火の大陸で陰キャ戦法

またひとつ運ゲー要素がなくなりました。

「じゃあパンドラ、火の大陸までお願いねー」


「人使いの荒いやつだぜ…はいは〜いっと」


「あ、あの…私たちまだ何にもあなたの事知らないんだけど!?ね、ねぇ!ちょ、何しに行くの!?それだけでも聞かせて!?なにこr」


騒ぎ出したイシスさんに強制転移の刑が。パンドラさんあんた容赦ねぇな。


でも、これで無事に火の大陸に来れた。


「まず拠点探さないことには安心して冒険できないしさ、なんか寝るとこでも探そうと思って…」


「…わかったわ。でもせめて名乗りなさい…?」


真顔のイシス。これは怒ってるなぁ。こういうのってパンドラが事前に説明してたりしてないの?


「ん、してるハズだけどな…イシス〜、メール読んでるか〜?」


「…………」


あっ、目を逸らした。さてはこいつ、届いてたけどめんどくさくて見てなかっただけだな…


「シルバードラゴンはメール読んでるの?」


「当然じゃ。そこな小娘と同じにするでない。」


喋った。しかもこの声…


「…女の方、だったんですか?」


「うむ、いかにも。」


原作では無性別モンスターだったけど、こっちの世界では性別がちゃんとあるようだ。なんか神様イシスより神様してるんだけど、イシス大丈夫かな…


「我が真名はサルファ、雷雲を呼び寄せる雷銀竜じゃ。よろしくのう。」


心なしかニッコリした表情を浮かべるシルバードラゴン、改めサルファ。サルファって英語で硫黄のことだけど、いいのかなぁこの真名…

それにまさかののじゃ口調。もし銀髪幼女に変身したりしたらどうしよう。でもオレカモンスターだし大丈夫だよね…?それに今俺女の子だし、犯罪者扱いされないよね…??


「じゃあヒビカ、がんばってこいよ〜!」


あっ、おしゃべり箱が消えた。

じゃあ、ちゃちゃっと拠点探しを済ませちゃおう。



「あっヒビカ!忘れてたけど、ここの世界は潜在値とかねぇからな〜!全員同じ成長具合だぜ〜!」






…待て待て待て待てぇぇぇぇぇ!!!!!


はぁ?!何つったアイツ?!潜在値…えぇっ?!?!


てことはつまり!!


「第3話がまるまるムダになる…??」


「いやそこじゃねぇだろ…説明は必要だと思うぜ?」


「あっ戻ってきたなテメェ!!どういう事だかしっっっっかり説明してもらうからなぁァァ!!!!」


「…おい、ナタタイシと口調が被ってんぞ?ったく…いいか?そもそも、ラスボスだからって理由でマオタイと零式が居なくなっ…」


「あっ!!そうじゃん俺のバカ!!!!」


そうだった。零式たちがいなくなったのは、「ラスボスが2人いては困るから」だった。きっとパンドラの事だから、同じモンスターの複製とかはお手の物なんだろうけど、そうするとストーリー上の齟齬が生じてしまう。最悪、死んじゃいけない人が死んじゃったりするかもしれない。

いくらあのパンドラとはいえ、自分が原因で消される命があっちゃたまらないだろう。つまり。


「同じモンスターは一体しかいないから、全ての潜在値を均一にしないと不公平…なんだよね?」


「理解が早すぎて逆に困るとか初めてだよもう…オレ出てきた意味ねぇじゃんか〜」


「いやあったよ普通に…間違いなくこの後みんなに『そういえばステータスどうなってるの?』って聞くとこだったし…せっかく仲間になったのに厳選過程で弾くなんて嫌だもん…」


「まぁな…あ、一応全員、いわゆる潜在個体だからな?それだけ言っとくぜ〜」



…このおしゃべり箱、息を吐くように爆弾発言しやがって…



「…あの、ヒビカ…でいいのよね?拠点って、どう探すの?」


あ、イシスのことすっかり忘れてた。


「うん、ヒビカでいいよ。他のみんなも、俺のことは呼び捨てでいいからね!それで、拠点っていってもなぁ…まず、バビロア王国行って、それから考えようかなぁと思ってたんだけど。」


何気にモンスターから名前呼ばれたの初めてだな。この名前にも慣れないとね。

みんなの顔を見渡すと、とりあえずみんな賛成してくれたっぽい。そうと決まれば。


「じゃあ…行こっか、王国。」












「………」



「……………」



「…………………」




…やばい。ドクロに合わせて歩くとめちゃくちゃ時間かかる。Sp5は伊達じゃなかった。


「ハハッ、悪ぃな…ほんと…だんだん体が重くなってきてよ…」


「…そりゃ血まみれのコート着てたら体も重いよな。」


しかもナタタイシが本格的にツッコミキャラになってる。となると……


「ヒビカよ、そこな骸骨程度なら乗せてやれるがどうする?このままでは永遠に時間がかかってしまうが…」


……あっ、良かった。サルファさんがボケ役になっちゃうかと思ったけど、それは大丈夫そうだ。


イシスはさっきからちょくちょく話しかけてきて、少しづつだけど打ち解けてきた。たぶん零式さんといいコンビ組みそうだなあ。


「うん、できるならお願いしたいかな。あの…もしかして、全員乗っけられたりする…?」


「うーむ…さすがに重火器を背中に乗せるのはのう…」


「重火器て…バイクだよね?それ…」


「ん?風火二輪は風火二輪だぜ?邪魔ならしまうけど、その方がいいか?」


「ど○ぶつの森の村人じゃないんだし…ポケットに入るのそれ?」


「そこ普通は四次元ポケ○トのほうが通じるんじゃねえのか?まあいいけど……よっと!」


……あかん。ツッコんだつもりがボケてもうた。って今アイツ何を…


「包丁と一緒にパンドラにしまってもらったぜ。」


ほう、いわゆるインベントリってやつか。これ結構便利だな。ゲームじゃ「一つだけオレが預かるぜ!」って言って偉そうにしてたくせに、こっちじゃ箪笥みたいに使えんのか。


「ほう…なら全員乗せられるが、乗るかの?」


「ええ、じゃあ甘えさせてもらうわ。ヒビカ、行きましょ!」


「あ、う、うん!」


…なんかイシスめっちゃグイグイ来るんだけど。前の世界でもこんな積極的に来るような知り合いいなかったからなぁ…まさか、女の子に手を引かれてドラゴンに乗る日が来ようとは…


「ハッ、賑やかでいいな!王国まではどれぐらいかかるんだ?」


「そうじゃのう、順調にいけば30分かの…じゃが、準特急で飛ばすからの、15分もあれば着こうぞ!ほれ!」


びゅんっ。サルファは地上で少しかがむと、一気に翼の力だけで地上数十メートルの所へ到達。視界がよくなり、目指すべき王国も見えた。


「高いわね…!ヒビカ、落ちないようにちゃんとつかまりなさいね?」


「っていってもぉぉぉぉ!!!!鱗めっちゃツルツルしてるんだけど…ってあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


飛行開始数秒で吹き飛ばされそうになった。ナタタイシが混天綾で捕まえてくれたから助かったけど…転移先で何もできずに即退場なんて笑えないよ…


「もう…ヒビカは危なっかしいんだから!ほら、つかまって!」


「面目ないです…って、どこに?」


「ここよ!」


……イシスさん、さすがに同性になった友達とはいえ、まだけっこう中身男なんで…いきなり女子の腰にしがみつくとかハードル高すぎます……


「どっちかといやぁイシスのほうが危なっかしそうだけどな?」


「なぁ!?そ、そんなことないわよ!」


「ごめんイシス、否定できなかった自分がいるよ」


「ヒビカは味方になってよぉぉぉ!!!!」


「ハハッ、元気な嬢ちゃんだな…」


……ドクロさんめっちゃ達観してる。なれたのかサルファさんの背中の上で立ってるし…これ王国の人たちが竜騎士と勘違いするんじゃ……
















「ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」




あっ。フラグ回収のお時間だ。

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