第15話 懐 Amical

 理科の自由課題が終了したと同時に、中山が訪れた。

 中山は本田のお母さんにお茶請けを渡し、本田の隣に座る。


「初めまして、中山なかやま 夏菜なつなだよ。タマコとは塾友なの。ヒーロ君とは中学になったら一緒の学校だね。あっ、私のことはナッツでいいよ。」

 出たな機関銃トーク。

「う、うん…。」

 そういえば。こっちに戻る前に俺ったら、中山に抱きしめられたな。こりゃ恥ずかしいぞ…。


「ちょっと! なんでナッツがヒーロ君って言うのよ!」

「えぇ? ダメ?」

「ダメ!」


 は、恥ずかしいんだけど…。

 タマコさん、今のは聞いているこちらが、恥ずかしいのですが…。


「ねぇ成瀬くん、ダメ?」

あさちゃんが嫌がっているから、やめてもらえるかな?」

「えぇ…。わかった…。てか、なんだか二人ともラブラブすぎなんだけど!」


 そんなことを言わないでくれ! マジで恥ずかしいのだが!?


 その後、俺たちは他愛のない話をして過ごした。が、その大半は中山の機関銃トーク。だが、冬休みの最終日は楽しく過ごせたと思う。

 そして夕方の5時という事もあり、俺と中山は本田の家を後にした。


 俺と本田の家は徒歩で約10分ほどの距離。

 中山の家は俺と同じ地区に、先日、越して来たそうだ。

 俺は徒歩だが、中山は自転車だ。

 中山は俺に気を遣ってか、自転車を押し一緒に歩いてくれている。中山ってマジで優しいやつだな。


 まあ、それはさて置き。タイムリープをする前に中山は近所に居なかった気がする。

 確か中学の近くのマンションに住んでいたと話していたような? あれ? それは岩城いわきだったかな?


「ねえ成瀬くん。」


「あれ? 成瀬くん?」


「あっ、ごめん。考え事をしていた。」

「あはは! 考え事って、オッサンか君は!」

「ああ、あはは…。」


 中山はすげえな。初対面でこれかよ。人懐っこさナンバーワンだな。


「ねえねえ、どっちから告ったの?」

「な、何がかな?」

「何がかなって、タマコと成瀬くんの話に決まっているでしょ!」

「ああ。俺が麻ちゃんに手紙を出した。その時にちょっとした邪魔が入ったけど、そこの公園で、麻ちゃんから私も好きと言われた。」

「クールか! 成瀬くんクールすぎか!? なんか、こうあるでしょ? 恥ずかしそうに言ったり!」


 なんだそりゃ?


「えっとぉ。俺がぁ。麻ちゃんにぃ。」

「あっ。そういうのはいい…。」


 こ、こいつ!?

 

「そう言えば、私も新体操部に入るんだ。よかったら私にもお姉さんを紹介してね。それじゃ私の家はここの奥だから。バイバイ、ご近所さん。」


 そう言って中山は俺の家の手前の路地を入って行った。

 俺は驚き、中山を見送っている。

 自転車を置き、玄関に入ったその家は、先日まで工事をしていた俺の家の真裏の新築の家だった。


 あそこって、いつも怒鳴っているオバチャンの家だったよな。




      🏠




 帰宅をし玄関を開けると、同じタイミングで、美梨ネエの友達がいた。

 どうやらその友達は帰るところらしい。


「あら? もしかしてヒーロ君? ちょっとぉ可愛い子じゃない!」

 なんだ? 藪から棒に…。

「おかえりヒーロ。この子は山岡。来季からあまり会えなくなるからって、会いに来てくれたの。」


 この人って、本田の葬儀にいた人だよな? 美梨ネエの友達だったのか…。


「初めまして、弟の浩です。」

「初めまして、山岡です。もしかしてそこの小学校?」

「はい。」

「山岡先生っているでしょ? 私の姉さんなの。怖いおばさん先生でしょ?」

「そんな事はないですよ。生徒のことを大切にしている先生です。」

「ウッソだぁ! 知っているよ? 授業を遅れて来て、後ろに立たされていたんでしょ?」


「ちょっ! ヒーロ! あんたサボったの?」


 あっ。姉さん怒っている…。


「怒っちゃダメだよ美梨。ヒーロ君は反省したんだから。ね?」

「はい…。」


 姉妹仲良しか!? 随分と細かいところまで知っているんだな? おい…。

 


 しっかし、なんだろ?

 この山岡って人。

 マジで気になるな…。

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