一部の人に需要がありそうなアレ

ドクロ、復活。使ったのはイシスが変化し…あれ?


「イシス、今もしかして…」


「インアーシュよ?何か問題あったかしら?」


「うげぇ…」


回生のインアーシュ、効果は前言ったと思う。男性を女性に変えて蘇生させる技…つまり。


「ドクロ…ちゃん、って呼べばいいのかな…?」


「ハッ、口調も何も変わんねぇんだ、そのままでいいぜ?」


…心なしか、声が女の人になってる。ゼノビアに似てる…??


「…じゃあドクロって呼ぶね、それから…イシス!スフクに変化!」


「ふんにゃぁ〜!」


可愛い猫ちゃんに変化したイシス。スフクは名前の通り、スフィンクスを可愛いお姉さんにデフォルメしたモンスターなのだが…おそらく最強のサモナーだ。ケモナー…にも需要がある、とは思うけど。謎に胸がでかいし。でも、とにかく、この子はサモナー。召喚が得意なのだ。なので…


「サルファ呼んでー!」


「任せるにゃ!」


…イシスが言ってると思うと可愛いな。あとで声マネしてからかおっと。


「おいでにゃ〜!」


「呼ばれて飛び出てデデデデンじゃ!」


ネタが古いサルファさん、参上。


「サルファ、ヴァンプスドラゴン倒してー!」


「任せろい!」


「えとっ、クドラクとクルースニクっ、スフクになってるうちにイシスを倒しちゃってください!」


「わかった!任せ…」


「お安いごよ…」


2人とも自信満々だったが…サルファさんが盾になる。


「この小娘を倒したくば我を倒してからにするがよいぞ、小童ども!」


「ヴァンパイアハンターがドラゴンキラーに転職するとはね…!」


「とかいいつつ楽しそうなのはどこのクルースニクだ?ヒャハッ!」


「じゃあさっきどうにかしてこのドラゴンから逃げる方法を考えてたのはどこのクドラクだっけ?」


「……………はいはい、やりゃいーんだろ、やりゃあ…ムカつくぜぇ…」


なるほど、結局クドラクはクルースニクに勝てないのか。ミウさんがペストマスクがあるのを忘れて鼻血拭こうとしてたから、こっそり持ってたクドラクのウサちゃんハンカチを渡してみる。あ、なんか悪化したっぽい。ごめんミウさん。


「ほう!3対1か、卑怯なハンターじゃの!」


私が前の世界でオンライン狩猟ゲーム中、4対1で堂々とハメ戦法とってる姿見たらどういう反応するんだろう、このドラゴン…謎の罪悪感が…


「フッ、オレもいるぜ?」


「もちろん私もよ?」


「ほう!奇しくも男パーティと女パーティじゃの!」


「ハハッ、女で居るのは慣れねぇなぁ!」


…ドクロ、なんだかんだ女体化楽しんでるじゃん。イシスも変化を解き、臨戦態勢に。磐石だが…ヴァンプスドラゴンの手前、油断出来ないぞ。


「Xya...」


「…なぁ、おめぇ喋れねぇのか?」


「…What?」


…まさか…と思って、ちょっと喋りかけてみた。


「Um, do you only speak that language, sir?」


「Sure. Actually, I've been trying to understand your language, but I've never got it, shit...」


…バリッバリの英語ネイティブだった。しかも少し口が悪い。shitって使うのやめなよ…みんな絶対使っちゃダメだよ?特にテストで、ね??


「…どーするよ…クルースニク…」


「しょうがない!通じないものは通じないんだし、諦めようじゃないか!ね!」


「ね!じゃなくてだなぁ!!指示とか!作戦とか!どーすんだよ!!」


「…なんかうるさいわね、むこう…」


「情けないのう、男ならふぃーりんぐで何とかなるもんじゃろ…」


…いや、英語はふぃーりんぐで何とかなるものじゃないから…ネイティブになれなかった場合、ほんとに努力しないと無理だから…


「しょうがない、オレが行ってくる」


「えっ?ドクロ、話せるの?」


「Excuse me, sir?」


「?」


「These two are your teammates.」


「Ah, okay!」


おおっ、普通に話せてる。やるじゃん。


「And we three are your opponents. Unfortunately... all you can choose is beaten by us.」


「…I'm curious. Why do you have such confidence in your victory?」


「That's easy. However strong you guys are, it won't be any problem. We'll win the game, that's it.」


「......Okay, okay. We can be good "friends!"」


……すげぇ、めちゃくちゃ煽ってる。というかドクロがハイスペックすぎてつらい……


「なんて言ってるんですか…?友達になったにしては…その、ピリピリしてますけど…」


「あー…なんだろう、友達って言うより、戦友?みたいな感じかな?」


「ああー…」


「Hey, Skull! Don't steal my enemy!」


「Sorry, Sulfur!」


…サルファも話せるんかーい。イシスが混乱してるからそろそろやめたげて…


「と、とにかく!あんたら2人は私とドクロが相手するわ!」


「お、おう!」


「やっぱりドラゴンキラーは性にあわないよ!さぁ、クドラク!楽しもうか!」


「何でおめぇはいっつもそんなにヘラヘラできんだよぉ…はぁ…」


「ハハッ、この程度で怖気付いてちゃ…主さんと旅なんか出来ねぇぜ?」


「んな…っ」


「気楽にいこうぜ?どうせなら、主さんの前でかっこいい姿でも見せてやったらどうだ?」


「〜〜っ!!」


「…顔真っ赤ねあんた…ご愁傷さま…」


ミウさんもクドラクも顔真っ赤なんだけど…クルースニクはそれを見て笑ってるし、仲良いな、あんたら…


「ほれほれ、そこのドラゴンが殺気立っとるぞ?さっさと始めんか!」


サルファさんがみんなの注意をひく。みんな持ち場に戻り…さて、ようやく戦闘再開かな。


さて、時を同じくして、ベルゼブブvsネロケミちゃん、マルドクvsナタタイシは…決着がついたらしい。よし、ちょっとそちらにフォーカスしてみようか。


「チビは寝てなァァ!!」


「わわっ!あぶない…」


ネロケミちゃんの体力は84。緩衝溶液で半減させたとしても、168までしか受けきれない。しかし…ベルゼブブは200近いダメージを平気で連打してくる。そうなる前に倒したいが…そうは問屋が卸さない。いや、そうは魔王が許さない、だろうか。


「キヒヒッ!逃げてばっかだなァ!つまんねぇガキャくたばれェ!!」


「いぅぅ…っ…!」


あー…あれは、魔王の一撃。広範囲を攻撃する技だ。逃げ場がなくなったネロケミちゃん、詰んだかなぁ…さすがに逆転のシナリオが見えてこない。






のままなら。




「パン、ドラ、さぁぁん…!!」


「はいよ〜っ、クラスチェンジだな〜?」


「はいっ…!」


クラスチェンジ…レベルアップに伴い別のモンスターに変化することだ。変化より、進化というのがいいかもしれない。


「…よしっ、成功だ〜!どうなっちまうかと思ったぜ〜」


…クラスチェンジ失敗したことないだろ…パンドラ…


さて、これでネロケミちゃんが☆☆☆になった。名前は…


「私はネロケミストリ、化学の徒です!」


ネロケミストリ、☆☆☆水属性魔法使いモンスター。黒いスライムだった体は、5頭身程の大人の女性の体になり…ぶかぶかな白衣もきっちり着こなしている。体色とおなじ真っ黒な髪はポニーテールにしていて、長さは背中の真ん中くらい。ツヤッツヤでサラサラ…見とれちゃうくらい綺麗だ。上下共に真っ黒な服を着ていて、白衣は膝下位まであり…黒い革靴と黒いズボンとのコントラストが眩しい。右手には指の間に試験管を挟ませていて…親指と人差し指の間、人差し指と中指の間、中指と薬指の間、薬指と小指の間の順にそれぞれ赤橙色、青白色、濃青色、赤紫色の試薬が入っている。左手は白衣のポケットに忍ばせていて…うん、ポーズがかっこいい。ステータス…は、どうやって見るの??


「仮面の横に見るとこあるだろ〜」


「…あ、ほんとだ…」


「えっ?ヒビカさん知らなかったんですか?」


「知らないよ…こんなのあるなら最初から使えばよかった…」


今まで出てきたモンスターのステータスは全部覚えてたからよかったけど…今後忘れてるモンスターがいたらこれ使おっと。スライド式の小さなスイッチをオンにする。すると…


「うわ、強っ…」


なんとダメージ表示までできる、スグレモノだった。ええやんこれ。しかもチムメンの登録、切り替え…色々見れちゃうし、設定もできちゃう。便利だなぁ…


さて、ネロケミストリ…でも、長いしネロケミちゃんでいいや。ネロケミちゃんのステータスを見ると…168-68-78。


……いやいや普通に強すぎないか?HPは仕方ないとしても、☆☆☆でAt68とSp78を兼ね備えてるのはエグすぎる。魔法使いってこんなもんだったっけ…?


「…ふーん、やるじゃん…?」


おっ、ベルゼブブがイラついてる。倒しきれる自信が無くなったのかなぁ。


「さぁ、魔王さん!勝負です!」


「はいはい…ダルいなぁ…」


…あっ、なんかハイテンションからローテンションになってる。一定時間限定とかなのかな?


「まずは…ふぅ…んくっ、んぐ…」


試験管の溶液を全部飲み始めたネロケミちゃん。これ、☆☆の時のEX技「過剰投与」だ。通常コマンドで使えるようになったらしい。性能は変わらず、☆☆の上位EXと重ねがけすると即死してしまうが…実は、下位に限り1度だけ重ねがけ出来るのだ。これにより、実質上位EXを1回使うのと変わらないバフがかかる。


「悠長に呑んでて…いいのかなぁ…おチビさん?」


「んぐぐ…えいっ!」


ゴクッ、と一気飲みしてから、エレメントグラスを放つ。魔王の一撃がネロケミちゃんを襲うが…相殺された。彼女のステータスは現在底上げされたため、218-108-118になっている。もはや体力以外はバケモノだ。この状態で使うエレメントグラスは…全弾最低倍率でも259、全弾最高倍率だと…驚愕の691。これは、ドクロが自身の上位EXでバフ掛けをした状態で、彼の最高打点であるソウルミンチを使った時のダメージ期待値より少し多いくらい。なんとまぁ、あんなにかわいかったスライムがこんな化け物になるとは…


「あーあ、間に合わされちゃった…よっと」


「くっ…!早いです…!」


しかしさすがは魔王、相殺を読んでいたのか…慌てもせずに直ちに掌を握りつぶすようにして、試験管の軌道上に現れた黒い魔力球、ダーク!!!を爆発させる。それに加え、杖を投げ上げ…カツン、と地面に突き刺さると同時に、杖の先端に飾られた宝石…を咥えるようにあしらわれた髑髏型のオーナメントの目玉が光る。すると直ちに、ネロケミちゃんの四方から魔法陣が現れ、中からドウン!!!の魔力結晶が突き刺さる。緩衝溶液をかけて半減に抑えても、この量を喰らうとなると…これはホントに苦しいぞ…


「…まァ、オレ魔王相手に、単騎で挑んで…ここまでやったンなら、及第点、ッてとこじゃない?」


「っ!私の負けを前提に話さないでください!」


「いや…仮にも魔王がサ、こーゆートコで負けッと…さすがに傷つくンだよ、ねぇ…!」


「…っ!いだぁ…っ、く…いいえ、痛くなんか…ぁ…っ」


杖にため込んだドウン!!!をおとりにして、ベルゼブブが自身の掌に溜めておいたドウン!!!!を、ネロケミちゃんの足元へ放出。その隙に同じくためておいた最大出力のダーク!!!!がネロケミちゃんを襲い…魔法を封じる状態異常、沈黙状態になってしまった。このダメージは、☆☆☆☆でも受けきるのがきつい量だ。そろそろ退場するだろう。


「……ふぅ、痛くして、ゴメン、ね…」


「…ぅ、ぅっ…」


「でもサ、負けないと、育たないよ」


「……っ…!」


「………あ、最後の、痛くないって、踏ん張るの…カッコよかったよ」


「はい…っ、…ありがとう、ございました…」


デレゼブブの微笑みに見送られながら、ネロケミちゃん、退場。彼女にとって、実はこれが人生初の負け。それもそのはず、私と会うまで戦ったことなんてなかったんだから。そう考えると…よくムウスを倒せたよなぁ…


「じゃあ、オレは…アイツのヘルプに…あれ?」


けだるそうにマルドクのほうへ歩き出すベルゼブブ。しかし…二人が見当たらない。


「どこ、いった…?」


じゃあ、ちょっと振り返ってみよう。











さっきナタタイシとマルドクがお互いの武器にお互いの属性をまとわせていたころまで戻ろう。


「さっきは残念だったなぁ?ようやくまともに戦えるぜ…!」


「ふっ、仏様の使いがバトルジャンキーだなんて知らなかったよ!」


「かくいう王子が血に飢えてるなんてのも初耳だぜ?」


「ははっ、否定できないね…!じゃあさ、そろそろ始めようよ!」


「おうよ!」


その声を合図に、マルドクが一瞬で間合いを詰める。ナタタイシのSp68は決して低くはないのだけど、95に勝てるはずがなく…


「結局一撃で終わっちゃうんだけどさっ!」


「そうかい、つまんねぇなぁ…!」


当然のごとく、疾風の一撃に刈り取られ…るほど甘くはない。


「甘いぜ王子!混天綾っ!」


スカーフが帯電し、剣に絡みつき…剣を通じてマルドクにダメージを与える。


「くぅぅ…効くなぁ…っ!」


「ま、どのみち火尖鎗の餌食だったけどなぁ?」


マヒした隙をついて、先ほどのラフロイグ戦でも見せていた火尖鎗・改の準備をする。少し振りかぶって、うずくまるマルドクへ放たれたその一撃は…まさに仏の罰。耐えることは難しい…が、風属性相手なので多少ダメージは軽減されるし…


「ヘッヘッヘッ、ぬるいぜ…!」


「…やっぱそうなるよなぁ…!」


狂王になることで、HPが底上げされたから…余計に効いてない。ナタタイシが突いた槍を、剣の切っ先で受け止める。さりげなくすごい技術が求められる技を使うあたり、メソタニア軍の剣の指導のレベルの高さがうかがえる。


「どこまで耐えれンだァァ!?」


「どこまででも耐えてやらぁぁぁ!!」


マルドクの狂風の乱撃に合わせて、乾坤圏を連打するナタタイシ。しかし、乾坤圏は手首に一つずつしかないわけで、当然足りなくなってしまう。




なので、増やすことにした。




「チッ、しゃーねぇ…!どぉらっ!」


「うおっ?!ンだそれは…ッ!!」


斬撃を紙一重でよけながら…風火二輪に乗る。一気に加速しつつ、マルドクの周りを円を描くように走り回り、かと思うと急にスリップをかけて……


「喰らいやがれぁ!乾坤圏・改っ!」


「ッ痛ァ…!!」


そのままバックフリップ。すると、ふしぎなことに…タイヤが複数に分裂して、紫に光るエネルギー体、乾坤圏に。そのまま回転の勢いで風火二輪から飛び出た無数のタイヤが、マルドクを襲う。ナタタイシが着地するころには、ちゃんともとのタイヤに戻っていて…ビタ着した。恐ろしくきれいな着地、BMXだったら高得点間違いなしだね。


「ちょこまかァ…しやがってェェ!!!」


「うおっ?!嘘だろ…ッ!」


しかし、マルドクのイカレ具合は尋常じゃなかった。風を剣にまとわせることで、リーチを長くしている。ナタタイシの火尖鎗と同じ原理だ。その剣をぶんぶん振り回して…よけきれなかったナタタイシの頬やバトルスーツにいくつも切り傷ができる。その傷口に剣にまとわりついている風が吹きこむことで、馬鹿にならないダメージが通った。


「く…ここまでイカレてるなんてな…ッ」


「テメェも…なんださっきのバイク…!聞いてねエぞ…!」


「手の内を明かすほど…馬鹿じゃ、ねぇ…ッ、ガハッ…」


「限界なンだろ…ッ、ハァッ、ハァッ…」


「お互い、な…!」


お互い瀕死の状態だが、根性だけで立っている。ただ、なぜだか…二人とも、笑ってる。すごく、楽しそうに。


「次で、最後だ…」


「チッ、楽しかったのによ…ッ」


「…ったく、こんなイカレ王子の相手なんか、二度とご免だ…」


「じゃあ…いくぜェェェ!!!」


雄叫びをあげながら、二人が突進。もう風火二輪は使わない。武器を後ろに構え、力をため……


「クックック……!ようやっとおでましだ……!探したぞ、サク……あれ?」


「「どけやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」


「ッ?!汚いゴミ虫は消え……」


「「ぬぁらぁぁぁぁ!!!!」」


爆風と劫火がぶつかり合い……なんかかわいそうな人と一緒に……ナタタイシとマルドクが退場した。




……………………やっぱり、この世界にはシリアスというものがないようだ。

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