煉獄の覇者
さて、アスモデウスとマーリンが倒れ…残るはラフロイグとアレス、それにマクラ。
まず決着がついたのは…当然というべきか、マクラのところ。エンキ、クフリン、アーサーが対応していたが……
「クソ…ッ!てめぇらぁ…!許さねぇぞぁぁぁ!!!」
「クランっ!何やってるんだ!!早く戻ってこいっ!!」
「クフリン、額のダークマターの破壊を優先しろ!クランの体が持たない!」
「ごちゃごちゃぬかしやがってぇぇ!!オレは…オレはぁ…!!アレスを救いたいだけなんだよぁぁぁぁぁ!!!」
マクラ、暴走。あちゃー、あれは…「リバース・ファランクス」だ。「ダーク・ファランクス」の上位技で、トランス状態になって毎ターンAt250%の単体攻撃をする代わり…被ダメージが倍増してしまう、諸刃の剣な技。
「愚策ですな…哀れな方でございますなぁ!」
「っお?!チッ…ちょこまかしやがって…!」
エンキの疾風の乱撃がヒット。目にもとまらぬ速さで、マクラを3度斬りつけた。本当にメソタニア軍の剣技にはほれぼれするなぁ…
「よし、お二方!決めて下され!」
「あぁ、アーサー!行くぞ!」
「ふっ…たぁぁぁ!!」
「んぎ…ッ、やめろ…ぉぉ…!!」
パリィン…ッ
ダークマターが砕け散る。姿はまだマクラのまま変わっていないが…おそらく、しばらく放っておけば大丈夫だろう。というか、こいつも狂王みたいにマクラモードと重装騎士モードを使えたりするのかな…?
こうして、呆気なくマクラが倒された頃。お隣のアレスはというと…
「ウィンド!!!」
「プロペラソーード!!」
「いざ尋常に!でぇやぁ!!」
…なんかボッコボコにされてる。あれ?なんで攻撃しないの?
「ネルガルさんが最初に剣を使って、ストレートフラッシュを反射してらっしゃいましたよ?」
「…はい??」
いつから物理反射を覚えたんだ…ま、まぁ刀身を鏡にしたってことね?そういうことなんだね??
「…でも、なんか単調ですね…」
「まぁ、ハメ戦法ってこんなもんだから…」
煉獄帝は基本暗闇状態にしてしまえば置物と化すからな、討伐がかなり楽になる。そこに弱点の風属性技と、高火力のバルトを合わせると…
「おや?」
「フン、もう終いか…」
「呆気なかったな…」
……容赦ねぇ。騎士道精神はどこへ…?
こうして。煉獄の覇者、アレスは一撃もエンリル、ネルガル、バルトに当てることも出来ずに退場したのでした!
「こんちくしょぁーー!!余所見してんじゃねぇ!!」
「わ、わかってっけどぉ…っ!んだよアイツらぁ!!オレ達が真面目に戦ってるのは何なんだよぉ!!」
最後に残ったラフロイグ陣営。ここは結構長引いているな…それも仕方ない、だって…
「硬すぎんだよこのやろぉぁぁ!!!」
そう、体力が高すぎる。前の世界じゃそんなにタフじゃ無かったけど…どうやら強化されてるのか。
「ハハハハハッ!格の差を思い知ったかァ!!!」
「キサマァァァァァッ!!!!」
「弱い弱い!弱いぞぉぁぁぁぉぉぁぁ!!」
ムウスはダークファイアを使ったが…ラフロイグの炎にかき消される。邪帝と魔王だと、本当に格の差が大きいな…
「フン、使えぬ配下が多いものだ…!やはり雑魚は雑魚を呼ぶのだなぁ!ムウスよ!」
「キサマァ…!決死の覚悟で特攻した配下に…その言い様か…っ!」
「配下など居らぬわ!全て我が復活するための贄に過ぎん!アレスは器に相応しくなかった!やはりこの体が至高である!!」
……これは、かなりの悪役だなぁ…ファントム、とことん煉獄の覇者に固執してたんだなぁ。つまりはラフロイグも器、って奴だったのかな?ファントムが憑依できる体…その最高品がラフロイグ、ってことなのか…
……もはやファントムとラフロイグ、どっちが本体なのかも分からなくなっちゃったよ…
「…ふーん、さっきから黙って聞いてやってたけどさぁ…正直腸煮えくり返ってクッソ胸糞悪ぃんだよ…!」
「ほう!まだ立つか、面白いなぁぁぁ!!!」
ウォーターブレイクを使ったラフロイグ、太陽を思わせる火球がナタタイシへ飛ぶが…
「火尖槍ぁぁぁぁぁ!!!」
「っな!?」
火尖槍の先端から…ライトセーバーのように細く、長い火柱が上がる。横にひと薙ぎすると…火球が消えた。
「亡霊さんよ、俺様には分かんねぇなぁ…テメェのやり方も引き込み方も…!!」
「………」
ナタタイシの尋常ならざる雰囲気を感じ、ラフロイグがおし黙る。
「誰がテメェを赦すだろうなぁ!?テメェの悪行はしかと見届けたぁ!!天界にあられる天帝の遣い、哪吒太子様とは俺様の事よ!!その報い、今ここで…!!」
…ナタタイシがプッツンしちゃった。いや、このゲーム天帝も如来様も四海の南方にあられる観音菩薩さまも居ないからね…??
「晴らせぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
羅車で強化した火尖槍・改がラフロイグを襲う。鎧に細かな傷がいくつもつき…
「クドラク!!やれぇぇぇ!!!」
「…ッ!アイツが使ってねぇのによぉぉ…!!超ぉぉぉムカつくなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ガションッ、と小気味よい音が私とミウさんの間からする。お、EXゲージだ。満タンになってる…これは、使えってことかな?
「ミウさん、押してみたら?」
「は、はいっ!クドラクのEXだ…!えい!」
縦に10個並んだ緑の球状のEXゲージを、ケースごと一気に両掌で上から押しつぶす。すると…蛍のようにゲージがクドラクへ流れ、瞳に宿る。クドラクのEX技、「ナイト・スタンピード」…これは上位のEXだから、「ミッドナイト・スタンピード」だ。これは、数ターンの間、任意の鳥獣、獣、幻獣モンスターに変化し…少しステータスを強化する技。何になるんだろう…
「くそ…っ!いっつもいっつもヘラヘラしながらオレと戦いやがって…!!なのに…さっきの必死な顔は何なんだよ…ッ!!オレなんかは楽勝だッてのかよ…ッ!!!」
クルースニクへの不満だろうか…負の感情をぶちまけるクドラク。それがトリガーになるのかな?
「ぬぁぁぁぁぁ…!!ランダァァァァァァ!!!!!」
目を血走らせ、絶叫。手に持ったワイングラスを力任せに握り、割ると…直ちにグラスの中の液体が輝き、エネルギー体となって奔流し…クドラクを包み込む。ペ〇ソナでモブキャラが敵に変身するときと似てるかも。
「ナハッ、クドラク…おめぇ、なかなか根性あんじゃねぇか?」
ナタタイシも思わずにやり。うわ、イケメン。
光が収まると…現れたのは、四足歩行の、黒いもふもふの毛並みが特徴の、狛犬のようなモンスター…鬼獣ランダ。☆☆☆☆火属性幻獣モンスター。ステータス、252-78-52。目玉は中の黒目が玩具の人形のそれのようにカラカラ音を立てていて…口からは象牙のように湾曲した、白い極大牙。黒い体色と相まって、よく目立つ。
「リャァァァァァァァァン!!!!!」
「っが?!この声…っ!」
ラフロイグがよろめく。そういえば、この世界では…ランダは破壊神マハデーヴァの眷属だったな。破壊神がランダをお供にしてボスになったことがある。つまり、ランダの咆哮は破壊神の気功みたいなものが混ざってるってこと…なのか?それでラフロイグがよろめく…と、推測。合ってるかは、本人に聞いて見なきゃわからない。マハさんいつ会えるかなぁ。
「よおぉし!破壊神の眷属なる獣よ!我が焔をくれてやる!ヤツを燃やせぇぇぇ!!!」
ムウスがダークファイアを用意し、ランダに纏わせた。あ、魔王が言ってんだしやっぱ眷属であってたわ。にしても…ランダかぁ。焼かじりという固有技があるんだけど、これが文字通り超火力技なんだよね。火属性がついた必殺の一撃、つまり…Atの2.5倍の値のダメージを与える技なので、水属性以外には中途半端なダメージにしかならないラフロイグのウォーターブレイクとは違って、火属性の通りが弱い相手にも安定したダメージを与えられるのだ。純粋単体攻撃を使うなら、正直ラフロイグよりもランダの方が、作成がお手軽で強いかなぁ、というのが私の感想だ。
もちろん、ラフロイグの方が好きという意見もあるし、無理に押しつけはしない。腐っても煉獄の覇者たるラフロイグの魅力がもふもふに負けることは………あれ?ないとは言えないぞ??
閑話休題。
ムウスの黒い炎を纏ったランダは…なんだかすごくかっこいい。ギョロギョロ動く目玉に合わせて、炎がおどっているようにも見える。ランダって、たしかもとは東南アジアの島の伝承にある破壊の魔女の名前からきていたから…たしかに、破壊の権化にふさわしい姿になったな。
「リャァァァァァァァァ!!!!!!」
「っぐ…! この、犬がァ…!!」
「その犬に負けるんだよテメェはァァァ!!!」
ナタタイシが煽る。いいねぇ…これは焦るよ…
ランダになったクドラクは…吠えるたび、まとわりつく炎が黒くなって、おどろおどろしくなっていく。ラフロイグはもう完全に金縛りにあったように動けなくなって…
「アゥッアゥッ!!」
「…ッ!バカな、我が身が…!燃えている…ッ!!」
ランダにかじられたラフロイグ。噛まれたところから…黒い炎がどんどん広がり、ラフロイグを包んでいく。そのまま、鎧が燃え…肉体が燃え…
「…っ!!」
あ、ファントムが出てきた。黒ひげ危機一髪みたいにしゅぽーんってすっごく勢いよく。
腕を使って着地して、体勢を立て直そうとするが…
「えいっ!」
「〜〜!!!」
あ、ファントムが怯えだした。ネロケミちゃんが苦手…というわけじゃなさそうだ。じゃあ一体…?
「よし、捕まえたわ…覚悟はいいわね?」
「〜!〜!!」
エレメントグラスを被弾して倒れたところを、イシスに捕まったファントム。イシスにどうやら怯えているらしいが…?なんでだろ?
「さぁ、蘇生される準備はいいわね?いいわよねぇ、こんなにたくさん命を奪ったんだもの…ね?」
「…!!」
…あー、なるほどね。それが嫌なのか。
「あの、ヒビカさん…なんで怖がってるんですか?」
「回生のインアーシュ…っていえば分かる?」
「あっ…はい」
ミウさん、察した様子。回生のインアーシュ、この技は…味方一体を蘇生させる技。ただし…男性は女性に変えて蘇生させるのだ。
「…それであんなに怖がってたの?」
「…なんか、煉獄の覇者って…ちょっとかっこ悪い…ですね…」
あっファントムがショック受けてる。しゃーないよ。それかいっその事女になってみる?意外に楽しいよ?先輩からのアドバイス。
「イシスー、さすがにやめたげて…ファントムいずれ使いたいし…」
「…でも、さすがに罰くらい与えたいわよ…」
うん、よーくわかる。確かに許すべきじゃないことをしたし…でも、
「リチャーズバーンが癖強くて使いにくいからもうそのままでいいと思う…」
「…下方修正の話じゃないわよ…」
あれ、違うのか。罰っていったらそんなもんしかなくない?
「あの…ひとまず敵は倒しましたし、解散でいいのでは…?」
「私疲れちゃいましたよぅ…」
「わかったわ、帰りましょ!」
ネロケミちゃんに甘すぎるイシス。ほんとに駄女神って呼ぶぞ…??
と、その時。
「あでっ」
何かが降ってきた。いや、何かじゃなくて…
「人だ…」
「人ですね…」
うん、人。それも…仮面をしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます