この物語はストーリー準拠ですが、ストーリー準拠とは限りません

「はぁ…はぁ…しぶといわね…」


「…降参させてくれなかったくせに…」


あの後、たっぷりマジュラされた私。言ってなかったけど、マジュラというのはイシスのメインウェポンである水属性全体魔法攻撃だ。強化版が、水撃のマジュラ。実は、マジュラってアラビア語で水の流れって意味があるらしく…あれっ、これもしかして例のアレエンプレス議員構文じゃないのか?


「あの、ヒビカさん?ハンカチいりますか?」


「あ、ありがとうミウさん…ん!このハンカチウサギ柄でかわいい!ミウさんの?」


「クドラクのです!さっき借りました♪」


「あっ!!そういえばオレのウサちゃんハンカチがない!!」


「「「ウサちゃん…」」」


「な、なんだよその目ェ!!ウサちゃんハンカチの何がわりいんだよ!!」


「まぁまぁクドラク、ホワイトプロテクション!」


「今それはやめろぉ!!余計に痛いんだよぉ!!」


あれ?おかしいな、ホワイトプロテクションはダメージを軽減させてあげる優しい技のはずだけど…なるほど、優しさは時に人を傷つけるのか。


「で、だ。ヒビカ、こいつらをどうする?」


「あ、ネルガルさん!じゃあ…倒しちゃいましょう!もうめんどくさいし!ムウスさーん!」


「ハッハッハッハ!誰だ、死の報いを欲する愚かな雑魚はァ!」


「あいつです、むうすさん!」


明らかに「おまわりさん、こいつです!」のノリでアレスとファントムを指さすネロケミちゃん。心なしか、ムウスがネロケミちゃんを見て体をビクつかせてたのは気のせいだろうか。さっきボコボコにされてたもんなぁ…

イシスにお願いして、エンリルを回収、蘇生させてもらう。どうやら、死神王モートのふしの秘法は解除されたようだ。あれの解除条件は、死神王モートが何らかの状態異常により行動不能になるか、退場することだ。じゃあ、サルファが焼いてくれたんだな。ぐっじょぶ、サルファ。


「はいっ、じゃあ皆さんに作戦を言います!まず、今からコイツらを起こします!そして、しばらく放っときます!言いたいことがある人はこのタイミングで言ってください!その後、みなさんでタコ殴りにします!これで、晴れて戦争終結!バンザーイ!」


「ばんざーい!」


ネロケミちゃん、乗ってくれてありがとう。


「ヒビカ、ひとつ聞きたいのだが?」


「なんでしょうネルガルさん!」


「タコ殴りにすると言ったな?タコは用意してあるのか?」


…あっ、この人こういう人だったわ。


「えっと…タコ…タコ…あっ、イシス!さっきのお願い!」


「…またあのバケモノやるの?」


「ネロケミちゃん5分マッサージさせてあげ」


「シターリシターリシターリシターリ…」


「わたし、そんなに価値あったんですね!」


ネロケミちゃんになるととことん弱いなこの女神。前話からしれっと変化してるこのシターリシターリは、カナイ。☆☆☆水属性悪魔モンスター。ステータス、231-57-57。水属性単体魔法と、眠りにさせるコマンドが強い、異形の悪魔。頭がアコヤガイの真珠のような形をしていて…体は、6本の細い触手だけで出来ている。それに、牡蠣の貝殻のような肩当てと、マント。体色は水色、白、紫だ。相方のニライという全く同じステータスのモンスターがいるのだが…そいつは、水属性でなく光属性の魔法を使い、相手の物理攻撃を封じるのが得意だ。また、眠り状態にする代わりに、混乱状態にするコマンドを覚える。体色は、カナイより濃い青と、赤が混ざったカラフルな色。2体とも強いのだが、いかんせん前の世界ではリールキャパシティが無くて…お世辞にも、使っている人は多いとは言えなかったな。私がこの世界で活躍させてやろうと思っているモンスターたちだ。それに、よく見るとかわいい。声も結構高めで…気がついたらシターリシターリヤッサヤッサと言いたくなる。シターリシターリはカナイ、ヤッサヤッサはニライの、それぞれ鳴き声である。かわいい。


閑話休題。


ネロケミちゃん5分マッサージ券をあげて、カナイになってもらったイシス。さぁ、タコ殴りの時間だ。


「カナイ!6本の触手!」


「シターリシターリシターリシターリシターリシターリ…」


「おお!素晴らしい、まさにタコ殴りだな!」


ネルガルさん、謎のご満悦。このコマンド「6本の触手」は、6回殴り付ける物理攻撃。眠り状態は、5ターン経過か物理攻撃を受けることにより解除されるので…


「あ!アレスとファントムが起きました!」


「「アレスッ!!」」


一斉に駆け寄るクロムとクラン。しかし、当然と言うべきか…ファントムの魔の手の方が早かった。真っ先に、クランを狙うファントム。手に持ってるのは…あっ、まずい!ダークマターだ!


「させるかァァァァァァ!!!!」


真っ先に飛び出す狂王マルドク…だが、ファントムの方が上手だった。


「ンなぁ!?んだこいつ…!!」


なんと、すり抜けた。その隙にクランの頭をつかみ、もう片手でダークマターを振りかぶって…


「…ウィンド!!!」


クランの頭を狙ったダークマターは…空中へ。物理攻撃が無効化されたバグファントムにダメージを与えたのは…か。となると、アイツか。やるやんけ。


「エンリル!!」


「両王国の皆様、お手を煩わせてしまい…申し訳ありませんでしたっ!」


エンリル、復帰。正気を取り戻したようだ。よかったよかった。


「隙だらけなんだな?この亡霊めぇぇ!!」


クフリン、渾身の必殺の一撃。さすがにもう物理攻撃は効くらしい。影にとけ込んで、アレスの元へ向かうファントム。あれ?さっき怯えて縮こまってたとは思えない…あれはいったいなんだったんだろう、演技か?


さて、アレスの方ではゼノビア、オーガ、クロムがアレスのロイヤルストレートフラッシュを受け、物理攻撃を封じられてしまっている。これはまずいな、かなり不利だぞ。どうやらアレスは…まだ煉獄皇のままで、覚醒はしていないな。よし。


「マルドク!あっちをお願いします!」


「っしゃぁぁ!!てめぇの火は温いなぁぁぁ!!!」


ミウさんの指示で狂風の乱撃を使うマルドク。アレスはロイヤルストレートフラッシュを使おうとしたが…それより早く、攻撃が届く。剣を受け、よろめくアレス。クロムがかけより、肩を抱こうとする。


「アレス…おい!!どうしちまったんだよ…!!お前…っ!!」


「…!」


アレスが答えることは無い。それもそのはず、だって…


「誰がアレスよ!私はイシスよ!!」


「あぇっ?あ、ごめんなさい…」


暗闇状態で良く見えていなかったのか、間違えてイシスの方へ。アレス体燃えてるんだから体温で分からないのかなぁ…


「ぷふっ、クロム…おまえ、やっぱ変わんねぇんだな…」


「アレス!?おまえ、やっぱ意識…」


「ああ、ちょっとだけな…ごめんな?迷惑かけ…がっ…」


無慈悲にも、ファントムがアレスを襲う。ダークマターを体へ埋め込み…アレス、覚醒。体からマグマを思わせる深紅のエネルギーが溢れ、鎧の一部を融かした。合体の館ってこんなことやってるのか。あのおしゃべり箱、なんやかんやスゲェやつだな。


「クソっ、くだらねぇな…!ベルゼブブゥ!!」


「ん…めんどくさいな…よっ」


なんやかんや動いてくれるツンデレベルゼブブ。略してツンゼブブ、デレゼブブ…今はデレゼブブだな。とにかく討伐を優先させるべく、地面に手をかまえ…黒紫色の魔力結晶をアレスの足元から放出。ベルゼブブの最高火力、ドウン!!!!だ。いいダメージが出たんじゃないかな?


「はぁ…つかれるなぁ…あれ?」


「あぁ?どうし…っお?!」


「マルドク?ベルゼブブも、どうしたの…きゃあ!?」


マルドクとベルゼブブの足元が…。ミウさんは叫んだだけで、石化の被害は受けていない。


…でも、石化なんて使えるやつは…イシスが変化でもしないかぎりこのメンツにはいない。だとすると…あれ?さっきからファントムがいないぞ…??


「ほう!面白いな、キサマらはぁ!」


…今の声は…あっ、まずいぞ、かなりまずい。

急いで指示を出さないと…


「イシス!えと…ニライに変化!ネロケミちゃん!こっち下がって!!」


「わかったわ…!ヤッサヤッサヤッサヤッサ〜♪」


「は、はいっ!」


ゼノビアとオーガ、クロムは…あっ、ごめん、気づかないうちにやられてたみたい…あれ?でも、アレスではないよな?


「おい!そこの白黒コンビ!こいつを何とかしてくれ!」


クドラクとクルースニクを呼んだのは、魔王ムウス。なにやら…広間の扉からこちらへ入ろうとする巨大な敵と戦っている。魔王と力比べをして互角になれるやつ…あれ?


「アスモデウスってあんなに力強かったっけ?」


「あすもでうす?」


ネロケミちゃん、きょとん。かわいいからなでなでする。あれ?なんだかニライの視線が冷たいような…


「くそっ!すまぬ!」


「謝るなんて柄じゃねえな、魔王さん!こいつをお見舞い…してやるぜぇ!」


「隙だらけだ!悪しきものよ、去れっ!」


「がぁっはっはぁ!ぬるい、ぬるいぞぉぉァ!!」


おぉ、ミウさんが大歓喜しとる。退魔のステイクと、悪疫グラスの毒を喰らっても平然としているのは…アスモデウス。☆☆☆☆土属性悪魔モンスター。ステータス、378-68-26。上半身は山吹色の肌をした人間で…頭髪は濃い紫。牛のような角がこめかみ辺りから上向きに生えていて…両肩にはヤギの頭のような肩当が。腰から下は…紫色の、龍の体だ。後ろ足は屈強で、前脚は…翼と合体した、所謂翼脚だ。それと、全身に紫色の1匹の蛇が絡みついていて、右肩のあたりから常に前方を見つめている。まさに、悪魔の体現のようなモンスターだ。あ、槍持ってる。知らなかった…


さて、このアスモデウス…ファントムの配下で、さっきリストに書いておいたのだが…まさか、今呼んだのか。道理でファントムが急にいなくなったわけだ。で、何故こいつを警戒していたかと言うと…理由がふたつある。ひとつはさっき起こった、石化。アスモデウスの使う技「アダマンテウス」は、敵全体を攻撃しつつ、中確率で石化状態にしてしまう技。マルドクとベルゼブブはこれを食らったのだろう。もうひとつは…いや、その前に。状況を整理した方がいいか…戦局がかなり動いた。


ひとつめ。ムウスは…後脚で立ち上がり、翼脚を使って押しつぶすようにムウスを襲っていたアスモデウスから逃れ、そのまま空中へ。きりもみ回転しながら…わ、ファイアストームも使ってら。まるで巨大な火球になって…煉獄帝のもとへ。そのまま襲おうとしたが…


「ほぉう!ムウス…我を裏切るかぁ!!」


「っ…!キサマは、滅ぼしたはずだぞ!」


なんとなんと、邪帝ラフロイグが現れた。☆☆☆☆火属性悪魔モンスター。ステータス、409-94-52。ファントムの生前の姿だ。流石のムウスも面食らっている。そして…


「来ぉい!ドラキュラぁぁぁぁ!!」


「ようやっとか!待ち侘びたぞ…!」


「っな!?伯爵だと…!?」


アスモデウスの声で出てきたのは…ドラキュラ。☆☆☆☆火属性悪魔モンスター。ステータス、252-84-31。前の世界じゃ、早いリール進行、高い火力とで、最凶ボスの一角として有名だ。


「ほう!これはこれは、クドラク子爵と相見えるとは…!」


「その名前は恥ずかしいからやめろぉぉぉ!!!」


「クドラク!ボクがやるよ、向こうを頼む!」


「っ…!負けたら承知しねぇぞ!!」


なんだかんだ息合ってんだよなぁ、あのふたり。クルースニクと…復活したらしいベルゼブブ、そしてドクロがドラキュラとアスモデウスを相手にするようだ。


ラフロイグ側はというと…


「おうおうおう!横槍失礼するぜー!」


「何だ!?くっ、不意打ちか…!」


爆走してきたナタタイシがラフロイグに火尖槍をお見舞した。文字通り、横槍だな。


「っとと…!オレも加勢する!」


クドラクも駆けつけた。これで、3対1か。邪帝ラフロイグ対、魔王ムウス、ナタタイシ、クドラク。


アレスの方には…バルト、マルドク、エンリル、ネルガル、エンキ、クフリン、アーサー、クランが対応。ここは…うん、何となく、もうひとチーム増えそうだな。イシスはマルドクとベルゼブブの石化の治療をした後、みんなの体力回復に走り回っている。ご苦労さん。


ネロケミちゃんは、私の隣にいるミウさんのお膝でリラックス。今回はみんなの戦いだから、少し放っておこう。


さぁて、みんなのバトル。楽しませてもらおうっと!

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