第13話 疑 Sospetto


 翌日。


 俺は本田とのことを祐一に報告することにした。

 確か祐一の家でお互いに好きな人を教えあっていたのを思い出したからだ。

 ちなみにタイムリープだか、タイムトゥーリピートの件に関しては考える事をあきらめた。この時代だとネットは普及しているが、パソコンが我が家にない状態だからだ。

 苦肉の策で、美梨ネエにスマホを貸してもらおうとしたが、全力で拒否られるし…。

 まあ、どうせネットで調べても有力な情報を得る事はできないだろう。


 11月28日。

 この日付は今朝のニュース番組で確認できた。久しぶりに時間割を確認をする。

 算数の 算 の文字には笑えたが…。

 時間割もそろえたし、いざ出発デッパツだ!



 冬の朝、特有の空気。

 低い視界。

 短い歩幅。

 なかなか辿りつかない学校。

 こりゃ結構、イラつくぞ?


 やっとのことで小学校にたどり着く。

 校門の両側に立つ先生と父兄たちが、大声で「おはようございます!」と言っている。朝の声かけ当番と言うのがあったのを思い出す。我が成瀬家からは母さんの代わりに美梨ネエが来ていた。



 教室に入り、俺は祐一ゆういちのところへ向かった。

 祐一の席は窓際、俺の廊下側とは対角だ。

 ランドセルを置き、祐一に声を掛ける。


「祐一。」

「おお、浩。お前って本田のことが好きだったのかよ。手紙とかスゲーな!」


 はぁ?

 お前が書けって言ったんだろうが!


「何を言っているんだ? 祐一が恵姉めぐねえから貰ったレターセットで…。」

 俺がそこまで言ったところで、担任の山岡が入ってきた。


「はーい、席に着いてー!」

 甲高い声が教室に響きわたる。


「まあ、詳しい話は後でな。」

 祐一はそう言って、俺に着席をうながす。

「ああ…。」


 自分の席に向かう途中、本田と目が合った。

「本田、おはよう。」

「おはよう、ヒーロくん。」

 肩をすくめながら言う本田。可愛いじゃねえの? お嬢さん。




      🏫




 2時間目の休み時間、この休み時間は15分間と、他の休み時間よりも少し長い。

 俺は本田のところへ行き、話しかける。

「本田。今日の放課後も会えるかな?」

 俺が本田に話しかけると、周りのモブが黄色い声をあげる。

「うん。」

「ホームルームが終わるまでに、待ち合わせ場所を考えておくね。」

「うん。」


 本田は としか言わなかったが、嬉しそうだった。


 次は祐一だ。

 授業中に色々と考えていたが、どうやら前の人生と内容が変わったようだ。

 実際、手紙を渡した時も俺はそのまま帰ったはず。佐藤が俺に対して、江川から手紙を取り返すように言われなかった。

 それに俺が手紙を書いた事を祐一が知らない。まずは祐一から調書を取ることにする。


「祐一ちょっと良いか?」

「ああ、なんだ?」

「ここじゃちょっと。」


 そう言って、祐一を屋上の入り口、最上階の踊り場に来てもらう。


「どうした? 本田とラブラブしないのか?」

「その事なんだけどさ。」

「なんだよ、どうした?」

「祐一は藤野のことが好きなんだろ?」

「はぁ!?」


 あれ?

 違うのか?


「な、なんで知っているんだよ!?」


 狼狽うろたえ方がダサすぎだぞ?


「いや、なんとなく…。」

「なんとなくで、わかる訳がないだろ!」


 さあ、どうしたものか…。

 何をどう説明するかな…?


「俺が四年後の未来から来たって言ったら信用できるか?」

「当たり前だろ!」

「信用できるのかよ!?」

「信用しねえよ! 馬鹿か?」


 ですよねー。


「祐一の信じる信じないは置いといて。実は俺、本田に手紙を書いた記憶がないんだよ。正確にはあんな内容の手紙を書いた記憶がないんだ。」

「なんだよそれ?」

「本田のことが好きっていうのはガチだ。でも、あの内容の手紙を書いた記憶がないんだよ。あと、二週間前に祐一の家に行った記憶があるんだけど、俺、行ったか?」

「夏休みが終わってからは一度も来てねえな。」

「来たのか?」

「ああ。その時に、祐一が藤野のことが好きだと聞いた。ちなみに俺は本田のことが好きだと言った。」

「確かに…藤野のことは好きだ…。」


 照れてるぞ。祐一くんが照れていますぞ。


「ちなみに祐一は昨日の朝、藤野に告ったが、江川に邪魔をされて玉砕をした。」

「告ってねえよ。」

「知っているよ。未来での俺の記憶の話だよ。ちなみに未来での俺が、本田と付き合うのは…。」


 そこまで言い、俺はあの時のことを思い出し、涙がこぼれ落ちた。


「浩? どうした?」


「ああ…。未来での本田は殺されたんだよ…。俺の目の前で…。」

「おい…。何を言っているんだ?」


 祐一がなんとも言えない表情をしている。


「青いジャージを着た男に、刃渡り25センチの刃物で背中から刺されたんだ…。」

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