伍ノ噺:呵イの仮面

第5話:【トイレ】【ピエロ】【赤い】

 なぁ。知ってるか?

 県境にさぁ、病院跡があんじゃん? 彼処ってさ、出るんだってよ。

 え? 何がって?

 決まってんじゃん。幽霊だよ! ゆーうーれーい!

 お前、聞いたこと無いの? 彼処、メチャクチャ有名な心霊スポットなんだってさ!

 何でそんな話するんだよだって?

 そりゃあ、アレだ。動画だよ、どーうーが。

 この前チャンネル作ったじゃん。それさー、結構登録してくれる人がいてさぁ。で、次何したら良いかってアンケートしてみたんだよ。そしたらさ、フォロワーからリクエストを貰ったんだって。

「夏だし、『ホラースポットに突撃!』ってのはどうですか?」

 って。

 俺的には心霊現象とか、そういうのあんま信じてねぇんだけどさ、ネタとしては面白いじゃん? だから、ちょーっと行ってみようかなって思ってさぁ。

 え? なんでこんな話をするんだって?

 モチロンお前にも来て欲しいからだよ。そんなの決まってんじゃねぇか!

 え? 嫌だぁ?

 頼むよぉ、そんなこと言うなよ。長い付き合いの親友じゃん? な? 頼む! この通り!!

 …………ん? 来てくれる? マジで!? やったー!! マジ助かる! やっぱ、持つべきモノは親友だな!

 ん? で、何をすれば良いのかだって?

 あー……それはさぁ、出来ればカメラをお願い出来ねぇかなぁって。……あ、うん。そうそう。カメラマン、カメラマン。

 一応さ、俺が先に歩くよ。だからさ、お前にはカメラを持って後から付いてきて欲しいんだ。

 あー。何だよ、その嫌そうな顔。

 …………えー……そんなこと言うなよなぁ…………え? 他の奴に頼めば良いじゃんって?

 いやいやいやいや!

 そこはほら、俺とお前の仲じゃん。

 やっぱさぁ、勝手知ったるなんとやら。背中を預けるのは是非ともお前にって思ってな。

 ってオイオイオイ。嫌そうな顔すんなって。帰りにこの前言ってた店の期間限定で出た新商品奢ってやっから、それでどうよ?

 お? ソレナラ良いって?

 良かったぁ。やーっぱ、持つモノは幼馴染みで付き合いの良い親友サマサマだよな〜。

 あっ! そうそう。メンバーなんだけどよ。俺とお前だけだと、ちょーっと寂しいじゃん? 画面的に。

 だからさぁ、奈穂も誘おうかなって思ってんだけどさぁ。ん? 何で奈穂なんだって? いや。アイツこういうの好きじゃん?

 この前なんて、『新しいホラー映画が公開されるの! 絶対見に行くんだからこの日は電話かけてこないでよね!』って怒られたんだよ。

 大体よぉ……俺だって毎日アイツに電話するほど暇じゃねぇんだっつーの。そもそもアイツは俺の彼女じゃねぇし。

 あ? 何ダヨその顔。

 いかにも『二人は付き合ってる恋人ですよねー?』って顔しやがって。いや! そんな関係じゃねぇから!!

 ってか、奈穂とはお前も幼馴染みだろ!? 何で俺と奈穂なんだよ!!

 んー…………いや、別に奈穂のことが嫌いって訳じゃねぇんだよ。

 でもさぁ……なんつーの? 何か違うって感じじゃん? そういうんじゃねぇんだって、アイツとは。

 だからってお前が奈穂とそうなるとか、俺がお前とそうなるとか、そういうのも違うんだけどな。

 まぁ取りあえず、奈穂には俺から連絡しておくわ。

 でさぁ。いつそこに向かうかって話なんだけどさぁ、俺的には…………って、あ。ちょっと待って。電話だ。

 あー、もしもし。あ、奈穂? ああ、俺。うん。うん。そうそう。うん。……ああ、うん。そう。うん。ん? ああ。ちょっと相談事があってよ。

 ……って、何だよ。違う違う。金を貸してくれとかそう言うんじゃなくて。え?

 いやいや! そうじゃねぇって。うん。って、そっちじゃなくてよ。

 あのさぁ、お前さ、ちょっと付き合ってくんねぇっつったらOK出してくれる? は? いや! そっちじゃねぇよ! 違う違う。

 いやさぁ、この前配信サイトに登録したって話したじゃん? うん。うん。ああ、そう、それそれ。そのチャンネル。

 でさ、そのチャンネルなんだけど、今度何やったらいいかっていうアンケート取ったんだよ。そしたらさ、「ホラースポットに行ってみたらどうか」って提案がきてさ。

 ん? うん。……って、え? マジか!? OK? ホントに? マジだな? 信じるぞ、俺。

 それじゃあ、詳細が決まったら改めて連絡するわ。………ん? え? ああ。それは良いぞ! その辺は任せる!

 ああ、うん。それじゃあ、またな!

 ……あ。で、スマンスマン。さっきの話の続きだったよな?

 今さぁ、丁度奈穂から電話があって……って、そんなの分かるって? 声がでかいから全部聞こえてたって、何だよ……じゃあ、説明は要らねぇな?

 さっきの話だが、奈穂はOKだってさ。ただよ、奈穂からさぁ、『私の他に何人か誘っても良いか?』って聞かれてよ。

 ん? そこは悩まないのかだって?

 いやぁ。なんつーか……人が多い方が面白くね?

 ……ってまたぁ、そんな顔すんなよなぁ。良いじゃん、人数増えたらそれだけ反応も増えるだろ?

 だからさぁ、取りあえずメンバー増える分には構わねぇよってことにしておいた。

 でさぁ、そこに行く日なんだけどよぉ……って、ちょっと待ってろ。えーっと………んー………あー……確か、ここに………あっ! あったあった!

 そうそう、カレンダーカレンダー。この前姉ちゃんに押しつけられたもんなんだけどよ、あんま使わねぇから放置してたんだよ。で、今はー……七月だからぁ……おっと、ここか。で、今日が……この日だな。うん。

 えっと、今日が水曜日だから、早ければ土曜日の夕方とかどうかなって思うんだけど、どうよ?

 あっ! もちろん、お前の都合が悪ければ別の日を設定するぜ。

 え? 奈穂はどうするんだって?

 うーん……まぁ、何とかなるんじゃね?

 いってぇえっっ!! おまっ、ちょっ! 何で叩くんだよ!!

 は? それじゃ駄目だろうって? 何でだよ!

 痛い痛い! ……はぁ……何すんだよ、ったく。で、何? 何が問題って感じなワケ?

 ん? 今回のメンバーは俺たち三人だけじゃなくて、他に何人か増えるんだろうって?

 まぁ、奈穂がメンバー追加したいって言うから、少なくとも四人以上にはなるんだろうなぁっては思うけど。

 それだったら、他のメンバーの都合も確認しなきゃ駄目だろうって?

 まぁ、言われてみれば。確かに?

 うーん……だったらあれかぁ……。まず一度、奈穂に他のメンバーのスケジュールを確認してから調整したほうが良いって事かぁ。

 え? それは当たり前だって?

 なんだよ、その面倒臭そうな顔。気付いてるんだったら早く言えっての!

 そっちが勝手に話を進めたんだろうって?

 あー……ハイハイ。俺が悪かったよ。スマンスマン。……じゃあ、あれか。取りあえず、もう一回奈穂に連絡入れてみっか。えーっと……取りあえずメッセージを入れてーっと……あ。そうだ。奈穂に送るメッセージなんだけどさぁ、こんな感じで良いと思うか?

 ……うん……うん……うん……お? マジで? それじゃあ、これでそーしん! っと。

 ふぅ……。ってかよぉ……奈穂から返事帰ってくるまで、この話進まなくね? 取りあえずなんか飲むか?

 ん? ああ、いいよいいよ、俺が取ってくっから。……あ。ゴメン、今冷蔵庫の中に水かコーラしかねぇわ。お前どっち飲む? 水? ほいほい、リョーカイっと。

 ……にしてもよぉ、あっちぃなぁ。気温、三十度越えだってよ。朝、ニュースでやってた。つい最近まで大雨降ってたってのに、梅雨開けた途端、夏になったって感じだよなぁ。

 ……ふぁぁぁ……。やっべぇ、ちょっと眠くなってきたわ。悪いんだけどよ、十分くらい寝かせてくんね? あ。奈穂から連絡来たら起こしてくれよ。

 ん? ゲーム? ああ、良いぜ。適当にやっててくれよ。それじゃあ、悪いけどちょっと寝るわ。


 んっ…………んだよ……。

 ふぁぁぁ……ふ……んー……あぁ、何だ、お前か。……んー……ん、おはよう……。

 ……ん? ……けい……たい……? ……なんだ………んー……ふぁ……ふぅ……。

 ………あ。なほ……じゃん……なん………ん……?

 ……ああ、……うん。ああ! そうだった! そうだ、そうだ!

 って、何だよ? 何、変な顔してんだよ。

 あ? 変な顔じゃなく、呆れてるんだって? はぁ?

 ってかよ、そんなことよりも、奈穂から連絡来たんだって! これなんだけどよ、何か、「土曜日なら大丈夫だけどどうかな?」って。元々土曜が良いかなって思ってたから丁度良かった! で。お前は? お前の方がどうなんだ?

 お? マジで? 土曜、行けるんだな? よっしゃ! じゃあ、早速奈穂に連絡するわ!

 あ。もしもし? 奈穂? 俺だけどさぁ。さっきの件だけど、こっちも土曜で問題無いわ。だから今週末の土曜にしようぜ。ん? 向かう方法? んー……どっちでも良いんだけど、何なら現地集合のが都合は良いかなぁ。俺の車軽だし、何人来るかわっかんねぇからさぁ。

 あ? うん、うん。あ? お前は拾って欲しいって?

 ふんふん……他のメンバーは現地集合大丈夫だと思うけど、自分は足がないから迎えに来いだと?

 あー……まぁ、うん。しょうがねぇなぁ。分かったよ。迎えに行ってやる。

 オーケーオーケー。じゃあ近くまで来たら連絡いれっから。今週土曜な! ヨロシク頼むぜ!

 …………ってワケで、今週の土曜に決まりだ。お前はどうする? 一応、俺と一緒に行くって事で予定はしてるんだけど……ん? だよなー。リョーカイリョーカイ。じゃあ、適当な時間に来てくれよ。何なら、前日から泊まってくれても構わねぇぜ?

 あ? それは嫌だ?

 あー、ハイハイ。そうですかー。

 じゃあ、当日。俺ん家に集合な!

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