第2話 依頼
「はぁ~、昨日はびっくりしたぁ」
昨日の授業は全く頭に入って来なかった。何せ太陽のプリンス事、ケリン王子が私の直ぐ後ろに座って授業を受けていたのだ。集中できるはずがない。
しかし不思議だ?
何で魔法学院の授業を、王子が受けていたんだろう?
王族は専用の教育機関で授業を受けている筈なんだけど……ま、考えてもしょうがないか。
私は学内にある掲示板へと向かう。目的は昨日に引き続き、お小遣い稼ぎだ。私は学院中央に備え付けられた掲示板に広告を張り付けて、大々的に仕事を募っている。掲示板に張り付けてあった自分用の
因みに
「どれどれ…………え!?」
書き込まれた内容を検めて、私は思わず固まってしまう。何故なら仕事の依頼主の名前の欄に、有り得ない名前が描かれていたからだ。
ケリン・カルオン。
内容は直接会って、応相談と記されている。
悪戯ではない。掲示板でのやり取りは悪戯が多い。だからそれを避ける為、学生に配られている
……これは一体何の冗談?
ていうか、何で王子が
昨日は授業後、挨拶だけして飛び出してきたため王子の事情はよく分からない。だが
「どうしよう……」
王子からの依頼を無視するわけには行かない。だが正直行きたくないのが本音だ。吹けば飛ぶような男爵家如きが、王子と接触するのはあまり宜しくない。周りの子息令嬢から嫉妬を買うのは目に見えているからだ。
「でも行くしかないかぁ……」
私は大きく溜息を吐き、重い気持ちで待ち合わせに指定されていたテラスへと向かう。
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まだ午前中だというのに、テラス内はいつにも増して混雑していた。当然原因は王子だ。彼の周りを何重にも人が連ねている。確認はしていないが、恐らく全員高位貴族の子息令嬢だろう。
あの中に割って入らなければならないのかと思うと、軽く眩暈がしてくる。だが尻込んでいても仕方ないので、私は意を決して人垣をかき分けて中に入り込んだ。
「お待たせしました、王子。レア・ホームズでございます」
刺すような周りの視線が痛い。罰ゲームにも程がある。
「やぁ、待っていたよ。しかしまさか君が噂の名探偵だったなんてね」
「名探偵だなんてそんな。恐れ多い事です」
実際冗談抜きで、名探偵などと言う呼び名は大げさだ。私のやっている事は、超能力を使っての小遣い稼ぎでしかない。それがいつの間にか噂が独り歩きし、気づけば名探偵呼ばわり。まあそのお陰で毎日仕事が舞い込んで来てくれるので、少し恥ずかしかったがその称号も悪くは無かった。
今日までは――だが。
「ははは、謙遜だなぁ。まあいい、込み入った話がしたいから場所を移そう」
そう言うと王子は席を立つ。その立ち居振る舞いは洗練されていて、流石王族としか言いようがなかった。その美貌と相まって、それを見た取り巻きの女性達から溜息が漏れる。流石3年連続2位だ。
「悪いけど皆、道を開けてくれないか?」
王子はやおら私の手を握ると、そのまま引っ張っていく。
なんで手握ってんのこの人!?
「おおおお、王子!?」
「人が多いみたいだからね。はぐれたら大変だろ」
さわやかな笑顔で言い放つ。そういう風に言われると、此方も手を振り払えなくなってしまう。
テラスから出ると、強い日の光が王子を照らす。光を受けて金の髪がキラキラと輝き、その横顔は眩しいぐらいに綺麗だった。
ああ、こりゃ確かに太陽のプリンスだわ。そう納得し。彼の姿に見とれてしまう。不覚にも私はこの手をそのままずっと握って、何処までも連れていて欲しい等と考えてしまった。イケメン恐るべしだ。
まあ、後々その事が死ぬ程噂に成ったり。それが原因で嫌がらせを受けたりする訳だけど。今の私にそんな先の事を考える余裕はなかった。
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