オレカ界を楽しむ前に言うことがあるんじゃない?

「ぬ?どうした?」

「ヘッドホンしてんのに届く声で叫ぶとか珍しいなぁ?」

「音量調節機能は故障していませんか?」


「いや…ごめん、テンション上がっちゃって…」


ついにオレカ界に転移できた。つい叫んでしまったが、三人からは三者三様の反応が。

キョンシーのような恰好をしているマオタイさんは、なんだか魔皇と一般人とは思えないくらいフランクに絡んでくれる。大魔皇と友達ってヤバいヤツ認定されないだろうか…

全身ジャージのようなバトルスーツに身を包んだナタタイシは…それやっぱヘッドホンだったのか。ネコミミヘッドホンって海外の実況者以外でつけてるやつ初めて見たわ。え?猫じゃなくてミミズク?どこの松平一信だよ…ダッキリスペクトだと思ってたんだけど違ったっぽい。

零式さんは、スレンダーな感じの女性をモデルにしたロボで、顔はアーモンドのような形の水色の液晶が真ん中に一つ、それよりだいぶ小さい液晶がその左右に一つずつ。背中にはエンジンなのか、ハート形のコアがあり、そこから薄い羽根のような青い物体が伸びている。ゲームでは声が機械音まじりだったけど、より柔らかな女性の声になった。人間と変わらない流暢さだけど…何その刺々しい皮肉。正常だから俺。


「あ、オレにはいつでも気軽に話してくれよな!ここの常識とかさすがに知らないだろ?あんまりそっちの世界とは変わんねえからあんまり心配しなくていいけどな!」


てかパンドラまだいたのね。はいはい。

じゃあさっそくその権利を行使しようか。


「この転移はさっきのレヴィアタンを倒したから起きた、と考えていいのかな?」


「そう思ってて大丈夫だぜ~」


「ほかにも同じようなことが起きてたりはするのかな?」


「そう思ってもらって問題ないぜ~」


「向こうでは時間は進まなくて、何らかのきっかけにより向こうに戻ったら、記憶はそのままに、時間はここへ転移した時のまま変わらずにいる、と思っていいかな?」


「いいぜ~」


「つまり好きなだけこの世界を満喫しても構わないのかな?」


「かまわないぜ~」


「あと一つ聞いていいかな?」


「いいぜ~」


「なんでさっきからこっちの質問を全部肯定形で軽く答えるのかなぁ!?結構大事なこといっぱい聞いたよね!?」


「だって全部あってんだしいいじゃねえかよ~」


あ、そうなの…じゃあまだ何人かこっち来るかもしれないのか。お茶菓子の用意でもしとかないと。あと身分証明用になんかありゃいいんだけど…


「じゃあもう何個か聞いても?」


「おう、好きなだけ聞きな~」


「今我々は水の大陸にいる、でいいのかい?」


「んー、竜の巣って言った方が適切だなぁ」


「…じゃあ急いで避難した方がいいのかな?」


「ん、別に平気だぜ?すぐなくなるもんじゃないしなぁ」


「そなの?夏限定だよね?」


「あ、違うぜ~。夏に行きやすくなるだけで、こっちの世界じゃ年中出てるぜ?」


ほへぇ…便利な世界だなぁ…


「食事とか通貨とかはどういう仕組みなの?」


「あ、ここはそういう面倒な設定が特にないんだよな。食べたきゃ食事は普通にあるし、食べれるけど…そもそも食欲もわかないはずだぜ?一日すごしゃわかるさ!」


なんか便利すぎて怖いんだけど。


「移動方法はどうすれば?」


「オレを呼ぶだけ!簡単だろ?」


うん。めっちゃ簡単。


「あとは…気になったら聞くわ。今はこんなもんでいいかなぁ」


「おっ了解~」


さて。でだ。


「誰か鏡持ってない?」

















「こちらをお持ちください。」


結局誰も持ってなかったから、零式さんが「ないなら創りましょう、ゼロからイチを!」といいだして金属板をどこからか取り出し、鏡面加工し始めた。ゼロからイチは作れねぇだろ、イチはバトル入手モンスターだぞと思いながらしばらく待つと、やたらピンクピンクで宝石みたいなシールをてんこ盛りに張り付け、挙句フレーム部分に謎のラメ入り液体が注入された、ザ・小学生の女の子が持ってそうな手鏡選手権で堂々の一位を飾れそうなファンシーな鏡を手渡された。零式さん、意外に女の子したいお年頃なんだなぁ。心なしか目の横の丸い液晶がほんのり赤くなってるし。


で、そんな鏡で自分の顔を覗き込んだ。

そこに映っていたのは。





「………ポ○モンにこんなジムリーダー居た気がするんだけど…………」




某仮面ショタゴーストジムリーダーのような仮面、謎の羽根つきハット、吸血鬼の噛み痕のように、首に縦に二つ並んだ赤いほくろ。やたら青白い肌。黒くてゴスロリチックな服。袖のシュシュみたいな装飾。謎の紫とグレーの斜めストライプなネクタイ。極め付きは。




「…え?これ、スカー…ト…だよね…」




そう。ネクタイと同じ色の組み合わせのボーダーストッキングと合わさっていたのは、完っ全にメイド用なスカート。ゴスロリって言ったけどホントだったよ。膝が少し見えるくらいで、長さは適切だった。靴は少しだけ厚底になっていて、身長を少し嵩増ししている。それでようやく、零式と目の高さが合うくらい。


「あのー、パンドラさん…?俺いつから性転換したんですか…?」


「ん?鏡作ってる間にちゃちゃっと服と性別変えといたんだけどまずかったか?」


いや…まずいでしょう…それどころかまずいで済むか怪しいよこれ…あとから知り合い来たらどう説明しよう…


「というか、オマエにはもっと大事な質問がしたいんだが…いいか~?」


「気持ちの整理が落ち着いてないけどこたえられる範囲で答えるんでそれでユルシテ」


「オマエ、名前は?」










あっ。



自己紹介忘れてたわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る