罪深き純愛と氷獄の園
さて、3箇所で戦いが起こるとどれを見ていればいいか分からなくなりそうだけど…そうでもなかった。まず、アスモデウスのところ。おともとしてドラキュラがいるが…
「デーモォォォォオン!!!」
「……!」
デーモン。☆☆☆土属性悪魔モンスター。ステータス、273-73-31。前の世界では知名度ワースト1位くらいだったんじゃなかろうか、というレベルで誰も使っていなかったような気がする。結構凶悪な技があるんだけど…
「ワシにデモン・インストールを使えぇぇ!!!」
「すすす全てててててははは、アスモデウスささささささ様の意志のままままま」
…やべぇ、喋り方超怖い。この世界じゃこんななの??
さて、デモン・インストールとは…指定した味方一体について、Atを1.7倍にするかわり、トランス状態にする技。1.7倍…馬鹿にならない上昇量だ。そこらへんの味方強化系のEX技並の性能である。
「ハッハァ!いいぞいいぞ!気分がいいぞぉぉぉ!!!」
トランス状態になって興奮してるアスモデウス。ボゴオンッ…、声も顔もいいオッサンなんだよなぁ…なんだかちょっと怖い…
「あーあ、気持ち悪いなぁ…よっ」
「ぬぁぁ!いいぞいいぞぉ!もっとよこせぇぇ!!」
うわ…ベルゼブブにダーク!!!!喰らって悦んでるよ…ガチのMになったのか…気持ち悪い…ネロケミちゃんの目を隠してあげる。ミウさんはこういうの平気なのかな?と思ったけど、クルースニクに夢中だった。クルースニク、ホワイトプロテクションによってドラキュラの攻撃を半減させて何とか戦っているが…これはかなりきついぞ…?
「げほっ、ゴホゴホッ…」
「ドクロさん!?」
「気にすんな!ドラキュラの前で気ぃ抜くとやられるぞ!」
「はいっ!この…止まれぇぇ!!」
拘束のステイクを発動。お、ドラキュラが麻痺ったぞ。このまま押し切れそう…ボゴオンッ…と思ったが。
「じじじじじじ邪魔ままままな輩ららは、消ええろろろろろろろ」
「っぐ…!まずい…!」
デーモンの毒のツメ!が効いてしまった。水属性のクルースニクにはそこそこ大きなダメージになってしまう。
「まだ抗うか!ならこれで現実を見るがいい…!」
ドラキュラがマントを広げる。すると…恐ろしい量のコウモリとともに、必殺の一撃…の時に放っている魔力球が…ボゴオンッ、ボゴオンッ…数え切れないほど、ベルゼブブ、ドクロ、クルースニクへ襲いかかる。
「あちゃー…マズくない…?」
「ハハッ、白い兄ちゃんには悪ぃが、オレはここまでかな…」
「潔い、だが…もう遅いッ!!」
一斉に放たれる魔力球とコウモリ。これは…ボゴオンッ…ほかから助けを呼びに行くか…?
「ヒビカさん、どうしましょう!?皆やられちゃいます…!」
「…うーん、ところでさ…さっきから聞こえるボゴオンッって破壊音はなんだろう?」
「ふぇっ?あ、そういえば…っ!大きくなってきてます!」
「ここの部屋に向かってる…おわぁ?!」
ボゴオンッ!!
「XYAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
「何だ…ぬぉぉ!?」
「どうしたドラキュ…かほっ…」
「いいいいいいいいいいいいい痛、痛痛痛痛痛いいいいいいいいい………」
ドサッ、ドサッ…ドサッ。
クルースニク、ドクロ、果ても普段は無感情なベルゼブブさえも…ぽかーん。
壁を突破ってきたのは…
「あーっ!ヴァンプスドラゴンさんですーっ!」
すごく場違いな明るい声。ネロケミちゃん正解。吸血竜ヴァンプスドラゴン。ステータス、346-89-47。ドラゴン族では珍しく、単体攻撃が主流のモンスターだ。体色は、ちょうどミウさんの服に似ているかな。紫色と黒が貴重になっていて、筋肉の盛り上がった部分は、縁が血のように赤く波打った形の模様が特徴的。翼は前脚と独立していて、羽ばたくと言うより滑空する為のものだ。同じく血赤色の薄い翼膜は最小限の面積しかないが…飛行能力は十分だ。
そんな見た目のカッコイイ吸血竜、王城の壁をどこからか突き破って…背後からドラキュラに噛み付く。そのまま、屈強な前脚と大きな爪でアスモデウスの首根っこを掴み、圧迫。とどめに、ぶっとい注射針のような仕組みになっている鉤爪型のしっぽの先を、デーモンに突き刺して…血を吸っている。やっぱり、ドラゴンの力は恐ろしいな。ドラキュラが出していた魔力球やコウモリたちは…ヴァンプスドラゴンが放っていたダーク!!!の魔力球にかき消されていた。すご…ドラゴンってこの世界では別格の存在なのかな?
「遅うなってすまなんだ、ご主人!」
「あっ!サルファ〜!」
ヴァンプスドラゴンが破壊したところから出てきたのは…バビロア王国に居たはずのサルファ。姫2人は…?
「向こうには助っ人が来たからのう、そやつに任せておる」
「そやつってどやつ?」
「ヒミツじゃ」
ヒミツかぁ…でもサルファが任せるならよっぽとだろうなぁ。じゃあいっか。
「………この声…女だな…?」
あっ、まずい。アスモデウスが…EX技を使いそうだ。これは…
「サルファ!逃げて!」
「うぬ?何故じゃ?」
「アスモデウスが!」
「ほう、パラス・アモルじゃな?」
パラス・アモル。アスモデウスのEX技だ。EX技には上位と下位があって…これは下位。上位だと…罪深き純愛という名前になる。ぶっちゃけ、パラス・アモルはただの全体物理攻撃だからそこまで警戒すべき技ではないのだが…場に女性が居るとなると、話は別。この場合のみ…「無性別である敵モンスター全員を魔法で攻撃。女性である敵モンスター全員には何もしない。男性である敵モンスター全員を即死状態にする」という技に変わる。つまり、サルファが居ると…ここにいる男モンスターが全員退場する…はずなんだけど…?
「我は無性別じゃが?」
「えっ?女の子じゃないの?」
「戸籍上は無性別なのじゃ!」
…何その便利なシステム。
「じゃあこやつを黙らせればよいのじゃろ?ほれ!」
「あっ…」
なんだか青と銀のブレスが吐かれた。アスモデウスさん真っ黒焦げになっとる…何このブレス??
「ブルーシルバーブレスじゃ!」
聞いたことない。絶対ゴルドラからインスパイアされたな…
……いや待て、ブルーシルバーってことは…水と雷の複属性なのか?じゃあ…
「ガッチガチの対土属性技じゃん…」
「そうじゃが…そうか、アスモデウスは土じゃったのう」
いや忘れてたんかーい。
「こほ…っ、私…は…」
「しつこいぞっ!」
まだ生きてたドラキュラへ容赦なく退魔のステイクが突き刺さる。ドラキュラは無数のコウモリに姿を変え…退場。デーモン、アスモデウスも退場したっぽい。ドラゴン様様だ。
「ハハッ、命拾いしたな?」
「……殺りたかったのになぁ……ちょッと加減知らなさすぎじゃない?」
「あやつが貧弱すぎるのが悪いのじゃ」
「ん…まァ、それは認めるけど…」
…サルファ一体でよかった気がする。
さて、他もいい感じに荒れてるっぽいな。
アレスのところ。大勢たかっていたのだが…ファントムが突如出現、クランにダークマターをつけてしまい…魔装騎士クランへと堕としてしまった。☆☆☆☆水属性戦士モンスター。ステータス、294-73-26。
余談だが…魔装騎士クラン、別名マクラはサンドバッグとして名高い。iOS版オレカバトルアプリで、第4章で自チーム☆合計10~12で出現する最初のボスなのだ。経験値がおいしく、またEX技「ダーク・ファランクス」の使用により被ダメージが1.5倍になることから、討伐が比較的スムーズに終わると周回に人気だったのだ。多くのバトラーは数えきれないほどのマクラをサンドバッグにしたことだろう。ちなみに私もたくさん殴った。ダメージ表示がカンストすることもあった。無被弾で1ターン討伐することもあった。おそらく累計700回は討伐したんじゃないだろうか…
閑話休題。
そんなマクラへの対応を買って出たのは、アーサー、クフリン、エンキだ。残ったエンリル、ネルガル、バルトがアレスを担当。
一方、マルドクはというと…
「おわっとと!なんだコレ!」
突如現れた氷の壁により、一人隔離された。今は王子に戻っているようだ。
「ぼぉるぅがぁのぉぉぉぉん!!」
イシス、かわいらしい赤ネズミの魔法使い、赤魔導ミミに変化。熱属性魔法で氷を物理的に溶かした。ややこしい。
さて、こんな氷を使えるのは…
「愚師に代わり、私が相手をしよう。王子よ。」
悪魔導士マーリン、☆☆☆☆水属性魔法使いモンスター。ステータス、210-73-89。紙耐久の代償として高いSp、優秀な補助技を持った魔法使いの典型とも呼べるモンスターだ。額から逆巻くように生えた二本の角が特徴で、わりに女性的な顔立ちだ。一応、男らしい。
「キミは…誰だっけ?」
「…………………ふんっ」
「わわっ?!ちょっと!私は関係な…あっぶないわねぇもぉぉぉ!!」
イシスがモーモー言ってる。いくら牛の真似をしたって胸からミルクなんて出そうにないのになぁ…合掌。あれ?なぜか足元に水たまりが…
「くそっはずしたぁ!もう一回よ!マジュ…邪魔するなそこのキザ男ぉぉ!!」
「オレ!?」
「アンタは金髪王子よぉ!!!こいつとっととシメるわよ!!」
「お、おう!」
わー、イシス地獄耳。しょうがない、癒しをあげてやろう。
「ネロケミちゃん、魔法使い対決してくる?」
「あ、はいっ!いってきます!」
「あー…プニプニが…」
…ミウさん、ネロケミちゃんのこと気に入ってくれたのはうれしいけどプニプニって呼ばないであげて。ネロケミちゃんがずっこけたから…
「ほう、三対一とは苦しいな…」
「その割に余裕そうだよね?キミ」
「…王子を前に隠し事はできぬ、か…ならば!」
細かい氷の針を連射するマーリン。「氷芽の矢」だ。使用後再行動が可能になるこのコマンドは、リールがないこの世界線においては実質マシンガンみたいなものなのか。なるほど、賢いな。
「チッ、鬱陶しいわね!」
「イシスさぁん!お待たせしましたぁ!」
ネロケミちゃんが緩衝溶液をぶちまける。これで、受けるダメージが減るが…
「マルドクさん!罠があるので気を付けてくださいっ!」
「うっ…マジか、ありがとう!」
「…小娘と侮っていたが、鋭いな…」
「なので、魔法で行きます!てい!」
エレメントグラスが発射される。マーリンは体力が低いので、かなり致命的なダメージになってしまうが…
「だが、私の素早さを侮るな!」
Sp89は伊達じゃなかった。軌道を読み、すぐに回避。ほう、地面を局所的に凍らせて…スケートの要領で靴のエッジを使って移動しているのか。カーブすると裾の長いローブから足首がちらり。これファンは垂涎ものだろうなぁ。じゅるり。
「それ、オレの前で言っちゃうんだ?」
「くっ…!」
だがここには全モンスター中2位タイのSp95がいる。当然、追いつけちゃうわけで…
「よっと!」
逆手に持った長剣で胴体を一薙ぎ…できなかった。
「先程の助言を聞いていなかったのか?」
「うっそ?!痛ぁ゛!!」
「金髪脳筋王子に改名させてあげるわ!ったくもう!」
「ご、ごめん…いてて…」
イシスの回復でなんとか体勢を立て直すマルドク。今のは…マーリンの代名詞たる、「氷花の罠」。一度だけ、物理攻撃に対して氷属性攻撃で自動反撃するコマンド。マルドクには効果覿面だ。
「魔法を使えば怖くありませんね!イシスさんっ!」
「人使いの荒さがヒビカに似てきたわよ、ネロケミちゃん!」
おやおや、これは嬉しいことだ。イシス、受け入れなさい。
「たぁー!」
「マジュラぁ!」
「それはさっき見た…っ?!」
「にひひー、捕まえたよ…?」
避けようとするマーリンを後ろから羽交い締めにするマルドク。…味方の攻撃ってどうなんだろ?効くのかな?
「ダっ、ダーク!!」
闇属性魔法で対抗するマーリン。杖を片手で回転させて魔力球を何個も放出しているが…マジュラがうねり、分岐して…かき消してしまった。
「っな…!王子、まさか…貴方が人を盾にしようとは…」
「…じっちゃんに盾にされてるネルガル見てたらやりたくなっちゃってさ…」
……エンキさん。あんたEX技使うの控えめにした方がいいよ。王子が悪影響受けてっから……
あっ、エンキのEX技は味方を強化し、加護状態にして自らを庇わせるというもの。つまり、エンキの盾になる代わりに強化してあげようというものなのだ。なかなかに鬼畜。
「…ははっ、まだまだ…だったな…」
マーリン、退場。
さて、あと2箇所はどうかな〜?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます