03
あ。奈穂だ。おーい、奈穂ー! こっちだこっち!
あっ! 康幸! なによぉ、もう。こっち側にいたんだったら、ちゃんと説明しといてよ! 探したじゃない!
こっち側って、お前……この店の駐車場、そんなに広くもねぇだろうが。……ってか、思ったより、早かったな。
そんなことないよ。ってか、雑用押しつけんな! ばかっ!
『ガチャ』
あ。オハヨー。…………ん? 今はもうお昼だから……コンニチハって言った方が自然? ってか、それも何か変だよね。久しぶりだね〜、元気だった?
おい、奈穂。俺は? 俺には挨拶はねぇのかよ?
アンタはどうでも良いでしょ! 煩いから黙ってて! ってか、アンタに挨拶したら色んなもんが減るからしない!
『バタン』
あっ! そうだ! ホラ、コレ。
ん?
頼まれてたのーみーもーの。何でも良いって言ってたからさぁ、二本ともお茶にしといた。問題無いよね?
おー、サンキュー。ぜーんぜん問題無い、問題無い。
そっか。なら良かった。あっ、で、これレシートね。後でちゃんとお金は回収するからね!
げぇっ!? 奢りじゃねぇのかよ?
奢りなんかじゃありませーん。当たり前じゃん。誰が奢るかっつーの! 少なくとも康幸は、自腹で払ってよね! ね、きみもそう思うでしょ? あっ、やっぱそう思うよね? だよね!
あっ! お前、頷くなよ! 裏切りやがったな、この野郎!!
康幸の味方なんてするはず無いでしょー。人の事パシリに使っておいて、奢って貰おうなんて虫が良すぎ! ってか、この前貸した三千円。まだ返して貰って無いんですけどぉ。
うっ。
あっ。もしかして……さては……忘れてたなぁ………?
い、いや。そんなことねぇって。全然? 忘れてねぇし?
……………ふぅん。
お、覚えてるし?
……………へぇ。
何なら、今返すし?
……………ほほぅ。
だーかーらーっ! 忘れてなんかねぇよ! ちゃんと覚えてるって!!
……………。
な、何だよ。奈穂だけじゃなく、お前まで俺を疑うのかよ!?
……………仕方無いんじゃない? だって、どう見ても「俺は、今の今まで、お金を借りたことを忘れてましたぁ。キレイ、サッパリ」って感じの反応してんだもの。信じられる訳ないでしょー? ねー。そうだよねー。
そうだそうだって、何だよ、お前! マジで裏切りやがって!
信用のない康幸が悪いんですぅー。……って、まぁどうせ、直ぐには払えないの知ってるから、今すぐ返してとは言わないわよ。
な……奈穂さまぁ……。
そーのーかーわーり!
……その……かわり……?
ご飯奢ってよ!
は?
どうせアンタ達、まだご飯食べてないんでしょ? これからどこか寄って飯を食うって感じだったんじゃないの?
うっ……。
ほーら、図星。だったら、お昼奢ってくれるので帳消しにしてあげるから、そうしよ? ね、それでいいじゃん!
…………チッ。わーったよ! 飯、奢れば良いんだろ?
あっ、何よ、その言い方ぁ。
何でもねぇって。取りあえずファミレスで良いか?
あっ! 何? 何か態度わるーい。なーんか傷つくぅー。
取りあえず移動するぞ!
あーっ!! 都合悪くなっちゃうとそんな態度取っちゃう? うわぁー、最悪ぅー。酷くない? この扱い。……まぁ、まぁ落ち着いてって? こんな事言われたんだよ? 私、何も悪くないよね? ね?
どっちの味方も出来ないって、おまっ、それでも親友かよぉ!
あ! こんな時ばっかりそう言うこと言って味方増やすの止めてくれますぅ? ずるーい。
……っっ!?
……あ。うん。ま、まぁ……うん。そっ、そうだな。
あ。……えっと……そ、そうね。
ごめんなさい!! 悪ノリしすぎました!!
と、取りあえず、場所移動すっか。
そっ、そうね。
……ってか、康幸。
ん?
今日ってさぁ、彼処行くんだよね? H総合病院跡。
ん? そうだけど。何だよ? 何か拙い事でもあんのか?
…………あ。ううん。何でもない。
…………何だよ、その言い方。意味深な言い方しやがって……気になるじゃねぇかよ。
…………あ。うん。そうだよね。康幸だけじゃなくて、君も気になるよね。…………うーん……なんて言うかなぁ……あのさ……これ、本当の話なのか分かんない噂レベルの話なんだけど、数ヶ月前にね、あの場所で変なものを見たっていう人が居るみたいなんだよね。
変なもの?
うん。と言うか、変な人? 康幸さぁ、あの病院に関してどれくらい知ってたりする?
ん? 県境に在るってのと、随分前に廃病院になって、取り壊しされずに残ってるってこと……くらいかなぁ?
うん。そうだよねー。幽霊の噂なんて実際の所、本当かどうか分からないようなもんじゃん? 場所が元病院ってだけで、如何にも怖い事が起こりそうな場所だっていうイメージ、どうしても付いちゃったりするし。
ってか、そんなもんじゃねぇの? 行ったところで何も起こんねぇか、ビビる事があったとしても、後から考えれば絶対、何かしらの説明は出来るような偶然で起こった現象とかで終わるって思ってるけど。
………一応さ、私もそう思ってるんだけど……って、え? 奈穂は幽霊とか信じてるんじゃないの? って? ううん。私、信じてないよ? ホラーはただ好きなだけ。私自身、そういうのを見たこともないし、感じた事もないから、信じてるっていうよりは……本当にあるの? っていう意味で気になってるって言う方が正しいかなぁ? だからね、一応どんな噂があるのかなぁって調べてみたんだよね。そしたらさぁ……変なの見つけちゃって。
で、一体何なんだよ? その、変なを見たっていう噂ってのは。
あ。うん。それてってね、ピエロの噂らしいんだ。
ピエロぉ?
うん、ピエロ。
ピエロって、サーカスとか遊園地とかにいる、あれか?
うん。そうみたい。
…………はぁ。
何よその反応。…………まぁ、私もちょっとコレはどうなんだろうっては思いはしたんだけど…………なんかさぁ、読んでみるとちょっと怖いっていうか…………なんだろう…………説明しにくいんだけどさぁ。この話、とっても気持ち悪くってさぁ。
気持ち悪い?
うん。なんていうかなぁ……何でピエロなんだろう? ってまず思ったんだよね。病院とピエロってさ、全然関係無いじゃん、普通。なのに、何故かピエロなんだよね。
でもそれって、ただの噂なんだろ? 幽霊が出るよりも全然イメージ湧かねぇよ。
うん。でもー…………え? 何でそんなに気になってるのって? うーん……なんだろう…………そこがさ、上手く説明出来ないんだ。何となく変って言う感じっていうかなぁ。
ふーん…………なぁ。取りあえずさ、その話、飯食いながら続き話さねぇか?
え?
着いたぜ。店。
あっ。そうだね! お腹空いたもんね!
そうそう。俺、朝からなんも喰ってないからマジ食いもん寄越せって感じ。
あっ! じゃあ、続きはお店の中で話すよ。ね、行こ行こ!
「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」
あ。三名です。
「三名様ですね……少々お待ち下さい!」
……あー……結構混んでんな、やっぱ。
そうだね。今日、土曜日だから。家族連れとか結構居るね〜。っと。
「あっ!」
ぶつかっちゃったかな? ごめんね。
「ううん」
「あっ! タツト!」
「おかーさーん!」
「ごめんなさい! 突然この子が走り出しちゃって。ほら! タツト! お姉ちゃんに謝って!」
「おねーちゃん、ごめんなさい」
あっ。いえいえ。大丈夫ですよ。タツトくん、大丈夫だった? 怪我は無い?
「うん、だいじょうぶ!」
そっか。良かった。
「本当にすいませんでした」
いえいえ。こちらこそ気を遣わせてしまってすいませんでした。
「ねぇねぇ、おねーちゃん」
ん? なぁに? タツトくん。
「これ、ぶつかってごめんなさいだから、あげるー」
ん? 何かなぁ? どれどれ…………
「じゃーね! ばいばーい!」
…………うん、ばいばーい。
「お待たせ致しました。席にご案内いたしますね」
おーい、奈穂ー。席開いたって。…………って、どうしたんだ?
あ。うん。コレ……なんだけど…………。
ん? さっきぶつかった子供がくれたもんか?
うん。そうなんだけどね……ねぇ、康幸…………これ、何に見える…………?
なんだこれ?
……あっ。ねぇ君は? 君はコレ、何に見える?
うん。そうだよね。『ピエロ』に見える、よね…………。
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