洗脳戦争、開幕…?

走り続けるのも疲れるから、パンドラをよんで魔法陣を出してもらった。

おかげで、一瞬でメソタニア王国に到着。いやぁー、楽だね。


「じゃあ、一仕事しよっか!イシス!変化!」


「はいはい!フウハクよね?」


イシスには風鬼フウハクに変化してもらった。風属性の拡散魔法を得意とする、風族モンスター。サルファさんはまだ合流できないから、コイツに霧払いを頼むというわけだ。


そして、フウハクに変化したイシスが…全力のタツマキを、燃え盛る城下町とお城へ放つ。すると…


「なんと!?これは…!?」


ドーシュさんびっくりしてる。いいねぇ、こういうリアクション。


「エンリルの幻術ミラージュか…」


「これほどの力だとは…存じませんでした…」


ドーシュさんには経緯を説明済みだ。一番物分かりがよかったクルースニクがめちゃくちゃ簡潔に話してくれたから、助かった。なんだかんだ意気投合して、お互いの武器の仕組みなんかを話したりしてたな。結構二人とも気さくな人だ。


「たぶん、王城の中にもう魔王がいらっしゃるはずなので…サクッと倒して戦争、おわらせちゃいましょう!」


「はい!クドラクの戦う姿をまたみられるんですね!」


「う、うん…そうだね…」


ミウさんのテンションがだんだん上がってきた。よしよし、士気が高まってる。


「ヒビカ、こんなもんでよかったかしら?」


「イシス、完璧!」


「ふふん、もっと褒めてもいいのよっ?」


「イシスさん最高!褒めまくると照れて言動がおかしくなるのめちゃかわ!このツンデレお嬢様女神め!私と結婚しやがれ!」


「な、な、な、なな、ななん、ななぁぁぁ?!?!誰がそこまで褒めろっていったのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


ホントイジり甲斐があるなぁ。こいつめ~つんつん。あ、マジュラはやめて?


「…気を取り直して、だ。相手方の軍勢も分からぬまま突貫するのはあまりに無策だと思うのだが…」


クフリンさんナイス指摘。でもね、参謀ヒビカを甘く見るんじゃないよ。


「ミウさん、これ読んでくれる?」


「あ、えっと…『敵方の情報リスト』…?これ誰のですか?」


「私が昨晩ミウさんに会った後、お城に帰ってきて書いたから私のだよ?」


「字汚いですね…」


「…すみませんでした…」


「ふふっ、冗談ですよ♪」


……しまった、ミウさん意外に強敵だ。


「はい、では読み上げますね…


『敵軍の情報を以下に記す。


◎メソタニア王城にいる可能性が高い敵

・参謀エンリル:ファントムにより洗脳されている。手早く倒し、こちら側へ引き込む。

・アスモデウス:彼は別の仕事が忙しいため不在である可能性が高い。だが万が一メソタニア王城内にいた場合、男性は決して近づいてはならない。必要があればイシスを貸し出す。

・デーモン:アスモデウスの部下。雑魚なので誰でも倒せる。脅威ではない。

・悪魔導士マーリン:彼はこちら側に引き込む。そのため、バビロア王国側から援軍として戦斧闘士ゼノビア、オーガ、熱鋼騎士クロムを呼ぶ必要がある。

・魔将ガープ:全体攻撃が厄介な、青緑色の体色の魔法使い。熱属性魔法を使うため、バビロア騎士団で対応する。

・炎獣人ヴァルカン:暴れられると厄介なので、ナタタイシに一任。混天綾で拘束する。

・ファントム:ステアボイスに要警戒。ネルガル、エンリル、そしてミウパーティがこれに対応する。


◎バビロア王城を襲う可能性のある敵

・魔王ムウス:赤い体色のグリフォンである。

・暗黒大魔導ジョンガリ:黒い獣人の魔法使いである。

・闇騎士ゲボルグ:黒い甲冑を着てハルバートを持った武人である。

・その他大勢のモンスター:書くのもだるいから略。

これらは全てサルファに一任する。取り逃がしが起こることはあり得ない。あのバケモンなら朝飯前だ。そして、おそらくムウスについてはファントムの洗脳を受けている可能性が高い。倒し次第、こちらへ加勢するので、魔王が来てもあわてないように。』


……です!」


「一回もかまなかった!すごい!」


「ありがとうございます!じゃあ、さっそくファントムを倒してきます!」


「うん!いってらっしゃい!とでもいうと思ったかぁぁぁぁ!!!!!」


「ひゃいっ?!」


はぁ…どこから突っ込もうか…


「……ミウさん、マジでどれだけ肝っ玉なの…?全然ビビってないよね…」


「うーん…正直、まだゲーム感覚なのが抜けてないんです…私たちプレイヤーが襲われることもあるのは知ってますが…でも、この見た目で襲い掛かってくる方がどうかと思いますよ?」


「…うん、それは一理ある。」


そう、ミウさんの見た目の話をしていなかったが…彼女、なぜかフルフェイスのペストマスクをしている。それに、私より唾が広いハットと…あとは大体、私と同じ。ゴスロリチックなメイドっぽい赤紫の服に、適正な長さの同色スカート。ただ、私のタイツはグレーと紫の縞々だったけど…ミウさんのは、赤と紫だ。吸血鬼カラーかな?


「でも動いてたら斬るっていう発想の持ち主もいそうだからさ…警戒は怠らないでね?」


「はい!じゃあ…」


「うん、行こうか!」


「やったぁぁ!!!行くよみんな!!」


「元気なやつに捕まっちまったなぁ~…」


「その割にさっきからニヤニヤしてるのはどこのクドラクだい?」


「ヒャハッ、ひさびさに暴れられっからよぉ~滾るんだぁぁ!」


「それは奇遇だね、オレもなんだ!二人とも、敵討ちに手伝ってくれてありがとう!」


「オレ様を忘れて楽しそうだなぁ?混ぜろよ混ぜろよぉ!ひまでひまでしょうがなかったのにおめぇらといると楽しくてしょうがねぇんだよぉ!!!さぁ、血祭りにされてぇのはどこのバカなんだぁ!?たっくさん生贄にしてやらぁ!!!」


「ふふっ、ほんとにみんなキャラが濃いなぁ!ホワイトプロテクション!」


「あっオイ何だそれ!!俺にもよこせぇ!!」


「あっちはかなり賑やかね…」


「…うん、でも…ミウさんめっちゃ楽しそう…」


「…なんでヒビカは仮面付けてる人の感情がわかるわけ?」


「イシス、ブーメラン…」


私だって仮面付けてるんだよ、忘れてたな?イシス。あっ、目をそらした。この隙に、えい!ヒビカ流忍法、脇に手を挟むの術!


「あひゃひゃひゃひゃぁぁぁ………」


………おわ、ヤバい顔してる。これ絶対あとでマジュラ(強化Ver.)の刑にされる…


「………よし、ナタタイシ、ドクロ、ネロケミちゃん、行こうか!」


「「おう!」」「はぁいっ!」


うん、いい子だ。騎士団の皆さんはエンキ、ネルガルの案内で王城へ向かったようだし、やるべきことは…


「ナタタイシはヴァルカンをお願い!ドクロは…クロムたちを呼んできて!ネロケミちゃんは、私とアスモデウス倒しに行くよ!」


「っしゃぁ!刹那の間に終わらせてきてやらぁ!!」


「おう、任しときな!パンドラ、頼んだぜ?」


「はいっ、がんばります!」


「ヒビカ…?よく私を放置してくれたわね…?」


………うわ、めっちゃ怒ってる。ここは必殺、上目遣い。


「あ、イシス…さっきはごめんね?私たちについてきてほしいんだけど…」


「…………行けばいいんでしょ、もう…」


よしっ、イシス陥落。ちょろいのぉ~。

















さて、アスモデウス探しに出た私たちだけど…


「いないね…」


「いませんね…」


「いないんじゃないかしら?」


うん、ぜんっぜんいない。あいつも7つの大罪モチーフだしなぁ。また一人お友達が増えるのだろうか。


「…よし!先にラスボスを倒しちゃおう!」


「はいっ!」


「おー!…と言いたいけど、ラスボスって誰なのよ?」


「あ、言ってなかったね…アレスだよ!煉獄皇アレス…あるいは、煉獄帝かな?」


「じゃあ早く倒しちゃいましょう!」


「ネロケミちゃん、いつからそんなに好戦的になったのよ…?」


……たぶん、「早く帰って化学談義がしたいんです!」っていうだけだと思うよ、イシス。


「でもね、アレスにはちょっとめんどくさい事情があってね…」


イシスとネロケミちゃんに、アレスの物語を語る。当時の魔皇…ラフロイグと同じ血を継いでいるアレスは、その自覚は無く剣士として育って行った。クランを含む多くの友人と苦楽をともにして、剣士として強くなった…果てに、ラフロイグを倒すまでに。

しかし、ラフロイグの執念は恐ろしかった。彼は死後、亡霊…ファントムとなり、配下であるアスモデウスやガープを魔界から派遣、アレスに陽動をかけて…煉獄の覇者としての自覚を呼び覚ましてしまった。それが、煉獄皇アレスだ。彼に再度ファントムが接近することで、煉獄帝としてアレスが覚醒してしまう。正直、これだけはどうしても…


「…うん、というわけだから、ファントムが瀕死になった頃にアレスさんと合体させるね?」


「わかったわ…じゃなくて!!!なんで!?!?」


「だって煉獄帝がいないと歴史変わっちゃうんだもん…」


「黒歴史は消すに限るじゃない!!」


「…イシスにもあったんだね、よしよし…」


「慰めんじゃないわよぉぉぉ!!!!」


「あ、あの…ひびかさん、あれ…」


服をクイクイするネロケミちゃん、かわいい…んっ?


「あ…いた…」


「痛いって言ってもやめないわよ!?このバ…あっ、ファントム…」


…なんかすげえ気まずそうにこっちを覗いてる。いつから居たんだろう…?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る