エピローグ

 王太子殿下の掛け声で、第二王子とマリア様が騎士様に連れて行かれます。それを見送った後に王太子殿下とアイジス帝国第三王子殿下がこちらに歩いてきます。


「フィーア・ローズ伯爵令嬢とオスカー・ミリスティア公爵子息だな。王族が迷惑をかけた。代わりに私が謝罪させてもらう。すまなかった」

「お顔をおあげください、殿下。被害はあまりなかったので、気にしなくて大丈夫です」

「はい。私も彼女と同じで、あまり気にしておりません。ですが、噂は王家の方で撤回していただければと思います」

「ああ、約束しよう。あのバカが広めたバカらしい噂は私が撤回する。そうしないと、今以上に大変なことになるからな」

「ねえ、君たち二人、この国はもう住みにくいんじゃないかな?僕の国においでよ」

「おい!ラッド!」

「別に良いじゃないか。君の家の問題だろ?それで、どうだい?」


 確かに、この国では王族が言っていたということで、髪色に関しての偏見は強くなってしまっています。けれども私はこの国を出ようとは思っていません。ふと視線を感じ、横を見るとオスカー様もこちらを見ています。私は笑顔で頷き、アイジス帝国第三王子様に向き合います。


「申し訳ありませんが、私はこの国にいたいと思います。この国には私を愛してくれる人がいる国ですから」

「…そうか、それは残念だ。…君は?」

「申し出はとても嬉しいです。たぶん、彼女とあっていなかったら、行かせていただいていたと思います。けれど、彼女のおかげで、私を愛してくれる人がいることを知りました。だから、私も彼女と一緒にこの国にいたいと思います」

「そうか、フラれてしまったな。まあいい、お前たちは愛されているのだな?」

「「はい。私たちは愛されています」」


 今なら笑顔でそういうことができる。家に帰ったらみんなに何を言おうか。「ごめんなさい」?「声が戻りました」?

 やっぱり最初は「ありがとう」かな。


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「また見ているのか。白」

「ええ、だって私が送った人ですから」

「声は、返したのか?」

「もちろん!私はあの子の味方であって、敵ではないもの」

「…なら、どうして声を?そこまでする必要はあったのか?」

「…あの子はね、ずっと病気で自分が何か言ってはいけないと思っている。だから、自分の意見を出さずに溜め込んでいた。溜め込みすぎていると私は思うの。だから、あの子が心の底から思ったことが言えるように、言いたいと思った時に話せるようにしたの」

「そうか」


 何もない空間に人影が二つ、白と呼ばれた白髪白目で髪が長く、少女にも見えるような容姿をしている女性ともう一人、黒髪黒目の髪が短く、長身の男性がいた。二人は、目の前の歪んだ空間から見える、フィーア・ローズとオスカー・ミリスティアを見ていた。


「白は全ての起源の色であり、黒は全ての終焉を表す色だ。どちらか一方がある限り、もう一方も必ず存在する。それは引き離せるものではない」

「もう、またそれ言ってる。もう聞き飽きたよ、黒」

「お前は適当すぎるのだ。だが、人間は悪魔だの、呪いだの、好きものだな。自分と異なるものには畏怖を抱き、排除しようとする」

「…これだけ平和な世界でもそれは変わらない。あの子たちには悲しい思いはさせたくなかったんだけどな…」

「ああ、だけど、彼らは自分から掴み取った。自分の居場所を」

「ええ、だからこれからも見守ってあげましょ。私たちが連れてきたあの子たちを」


 二人は話し終わった後、何も言わずに姿を消す。そこにはもう何もないが、「にゃーん」と、猫の鳴き声が聞こえた。

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【完結】白と黒の回合 白キツネ @sirokitune-kurokitune

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