サクラさんパーティのお披露目
「ほう、主のお眼鏡にかなうとは…なるべく無駄な時間は削ぐから仲良くしようじゃないか?」
「ァ?誰がキサマらと…」
「……アスタロト?
「ベルゼブブ様ァ?!」
マーリンと一触即発になりかけるアスタロトの目の前に、音もなく立ち塞がるベルゼブブ。そういえば…ベルゼブブはアスタロトの上司だった。
「魔王命令。パーティメンバーとは仲良く。無駄な時間も時には楽しむ。意見は物怖じせずに言う。高圧的になりすぎない。以上四つ、絶対守ッて。」
「はっ!我が命に替えても!」
…うわ、人が変わったように素直になった。というか、何その命令…?意見は物怖じせずに言う??
「パンドラ、早く次の子出して」
なんて考えてたら、サクラさんが催促しだした。メンバーは残り二体だ。だれを選んだんだろう?
「焦んなっての~、ほら、次は土属性のモンスターだぜ?」
といって、魔法陣から出てきたのは…
「……何用だ」
「おぉ…!」
思わず声が漏れた。彼はヘイムダル、☆☆☆土属性天使モンスター。ステータス、162-63-63。☆☆☆のみならず、前モンスター中でもかなり強力なサポート要員だ。これはなかなかいい人選じゃなかろうか。職人気質な性格で、寡黙なイメージがあるが…たぶん仲良くやれそうだな。
白と黒のツートンカラーの体と、側頭部から生えたガゼルのようなねじれた角、角の間にぷかぷか浮く緑の球体が特徴的だ。あの球体、実はアホ毛キャラのアホ毛みたいな役割があるらしい…どういうことだろう。そして最大の特徴、巨大な角笛。渦を巻くような形で、口元から上半身にかけてを覆うほどの大きさがある。神様だから何でもありなんだろう、謎の力で常に浮いている。ふしぎ。
「ヘイムダル、よろしくね」
「……主か」
「うん、あるじ」
「……彼らは仲間か」
「うん」
口数は少ないけど、順調に仲良くなれたようだ。よかったよかった。
「……休暇には丁度良いな」
私たちの旅も休暇に収まるレベルなのか…神様寿命長いもんねぇ。その割にはヘイムダル、HP低いけど…
「ほい、終わりっと!」
「あれ?パンドラ、風の子は?」
そうだ、まだ風属性モンスターの紹介が終わってない。あれ?もしかしてパンドラさん用意できなかったとか…?
「現地で会うことになってるから、もうちょっと、待ってくれよな~」
「…………チッ」
サクラさんの舌打ちが聞こえた気がしたけど、おそらく気のせいだろう。それに、今用意出来ないつてことは…
「あの、もしその子がストーリーに絡んでくる子だったら…チームになるのは登場までお預けになっちゃうんですけど…」
「……あ、それ忘れてた」
なるほど。つまり主人公格かラスボス格かのどちらかだと。
「変えなくていいの?」
ふるふる、と首を横にぶんぶんするサクラさん。
「今は3人でがまん」
「いい子だな」
サクラさんの頭をポンポンするマーリン。おうまーりんにもだいぶ慣れてきたようだ。
「……マーリン大好き」
頬を紅くするサクラさん。ほのぼの空間ができた。
「……我も褒めるべきなのだろうか?」
「ヘイムダル、褒めたりできるの?」
「……笛の演奏でだが……」
ヘイムダルさん、あんた自分の笛がどんなモノかわかっててそれ言ってるのかなぁ…
もしかして、意外に不器用なのかな?それとも狙って言ってるのかな?
「あのー、もう遅いし…続きは明日にしない?」
「ん、ねむいかも」
「私もパンドラにクドラクの秘蔵写真をねだりに行きたいので…」
「なぁ?!ちょ、パンドラ!そんなもんねぇよな?!」
クドラクが慌てた様子で駆け寄る…が、先ほどEX技を使った反動で疲れて寝たクルースニクをおんぶしているので、かなり歩みは遅い。クルースニクのケモミミがぺたんとしていて、かなりリラックスしているようだ。
「おっ、あるっていったらどうするんだ~?」
「ください!!!なんでもするのでください!!!」
「バッ、ミウてめぇ…!チッ、クルースニクお前起きろっての!!俺の背中で寝るなぁ!!っだぁーもぉぉ!!よだれたらしやがってぇぇ!!!」
「あっ、やっぱりあれを写真に…」
「目に焼き付けるだけにした方が身のためだぜ~?」
「むぅぅ…」
ニヤニヤするパンドラと、クドラクのウサちゃんハンカチをかみしめて悔しがるミウさん。なんてカオスなんだ。…というかペストマスクの上からどうやってハンカチ噛んでるのかすごく気になってしまう。
とりあえず、収拾がつかないミウさんパーティと、アスタロトとマーリンの視線が謎にバチバチしてるサクラさんパーティは…私が口頭でエンプレスとダムキナに紹介をしたのち、お部屋を借りて一晩過ごすことに。ベルゼブブとアスタロト、クドラクとクルースニク、ヘイムダルとマーリン、そしてドクロとナタタイシとが、それぞれ同じ部屋で過ごすことにしたようだ。サクラさんとミウさんは私とネロケミちゃんの部屋に来て…あっ、イシスもいた。仕方ないから、イシスは同じベッドにしてあげたけど…寝相悪そうだしなぁ…
さて、時刻はちょうど日付をまたぐころ。私は昨晩と同じように、ベランダに出ていた。膝には、スライム姿のネロケミちゃんだ。
「ネロケミちゃん、周期表埋めて遊ぶ?」
「はいっ!」
目を輝かせて、私のノートにペンを走らせるネロケミちゃん。みるみるうちに元素周期表が出来上がる。
「あ、惜しいなぁ…ツリウムはTrじゃなくてTmだよ?」
「あっ…エルビウムと同じだと思ってました…」
「性質似てるから仕方ないかなぁ…あ、でもでも、一つ下のメンデレビウムがMdでmがあるから、それで覚えられるんじゃない?」
「わぁ…!ほんとだ!」
…なんだろう、話の内容は超マニアックなのに、ネロケミちゃんがかわいすぎて幼稚園のおままごとみたいに見えてくる。
「ひびかさん、次は構造決定がいいです!」
「うわぁ、私あれ苦手なんだよねぇ…よし、頑張るかぁ…」
「じゃあ、まずベンゼン環描いてください!」
「はいはーい…でどうするの?」
「えっと…えっと…置換基が三つあって、さらし粉水溶液につけると呈色します!」
「うんうん、一つはアミノ基だね…」
「それから…」
そんな濃密な化学談義をしていると、しだいにネロケミちゃんの意識は夢の国へ運ばれてしまい…すっかり寝静まってしまった。かわいい。
「あ、そういえばなでなでしてなかった…今しとこっと」
昨日の夜、寝る前にお願いしてたなでなでを今しておく。プニプニなんだけど…どこかあたたかくて、ほっとする。平和だなぁ…
「おやすみ、ネロケミちゃん」
抱っこしてベッドで寝ているイシスのもとへ。あーあ、案の定布団がほぼほぼ体にかかってないや。女神さんが見せちゃいけない寝相になってる。
「ったくもう…イシス、あなたも今日1日お疲れ様!」
そっとほめておく。顔が赤くなってない。よし、熟睡してるんだな。イシスの姿勢を整えてあげ、胸にネロケミちゃんを乗っける。布団をかぶせて…いや、ちょっと趣向を凝らして…
うん、完成。ミイライシス。
布団をぐるぐるに巻いてやった。ネロケミちゃんは胸の上じゃなくて、枕の上にしてあげたよ。
「さて、ミウさんとサクラさんは…」
と思って、二人を見に行くと…あ。起きてる。2人とも布団を被っているが、寝転んでダラダラしてるだけだ。
「寝れない」
「私も…いろいろありすぎて…」
「まぁ…濃すぎたよね、今日は…」
そりゃそうだ。戦争を終わらせて、チムメンを決めて…いろいろあったから、疲れ以上に興奮が勝ってるだろう。私もだけど。
「あ、じゃあ明日以降の予定でも話す?」
「決めてるんですか?」
「うん、サクラさんのチムメンを迎えに行こうかと思って!」
「となると、風の大陸?」
「そう!」
先ほどサクラさんに残りの一人を聞いたのだが…もうバリバリ、ストーリーに絡んでくる子だったので…先にそちらのストーリーを終わらすことにした。なので、このお城は明日で出るつもりだ。
「エンプレスたちに挨拶しなきゃね…」
「私もしますか?」
「んーん、ネロケミちゃんがお礼言いに行くのの付き添いだから大丈夫」
まぁ、それも勝手にネロケミちゃんの方で済ませちゃうだろうけど。
「そういえば、ここの図書館にいたんでしたっけ…」
「そうみたい。詳しく知らないけど…」
「あの子、不思議」
「パンドラも知らないって言ってたし…でも、かわいいからいいじゃん!」
「そうですよ!」
「それはそう」
結論、かわいいからヨシ。
さて、私たちがこんな話をしている間…ほかの部屋はというと。
「じゃあ、勝利に乾杯だな!」
「おう!」
キンッ。冷たいグラスを鳴らし、酒をあおるのはドクロとナタタイシだ。ガイコツって酒飲めるんだ…
「かぁー…たまんねぇなぁ…」
「ハハッ、仏でも酒は飲めるんだな?」
「一応な!じゃ、俺様からはこれを出しとくぜ!」
といって、絹の布で包まれた…いびつな形の果物をテーブルに置く。
「ほう…ニンジン果だな?」
「っと、まさかの知ってたか…!」
「ああ、だがさすがに食べたことはないぜ?だが…土にあえば沈む、と聞いたから食えるのかわからなくてな…」
ニンジン果。西遊記に登場するから、知ってる人も多いかも。果てしない年月の末、ようやく実をつけるといわれる果実だ。形は人間の胎児に酷似していて口にするのをためらわれそうだが…一つ食べることで不老長寿になるという、なんとも魅力的な果物。それをナタタイシ、なんと持ってきてしまったらしい。ほんとはかなりのことがないと収穫させてもらえないそうだが…?
「なぁに、属性は関係ねぇって!酒に合うかはわかんねぇけど、食っとくといいことあるぜー?」
「ハハッ、そうか!じゃあいただこう…っと、しかしどこから食うんだ…?」
「んぁ?鯛焼きみてぇなもんだと思えばいいだろ?内臓とかねぇから大丈夫だって♪」
「そうだな!じゃあ…はぐっ、ん…お、旨いぞ…?」
…細胞のかけらもなさそうな体のどこで味を感知してるんだかホントに気になる。
「だろ?これでEXを何回使っても死なねぇ体の出来上がりだな!」
「ハハッ、仙界の護符は冥土の神様にゃ効かなそうだがな!だがしかし、旨い…!オレの持ってきたつまみが霞みそうだぜ…」
「ドクロが不味いもの持ってくるわけがねぇって!な!」
「ハハッ、持ち上げるのが上手いな…!じゃあ、こいつを…」
そういって、懐から柏の葉に包まれた何かを机に置く。開くと、出てきたのは…
「おぉぉぉーー!!ブブリキモじゃねぇか!!」
ブブリキモ、前の世界ではただのドロップアイテムで…その持ち主を合成するのに必要になったのだが、設定として「魔海一の珍味」らしい。どうやらこの世界ではそれがかなり生きているようだ。ナタタイシが少し跳ね上がるように驚いている。私も食べてみたい…けど、悔しいことに食欲が皆無なのでおあずけかなぁ。
「っと、喜んでくれるのはうれしいが…声がでけぇぞ?」
「っち、悪ぃ…!いやぁ、食ってみたかったんだよこれ…!よくとれたな!?」
「それがよ、先だって魚釣りに初めて行ってみたら…あっという間に太公望になっちまってな?それでちょくちょく行くようになったら、運よく釣れちまって…しかも五回も…」
「…おいおい、そりゃ一生分の運使い果たしちまったんじゃねぇか?」
「なぁに、こうして仲間を見つけて酒が飲めてるあたり、まだまだオレの命も捨てたもんじゃねぇさ…」
ほろ酔いになって饒舌なドクロがすげぇイケメンなセリフを言ってる。ナタタイシなんかちょっと感動して握手しようとしてる。それに笑顔で答えるドクロ、くぅ…イケメン…!!
「だから遠慮しないで食え!中は少しトロってして、かなり味が濃いからちょっとずつ食えよ?」
「あぁ!サンキュー!うお…楊枝が沈んでく…!いただきまーす…んむ…」
旨いか否かは、ナタタイシの反応を見れば聞かずともわかる。わかりやすく言うと、ネロケミちゃんをなでなでしてるイシスくらい幸せそうだ。
「旨いもん食うと言葉が出ねぇってホントなんだなぁ…舌触りが滑らかなのに、周りの皮がコリコリでたまんねぇぜ…」
「ハハッ、だろう?実は軽く炙るとまた触感が変わるんだぜ?」
「んな!?一度で二度おいしいってか!?」
「ハハッ、二度で済むかな?」
ニンジン果をかじりながら、笑うドクロ。つられて笑ってしまうナタタイシ。
からん、とショットグラスの中の氷が音を立てたのを合図に、2人してお酒を注ぎ直す。ダンディーな空気に包まれ、、そのまま二人の夜は更けていくのでした。
さて、他はと言うと。
ベルゼブブとアスタロト、クドラクとクルースニクのところは…疲れていたのかみんなぐっすり寝ていた。
ベルゼブブは寝るときは王冠を外し、アイマスクをしている。羽もたたんでいて、ぱっと見普通の人間だ。腕が四本ある以外は。アスタロトも大きな翼はきれいにたたみ、角を魔法で消している。イケメン二人の寝顔…おいパンドラ、写真撮ってこい。
クドラクとクルースニクのところは…何と二人とも、子犬になっていた。なぜに子犬??と思ったが…そんなことを考えるのがどうでもよくなるくらい、かわいかった。だって二人で身を寄せ合って寝てるんだもん。最高の癒し映像だと思う。お互いの頭の向きが逆なので、陰陽道のマークみたいだ。これ起きた後どうするんだろうなぁ…あっそうだ。おいパンドラ、録画してこい。
さて、ヘイムダルとマーリンの部屋はというと。
「……粘土」
笛をベッドの上に浮かせて、布団に潜り込んでいるヘイムダル。横になっていても、角の間の緑の玉はぷかぷか、浮いている。ふしぎ。
「ど、か…ドウ……ダメだ終わってしまう………ドーナツ」
髪の毛がボサボサになるのを防ぐために、睡眠時に被る用の帽子を被ったマーリンが、布団の中で頭を悩ませている。
さて、何をしているかと言うと。
「……土御門」
「つち……なんだそれは?」
「……ある島国の皇族の一派だ」
「博識だな…どだな?またか…ドルトムント」
「……トド」
「またか…はっ、怒弩!」
「……同程度」
「………………はぁ、そろそろ変えてくれ…」
「……まだあるが?」
翌朝。昨日バトルをした広間に、3パーティが勢揃いした。なんと壮観なことか。エンプレスやバビロア騎士団、メソタニア軍はお城で戦後処理に追われているので…お迎えは無い。ただ、この方がすっきりしてていい気がする。
ちなみに昨日、ミイライシスで遊んだせいで…イシスは起きた時に手足が動かなくてかなりビビったらしい。それで騒いでたら、ケタケタ笑う私が目の前に見えたので…反射的にマジュラを放って、今なお絶賛マジュラ中。少し苦しい。ちなみに、布団はミウさんが剥いでくれたらしい。グッジョブ。
「よしっ、じゃあみんなで風の国に行こう!パンドラ!」
なので、私は今宙に浮いている。いつ終わるのかなぁ…
「ほ~いっ、じゃあまずは…ほらよ、昨日の隠し撮りだぜ~?」
「はっ、ぁ………」
「…マーリン、かわいい」
パンドラがこっそり、ミウさんとサクラさんの手元に写真を渡す。子犬なクド&クルに悶えるミウさん、しりとりでヘイムダルに詰まされて悩み崩れるマーリンにご満悦なサクラさん。ちなみに今日もおうまーりん状態だ。マーリンはもはや何も言うまいの顔でじっと耐えている。
「じゃあ一気に転移させちまうぜ~!がんばってこいよ~!」
そういうと、パンドラはキラッとウィンクをして、私たち全員が収まるサイズの魔法陣をつくる。しばらくすると、視界がホワイトアウトし、体が浮いたような感じがして…って、元から浮いてたわ。
「うわ…涼しい…」
一瞬で風の大陸に来た。ここはかなり、ストーリーが複雑で…本当は最後に来るべきところかもしれないんだけど、急遽予定変更。零式のお迎えはまだまだ先になりそうだ。ごめんよ…零式…
「風の大陸、初めて来ました…」
「そういや、ナタタイシはここから来たんだろう?」
「ああ!懐かしい…と言いたいんだが、ここは俺様より、クドラクたちのほうが馴染みがあるんじゃねぇか?」
そう。我々が今いるのは、大陸のなかでも海に面したところ。バリバリの砂浜にいるのだ。
「懐かしいなぁ…二人で海行ってたくさん追いかけっこしたよね…」
「捕まったら死んじまうから必死だったぜぇ…」
…ほのぼのした話かと思ったらガチの殺し合いだった。あと、二人で海行って…と来たからまさかとは思ったけど、さすがに写真撮ったりはしてないようだ。何のせいだろうね。
閑話休題。
「じゃあ、アスタロトがイラついてるし…サクラさんの子のお迎えいこっか?あとイシス、いい加減放し…あでっ」
相も変わらず雑な落とし方よ。そして今一瞬上に浮かせてから初速度をつけて離したの、見逃さなかったからな。覚えとけよ。
「ったく、砂浜が苦手だから早くしてくれ…ってベルゼブブ様?何を…?」
風の大陸の森にお住まいのあるアスタロトが海の近くが嫌らしく、多少苛ついている。と思ったが、
「ン…オレの城、作ッてる…」
「ベルゼブブさん、できましたよ!」
「おーすごい…器用だね…よいしょ」
ネロケミちゃんが謎にハイクオリティなお城を完成させて、試験管の中の液体をばしゃぁ。砂のお城に緩衝溶液をぶちまけて、耐久力を上げたようだ。その隣にベルゼブブが「よーおーさんじょー」とけだるそうな字を書く。参上のじょうと城のじょうをかけているのか…あ、ミウさんがパンドラを呼び始めた。
「…あの…お城作るのはいいけど、ちょっとは海見たら…?あのデカブツ、気づかないの…??」
「……ナグルファル…!我が笛は鳴らしていないはず…!」
「ハハッ、ヘイムダルよ、あんな極彩色の船をどうやって死人の爪で作るのか教えてもらえるか?」
「……む、よく見ると顔がある、違うな…」
「神様にも間違いはあるんだな?初耳だぜ…で?ありゃあ何だ?」
「……仏にも知らぬ物ありとは初耳だ」
「あれ、ナンクルマルじゃない?」
おっ、マルドク正解。あれはナンクルマル。立派なモンスターだ。☆☆☆☆水属性水族モンスター。ステータス、420-53-53。子供に人気がありそうなかわいらしい見た目をしているが、実際は…?神のみぞ知る、と言いたかったが、その神が知らないんだから…本人のみぞ知る。
あ、ちょっとだけ補足しておこう。
ヘイムダルが言ったナグルファルっていうのは、ヘイムダルの住む北欧世界に登場する船のこと。死者の爪から出来た巨大な船で、世界の終わりの大戦、ラグナロクの時に冥界から死者の霊を連れて決戦場に来るとされているよ。なので、ヨーロッパの一部では、人が亡くなった時に爪を剥がす習慣があるとか。
以上、ヒビカさんの知恵袋でした。
さて、そんなナンクルマルがなんでこんなところにいるのだろう。なんとなく嫌な予感がしてくる。
「…お城、壊されたくないなぁ…だるいけど、やるか…」
「わたしもてつだいますっ!」
頭を掻きながら、だるそうに立ち上がるベルゼブブ。行動理由がさっきのお城なんだから、なんだかナンクルマルがかわいそう。ネロケミちゃんはフンスフンス言いながら気合十分にベルゼブブの隣へ。いつの間にかスライムから☆☆☆形態になっている。見かねたアスタロトが、ネロケミちゃんと反対側のベルゼブブの隣に行く。右にアスタロト、左にネロケミちゃん。たぶんそこらへんの魔王くらいなら封殺できるメンツだ。
「オ〜リト〜リ〜!よー来たやんさー!」
そして…ある程度予想していたけど、やっぱり現れた。水色と黄色を基調とした派手な体色のモンスター、
「ヤッター、デージナジョートーサ〜!ワッターのニライカナイに連れてちゅんどー!」
「ベルゼブブさん、なんていってるんですか?」
(…わかンねぇ…アスタロト、何つッてんのコイツ?)
(私もわかりませんベルゼブブ様…)
何を喋ってるのかほとんど分からないところ。ちなみに今のは…「お前らすっげぇ良いなぁ〜!俺のニライカナイに連れてったるぜ〜!」らしい。パンドラ翻訳による。
にしても、面倒だ。地味に体力が高いから…少し手間取りそう。と思っていたら…
「ッ!!!!!!!!」
「わぁ!風が…!」
突風がナンクルマルとニラーハラーを襲う。マルドク?と思ったけど、違うらしい。同じくびっくりしてる。そして…上を向いてる。
私も上を見る。
「っと!迅竜剣士リント、見参!」
空中で一回転して、ドラゴンから人間に変身。両腕に刃を生やし、額に宝石を埋め込んだ翠の髪のイケメン。サクラさんが目をキラキラさせている。このモンスターこそ、サクラさんパーティ最後の一体、迅竜剣士リント。☆☆☆☆風属性ドラゴンモンスター。ステータス、273-68-73。
「おまたせ!」
こちらを振り向き、バチッとウィンク。なんやこのイケメン。風属性はイケメンしか居らんのか。
「ちょっと待っててね!こいつ倒してくるから!」
と言って、ニラーハラーと対峙しようとするリント。だが…
「あっ、私たちで倒すので大丈夫ですよ!」
「え…あっ、はい。」
ネロケミちゃん、容赦ない。
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