第73話 時代小説の楽しみ方
今回のカクヨムコンには『真・青海剣客伝』という時代小説を上げています。予想できたことですが、あまり読まれていません。いや、不満があるわけじゃないんです。いつもよりめちゃくちゃ読まれてますよ。でも、フォローさせてもらってる皆さんの小説ほどじゃないんだよなあ。
フォロワーの雪うさこさんや和希さんがレビューに書いてくれたように、時代小説にはとっつきにくいというイメージがあるみたいですね。とっつきにくいというのは、なんだかぼんやりした語感なのですばっと書くと「何を書いてるのかわからないので読まない」ってことなんでしょう。
時代小説を、中学や高校で勉強する歴史の授業と結びつけてしまうと、つまらないですよ。「わからないことは良くないことだ」という思い込みも、小説を楽しむ上では邪魔になるだけ。分からない部分は読み飛ばせばいいんです。分からない箇所を読み飛ばしていって、その結果、読んでみた小説が面白くなかったというのは、読んだ人の罪ではありません。単に、その人と小説の相性が良くなかっただけです。経験を積み、時間をおいて読めば、次は面白く読めるかもしれません。
「わからない」というは、実はとても魅力的なことです。それが分かるようになったときに、自分の知識なり、考え方に厚みが加わるからです。わからないからといって、そのことに触れないでいることは新しい知識や考え方を獲得するチャンスを逃しているのと同じで、とてももったいないことです。
――そんなこといったって、昔の言葉や言い回しが出てきて読み難い。
時代小説が、舞台となっている時代背景や、社会制度、風俗について描写し、古風な言い回しで地の文章で書かれているのは、「雰囲気づくり」です。それ以上でもそれ以下でもありません(だから学術的には無価値だし、純文学としては扱われない)。更に言うと、作者がそうこだわっているだけです。おもしろい、おもしろくないという評価とは無関係です。
ただ、ジャンル小説なので「こだわり」の部分に重きをなすプロ作家や読者の人は一定数存在すると思います(SFやファンタジーでもそうです)。でも、時代小説はエンタメ(しかもエンタメ中のエンタメだと思う)なので、物語がおもしろいかおもしろくないかで評価して間違いないと思います。
読んでスカッとするアクション小説や、ほろりとさせられる人情話は、現代ドラマとして書けるし、読めるのですが、刀を持った人間が斬り合いをするアクション小説は時代小説でないと書けないでしょう。違和感なく刀を振り回してもらう、そのための装置が時代小説というわけ。わたしの『真・青海剣客伝』はまさにこれで、いかにそれらしくキャラクターたちに刀を振るってもらえるか、それを考えてたら自然と時代小説になってしまったんですよ(笑)
――わからないところは読み飛ばす。
時代小説に限らず、読書の極意です。そもそも本の嫌いな人は「読み飛ばしちゃだめだ」と思ってるらしい。裏返していうと、上手に読み飛ばせる人が「読書好き」なということなのかな。
『真・青海剣客伝』どんどん読みとばしてください。
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