エルウッドさん。さっきはごめんねー」
「ん?どしたハルちゃん俺なんかしたか?」
「え?助けてくれた……じゃない」
見るとその向こうに、シロンちゃんを殺した奴らがたむろしていた
そうか、あいつらも殺したもんね……いても不思議じゃないか
「そんで、今夜なんだろ?決行は」
「ああ、ぬかるなよ。火の仕込みは出来てるとの事だ」
あれ、もしかして……こいつら、また
またシロンちゃんを殺す気なの?
そう考えただけで魔力が膨れ上がる
「ちょ、ハルちゃん!こんなとこで何を!」
シロンちゃんが慌てて私に言った
だって、だってあいつら、またシロンちゃんを殺す気だよ!
許せるわけないじゃん!
「あいつら、許せるわけないじゃん!シロンちゃんだってそうでしょ!?妹まで殺されたのに!」
ずいぶんと大きな声が出ていたと思う
周りにかなり注目されてしまった
「もう、ハルちゃん行こう、疲れてるんだよ」
シロンちゃんに手を掴まれて、外に引きずり出された
私はアイツらを睨み続けたままで
「どうしたのよハルちゃん、急に…なんかおかしいよ?」
「おかしくない、私はおかしくなんてない、おかしいのは皆だ!アイツらにされたことを考えたら、おかしいよ!なんで殺されたのに仲良くできるのよ!」
「えええ?何言ってるの……」
私は怒りが収まらない
今なら、今なら落ち着いて彼奴らを!
「なー嬢ちゃん、何を知ってるんだ?」
先程の男達が私達を付けてきたらしい
好都合だ
「あんたらが街に火を放って、私達を殺したって事よ!」
「はあ、どこから情報が漏れた?くそ、気付かれてんじゃねえか」
「はあ?二度もやらせないからね」
私は火魔法を展開する
アイツらは5人
全員を殺せるだけの魔力を注ぎ込む
隣でシロンちゃんが刀を抜く気配を感じる
シロンちゃんも殺気を感じたらしい
「まあ、とりあえずお前らを殺して漏らした奴をさがせばいい。おいお前ら、やるぞ」
不意打ちなしの勝負なら私は負ける気なんてしない
それに
シロンちゃんが横にいて、一緒に戦ってくれる
それだけで、それだけで嬉しいんだ!負ける気なんて一切しない!
私はウラム鉱石と鉄を混ぜた小さなナイフをアイツらの影に投擲する
ふふん、標的が自分じゃないから反応できないでしょ!でもね、それは影を縫い付ける!
「何っ、動かん!」
「はああ!」
私は黒い炎で出来た剣を手にする
そのまま立ち止まって動けなくなっているやつらの剣を持つ手を切り落とす
そのまま逃げられない様に足も斬る
「ぎゃああああ!痛え、痛えよ!」
楽に殺してなんかやらない、楽に死なせない!
苦しませて苦しませてやる!
「ハルちゃん!危ない!」
シロンちゃんが私の後ろから飛んできた矢を切り落とした
そうか、お前もいたか!
私に矢を撃ち込んだやつ!
くらえ、ファイアアロー!
生み出された火の矢はまっすぐに飛んでいく
遠くの屋根の上で、ぼうっと人が燃えるのが見えた
他にもいる!
「レインアロー!」
わたしは50以上の火の矢を生み出し、私に向けられた殺気に向かってそれを放った!
チートなんてもうアテにしない、鍛えた私の魔法を舐めないでよね!
気配察知で捉えた殺意全てに魔法を叩き込む
街中のいたる所にいて私達を見てた奴らを燃やし尽くす!
「シロンちゃん、ヤバいのがこっちくるよ!」
私の火魔法をどうしたのか排除して向かってくる殺意が一つ
痛い痛いと呻く5人はシロンちゃんが簀巻きにしていた
そしてそいつは現れた
黒いマントをなびかせながら
「へえ、すごいね。今のをやったのがこんな可愛らしい女の子だとはね」
フードをとると、金髪に赤いイヤリングをしたイケメンが現れた
素の状態ならいい男と思ってたろうなー
だけど今は、多分コイツが黒幕!私達の街を……襲ったやつ!
「何者ですか」
シロンちゃんが言った
刀を抜いて臨戦態勢のままだ
「ほう、まだ幼いのになかなか強そうだね。鬼人か…刀を使う戦闘民族がこんなとこに居たとはね。コイツらがこうなってるのもわかるよ」
「で、あんたはだれ」
私は冷たい声でそう言った
「うーん。作戦も失敗みたいだし、まあいいか。僕の名前はポメラ、君ら亜人の殲滅を願う人間さ」
「亜人を……ですって!」
「そう怖い顔しないでよ、まあまたそのうち戦力を整えたら来るからさあ」
ニヤリと笑うポメラ
しかし、私は油断しない。
だからこっそりとポメラの足元から
黒棺と名付けた魔法を展開する!
ゴウン……
一瞬にして、ポメラを捉えた黒い炎の棺
その中は一瞬にして火の海に包まれる
途切れることの無い炎がポメラを焼く
「ちょ、ハルちゃん!?」
「どしたの、シロンちゃん」
「今の、殺しちゃったの……?」
「え?そうだけど。また襲うとか言ってたし逃がしたらダメかなーとおもって」
「おお……この子いつの間にこんな怖い子に……」
シロンちゃんが、ドン引きしてる
そうかなあ?油断して逃がしてまた不意付いて来られるより良いよね
黒棺がズズズと崩れる様に消えた
もちろん中にはなにも残っていない。燃えつくしたのだ
今も街のあちこちで人が燃えている
他には燃え移らず、対象だけが燃えている状態だ
「さて、他に隠れてる人も居るみたいだし、全部…殺りますか…」
「ほんと、どうしちゃったの?ハルちゃん。いきなり殺気をまき散らしてたかと思ったら、急に襲ってくる人がいて驚いちゃった…それ以上にハルちゃんがためらいもなく人を殺すなんて信じられないけど…」
「え?そうかな?」
「そうだよ…今までそんな事なかったのに」
「うーん、そりゃねぇ」
私は、あった惨劇をシロンちゃんに話した。
包み隠さず、すべてをー
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