第69話 王さまの耳はロバの耳
言いたいことが言うというのは大切なことなので、我慢せずになるべく言った方がいいというお話。
「王さまの耳はロバの耳」というお話は知っていると思います。
髪の毛を切るときに、王さまの耳がロバの耳となっていることに気づいてしまった床屋さん。「このことは黙っているように」王さまから口止めされてしまいます。でも床屋さんは、その大きな秘密をひとりで抱えることができず、だれに話したくてたまりません。
たまらず、地面に穴を掘って【王さまの耳はロバの耳!】と大きな声を吐き出し、埋めてしまいます。秘密を吐きだせたことで床屋さんはすっきりしました。やがて穴を埋めたところには葦が生えてきます。そして、その葦は風吹かれてに揺れるたびに「おうさまのみみはろばのみみ」「おうさまのみみはろばのみみ」と鳴るのです。「王さまの耳はロバの耳」だといううわさは国中に広がっていきました。
わたしはこういう風にお話を記憶しているのですが、こんなお話しでしたかね?
床屋さんの立場と王さまの立場とで、このお話しから得られる教訓は異なると思うのですが、わたしの場合は「床屋さん視点」しかも「ひとりで抱え込むって苦しいよね」って教訓でもなんでもない「感想」のようなものを強く受け取ってしまいます。
知人、友人に悩み事を【相談】する人っているじゃないですか。わたしの周りにもたくさんいます。うちの奥さんなんか典型ですよ。
――あのね。きょう息子君が学校で友達からこんなことされてね。
――お母さんからこんなLINEが届いたんだけど、聞いてくれる?
――さっき見た韓国ドラマがすっごく面白くてさ。
悩み事に限らず、自分の思いを自分以外の人と共有したいわけ。「どう思う?」と尋ねるスタイルをとりつつ、【同じように思うよ】って受け入れてもらいたがるわけ。
わたしなかなかこれができなくって。仕事で起こったことも、家庭で感じたことも、ひとり自分で抱え込んで自分の中で処理するって感じです。リアルで自分をさらけ出すのにとても抵抗があるんです。自意識が強くてカラオケで歌えないタイプk
人の(笑)
こういうわたしにとって小説を書くことは、床屋さんが穴を掘って【王さまの耳はロバの耳!】と叫ぶ行為と同じ。わたしにとって、とても大切な行為。書きあげるととてもすっきりとします。やめられません。え、わたしの小説から「おうさまのみみはろばのみみ」と聞こえるって? 知りません、そんなこと(笑)
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