第88話 人の意見は聞こう
今朝、NHKプラスで今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ました。おもしろかった。
歴史好きを自称している割に、全くと言っていいほどNHKの大河ドラマを観ないわたし。『独眼竜政宗』くらい? 通して見たのは。(1987年!)
三谷幸喜さんの脚本なんでしょ。同じように三谷さんの脚本だった『新撰組!』も『真田丸』も見てないんですよね。三谷脚本がおもしろいのは分かりますよ。でも、見てこなかった。
『鎌倉殿の13人』は、小栗旬さんが演じる鎌倉幕府の執権、北条義時が主人公なのですが、ピンとこないですねー(笑)。義時知らないです。ってか、北条氏が好きじゃない。執権というNo.2の立場なのに幕府のトップというあり方が好かん。
ま、歴史的に見て、摂関政治とか院政とか、天皇という「トップ」がその実体を失い、頂点に立つものは権力を担わないという政治機構ができあがっていた時代だからこその「執権政治」だったのでしょうが、なんか好きになれないんですよね。
おっと、脱線した。
ドラマは、北条氏の屋形に罪人である源頼朝が転がり込んでくるところから始まります。
この頼朝を担いで一旗上げようとする兄・宗時(片岡愛之助)。
厄介者として追い出そうとする父・時政(坂東彌十郎)。
頼朝に惚れてしまう姉・政子(小池栄子)。
てんでにばらばらな家族に翻弄される義時(小栗旬)。
史実がどうだったかはともかく、三谷脚本おもしろいです。役者さんのコミカルな演技がたまりません。
三谷脚本は、歴史ドラマとしては軽いからヤダ。なんて人もたしかにいるでしょうが、重厚なばかりが歴史ドラマじゃないですからね。いいんじゃないですか『鎌倉殿の13人』。
☆☆☆
三谷幸喜さんが脚本を書いた映画に『笑の大学』っていうのがあるんですよ。知ってます?
わたしめちゃ感心して、DVDも買ったんですけど、これがわたしの三谷脚本の原体験。内容は――
戦時中、芝居を上演するにあたっては、台本の検閲を受けなければならなかったそうで、ある劇団の座付作家(稲垣吾郎)が上演許可を得るため、検閲官(役所広司)に台本の検閲を受けることになります。
作家は喜劇の台本を書いて検閲官に差し出しますが、この検閲官が堅物で「このご時世に軽薄な喜劇など上演する必要なし」と、台本の面白い箇所を削除するよう作家に指導します。
どうしても芝居を成功させたい作家は、翌日までに書き直してまた検閲を受けますが、また検閲官からダメ出しをくらう。
最初は「わからずやの検閲官め」と思ってる作家ですが、検閲官を納得させようと頭を捻って書き直すたびに、台本が(検閲官の意図とは逆に)面白くなってゆくことに気付きます。
そのうちに検閲官の方も毎日台本が面白くなってゆくことを楽しみにするようになり、いつのまにか二人は協力して「面白い台本づくり」を始めてしまう……。
――っていうコメディです。
ただ、ぼーっと見てるだけでもクスクスと笑えてしまう映画ですが。物語を作る立場になってみると、ちょっと考えさせられる脚本です。
創作って「外部の目」が入らないと、良くならないんですよね。『笑の大学』では「検閲」というちょっと笑えないシチュエーションですが、検閲官という外部の目が入ることにより、意図しなかった面白さが台本に加わってきます。
芝居を上演するためとはいえ、作家が「素人の言うことが聞けるか」という態度でいれば台本は面白く変わらなかったはずです。素人の指導でも、真剣にこれに応えるため知恵を絞った結果、台本がとてもおもしろいものに変わっていったのです。
『笑の大学』は、きっと三谷幸喜さんの脚本家としての体験に基づいた作品だと思う。ほんとに面白いものは、ひとりでは作れないんだ。作家は人の意見を聞く耳を持たなければいけないんだ――っていう。
わたしも人の意見が聞ける人になりたいです。
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